50代から気をつける病気。予防・対策

放置すると怖い! 慢性腎不全の症状と対策

50代から気をつける病気。予防・対策

一度失われた腎臓の働きを回復させることは難しく、命に関わることもある慢性腎不全。そんな慢性腎不全を予防するカギは生活習慣にあります。「生活習慣の見直し」「定期検診」で病気の予防・早期発見をしましょう。

【ライタープロフィール】遠藤愛

腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、無症状のまま病気が悪化する特徴があります。
周囲から「何も症状がないのに腎機能が悪いと言われた」「医者からこのままだと透析になると言われた」といった声を聞き、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

人工透析が必要になるほど進行した慢性腎不全は、長い年月をかけて腎臓がダメージを受けた経過があります。つまり、腎臓の異変にいち早く気づき、対処できるかどうかが健康の分かれ目になるのです。

この記事では、慢性腎不全の原因・症状・予後、さらには慢性腎不全や人工透析を回避するための対策について解説します。

慢性腎不全の原因と症状

病気の説明に入る前に、まずは腎臓の働きを理解しておきましょう。
普段はほとんど意識することのない腎臓ですが、実はからだにとって重要な働きをしています。

腎臓の主な働き

  • 体内の水分量を調整する
  • 尿を作り老廃物を排泄する
  • 体液の成分を一定に保つ
  • 血圧を調整する
  • ホルモンを分泌する
  • 活性型ビタミンDを作り、骨を強くする

腎臓が悪くなると、これらの働きが十分に行われず、からだにさまざまな支障が出てきます。
一度低下した腎機能が回復することはなく、時間をかけて徐々に悪化していきます。腎臓がほとんど機能しない末期腎不全になると、腎臓の働きを代行する治療が必要となり、それが「人工透析」と呼ばれるものです。

慢性腎不全の原因

腎臓の働きが急激に悪化する急性腎不全と違い、慢性腎不全は時間をかけてゆっくりと進行するのが特徴です。
腎臓にダメージを与える要因はさまざまですが、特に問題となるのがメタボリックシンドローム(肥満・脂質異常症・高血圧)や糖尿病につながる生活習慣で、具体的には次のようなものがあげられます。

  • 不規則で栄養の偏った食生活
  • 運動不足
  • 飲酒
  • たばこ
  • ストレス
  • 睡眠不足

日々の不摂生が積み重なると、メタボや糖尿病といった生活習慣病を引き起こし、腎臓にダメージを与えます。特に日本では糖尿病から腎臓病を合併する「糖尿病性腎症」の患者数が増えており(※1)、1998年から現在に至るまで人工透析を開始する主な原因となっています。

慢性腎不全の症状

慢性腎不全の怖さは、無症状のまま徐々に腎機能が低下し、病状が進行してようやく症状が現れる点にあります。
腎臓が正常に働くことで維持されていた体内の水分量・老廃物の処理・血圧などの調整ができなくなると、以下のような症状が現れます。

  • 夜間の頻尿(病状が進行すると尿量は減少)
  • 顔や脚のむくみ
  • 疲れやすい
  • 食欲がない
  • 吐き気、嘔吐、下痢
  • 息苦しさ

このように腎臓が悪くなることで血液循環・呼吸・消化器系など全身に影響が及び、適切に治療しなければ命に関わることもあります。

腎不全の予備軍「慢性腎臓病」

慢性腎不全は数年かけて徐々に腎機能が低下した結果ですが、その前段階に「慢性腎臓病」があります。
慢性腎臓病は、「腎機能が慢性的に低下したり、尿たんぱくが継続して出る状態」(※2)のことで、いわば慢性腎不全の予備軍です。

慢性腎不全や末期腎不全に進行するのを防ぐためには、慢性腎臓病の段階で早期に手を打つことが重要になります。具体的には、GFR(糸球体濾過量)が1分間に60ml未満、もしくは尿たんぱくが3カ月以上続く場合に慢性腎臓病と診断されます。
なお、GFRとは、腎臓にある「糸球体」が1分間に処理できる血液の濾過・尿の生成能力を表したもので、腎機能の指標となります。この「糸球体」とは、腎臓にある毛細血管の集まりのこと。大量の血液を濾過し、からだに必要な成分とそうでない成分を分ける、いわばフィルターの役目を果たしています

腎臓の機能は、一度低下してしまうと元に戻ることはありません。慢性腎不全を予防するためには、いち早く腎機能の低下に気づき、残された腎機能を維持するための治療・対策が必要となります。

慢性腎不全は、「動脈硬化」「心筋梗塞」「脳卒中」の引き金になる

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メタボリックシンドロームや糖尿病につながる生活習慣が腎臓にダメージを与えることはすでにお伝えしましたが、同時にこれらの生活習慣は動脈硬化の原因にもなり、動脈硬化から心筋梗塞や脳卒中を発症することがあります。また、腎臓の血管や糸球体(毛細血管の集まり)が動脈硬化の影響を受けるとさらなる腎機能の低下につながり、悪循環を生み出します。

このように、慢性腎不全・糖尿病・動脈硬化は「不摂生な生活によって引き起こされる」という点において共通しており、これらの病気を予防するためには、生活習慣の改善が非常に重要です。

慢性腎不全を予防するカギは生活習慣

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慢性腎不全は、普段の生活習慣が深く関係する病気です。腎機能の低下や人工透析を予防するために、まずは生活習慣の見直しから始めましょう。

食生活

暴飲暴食や不規則な食生活を見直し、3食を規則的に適量食べることが大切です。たんぱく質・脂質・糖質・ミネラル・ビタミンをバランスよくとりましょう。また、メタボや糖尿病の原因となる糖質・脂質・塩分のとり過ぎに注意しましょう。

適度な運動

肥満やメタボ予防に、ぜひ運動習慣を取り入れましょう。過剰な運動は心臓や腎臓に負担をかけるため、無理のない範囲で長く続けることが大切です。
運動をすることでストレス解消にもつながります。

十分な休息

ストレスや疲労が溜まると、生活が不規則になることで睡眠障害を引き起こし、さらに疲労が蓄積される......という悪循環に陥ります。
また、ストレス解消のために暴飲暴食・タバコ・飲酒が習慣化する方もいます。
ストレスの改善や疲労回復にもっとも重要なのは休息です。「同じ時間に起きて、同じ時間に寝る」というシンプルな方法で、睡眠リズムを整えましょう。

節酒・禁煙

タバコや過度の飲酒は、肥満・高血圧・動脈硬化の原因となり、腎臓だけでなく心臓や血管系にも影響を及ぼします。
禁煙を守り、お酒は少量をたしなむ程度に抑えたほうが良いでしょう。

持病のコントロール

すでに高血圧・脂質異常症・糖尿病などを指摘されている方は、それらの治療を継続しましょう。
医師の指示のもと服薬を続け、血圧・血糖・コレステロール値を正常範囲に保つことが大切です。

常用薬・サプリメントの使用は慎重に

漢方や鎮痛剤を常用している方は、それらの薬によって「薬剤性腎障害」を起こすことがあります。特に、腎機能が低下している方は医師や薬剤師に事前に確認し、自己判断で服用しないように注意しましょう。サプリメントや健康食品も同様です。

「生活習慣の見直し」「定期検診」で病気の予防・早期発見を

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慢性腎臓病や慢性腎不全は、腎臓だけでなく心臓・血管系にも深く関係する病気です。
腎機能が悪化すれば、健康を損なうだけでなく人工透析が必要になるなど、生活にも深刻な影響を及ぼします。
そうならないために、「生活習慣を改善すること」「腎機能の低下にいち早く気づくこと」が大切です。適度な食事・運動・休息を心がける、定期検診で腎機能・血糖・コレステロール値をチェックするなど、ご自身の健康状態を知り、管理することが病気の予防につながります。

【出典元】

※1 一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会「わが国の慢性透析療法の現況|第3章 2018年透析導入患者の動態 図16 導入患者 原疾患割合の推移,1983-2018」
https://docs.jsdt.or.jp/overview/file/2018/pdf/03.pdf

※2 CKD / 慢性腎臓病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-073.html

 

【写真】

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ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。