50代から気をつける病気。予防・対策

50代からの筋トレで一生現役なからだづくりを

50代から気をつける病気。予防・対策

一般的に、人は50歳を過ぎると毎年1〜2%程度の筋肉量が減少していくと言われています。「長生きする」こと以上に「長く健康に生きる」ために、50代のうちから筋トレの習慣を身につけて健康で豊かな生活をめざしましょう。

【ライタープロフィール】オータム

毎年日本人の平均寿命は延びており、平成28年の時点では男性が80.98歳、女性が87.14歳となっています。その一方で介護を必要とせず、自立した生活を送ることのできる「健康寿命」とは約10年のギャップがあります。
老後の10年ほどはなんらかの病気や障害を患い、介護を受けたり、ベッド上での生活を送ったりしなければならない可能性があります。

内閣府「平成30年版高齢社会白書|2 健康・福祉」の情報を基に作図

さて、「サルコペニア」というご病気をご存知でしょうか? これは加齢にともない筋力が低下して身体活動に障害が出てしまうという誰にでも起こりうる怖い病気です。
一般的に、人は50歳を過ぎると、毎年1〜2%程度の筋肉量が減少していくと言われています。

子育ても一段落つき、これから第二の人生を歩もうというときに「からだが思うように動かない」ということは何としても避けたいところです。これからの時代では「長生きする」こと以上に「長く健康に生きる」ことが重要になってきます。

人生の最後まで自分の足で歩き、ご飯を食べる。そのために絶対に欠かせないもの、それは筋肉です。

そこで今回のコラムではサルコペニアについてわかりやすくご説明したうえで、その具体的な対策のひとつである「筋トレ」についてご紹介したいと思います。

サルコペニアとは、どういう病気?

「サルコペニア」とは、ギリシャ語で筋肉を表す「sarco(サルコ)」と喪失を表す「penia(ペニア)」を掛け合わせた造語です。筋肉の減少により筋力の低下や身体機能の低下が見られた状態とされています。
このサルコペニアとはどういった病気なのでしょうか? 細かく見ていきましょう。

サルコペニアの診断には握力、歩行速度、筋肉量が用いられます。

日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」(サルコペニア診療ガイドライン作成委員会編,ライフサイエンス出版,2017.)p.XIII.図1 AWGSの診断基準の情報を基に作図

この図によれば、握力が落ちたり、歩くのが遅くなったりした場合に、筋肉量の減少がみられたら「サルコペニア」と診断されます。
たとえば、「ちょっとしたことでつまずきやすくなる」「ペットボトルのふたを開けづらくなる」「信号機が青のあいだに渡りきれない」といったことが起こったとしたら、これらは筋力の低下を表しているサインです。現時点で心当たりのある方はサルコペニアになりうる可能性が高く、特に注意が必要です。
このような症状がない方でも加齢による筋力の低下は誰にでも起こりうることですので、誰もが用心したことが良いでしょう。

また、サルコペニアを発症してしまうと、転倒や骨折、心臓の病気、手術でのトラブルなどのリスクが高くなるとされています。そのため症状が出る前に予防をすることがとても大切となってきます。

50代から筋トレをして予防することの重要性と対策方法

このサルコペニアを防ぐためには、適切な食事と運動習慣が大事です。
運動の習慣がある人、身体活動量が高い人はサルコペニア発症を予防できる可能性が高いと言われています。つまり重要なのは、「筋トレの習慣をつくる」「普段の生活でなるべくからだを動かすようにする」の二点です。

そうはいっても筋トレの習慣がない人が明日から習慣を作るのは、難しいことですよね。そこでまずはできることから始めましょう。普段の生活でなるべくからだを動かすことから始めてみてはいかがでしょうか?
以下のような、日常生活でできる運動量を増やすだけでも、サルコペニアの予防には効果的です。

これらを実践してみて、運動への意識が高まってきたらぜひ筋トレに挑戦してみてください。ポイントは、なるべく継続できそうな易しいプログラムから始めることです。いきなりスポーツジムへ通って週3回の筋トレができる人であれば苦労はしません。しかしながら、多くの人が続けられないのが現実です。そこでまずは自宅で1日10回のスクワットから始めてみましょう。

人間のからだの筋肉量の半分以上は下半身、足の筋肉とされています。スクワットでは下半身の多くの筋肉を1度に鍛えることができるため非常に効果的です。上の図を参考にスクワットを習慣にしてみましょう。

50代からでも筋トレによって筋肉は付くのか?

筋トレで筋肉を付けるというと、若い人の特権のようなイメージもあるかと思います。とはいえ、年齢を重ねてからも筋トレによって筋肉を付けることは可能です。
いくつかの研究で年齢を重ねてからも筋トレによって筋肉の増加がみられることがわかっており、すでにサルコペニアに至っている65歳以上の高齢者に対しても筋トレによる筋肉量の増加がみられています。(※1、※2)

50代という年齢から筋トレをすることは決して遅すぎることはありません。加齢による筋肉の減少に備えていまのうちから筋トレによって「貯筋」をしておきましょう。

また筆者の筋トレの経験からも、筋トレを継続させるためには最初の習慣が付くまでの数カ月が一番難しいと思われます。無理のない範囲で継続できることから始めて運動の習慣をつくる、これがなによりも大事です。年を取り、体力と気力が落ち始めてから筋トレを開始するよりも、50代という比較的若いうちから筋トレの習慣、下地をつくることを目標に取り組んでみてください。まずは日常でからだを使う機会を増やし、その後、1日10回のスクワットを始めることが理想のひとつです。

そして、スクワットの習慣がついてきたら、徐々に筋トレの負荷を増やしてみましょう。たとえば、以下のようなメニューがおすすめです。

  • スクワットの回数を増やす
  • 足だけでなく腕立てなどの上半身の筋トレをする
  • ジムに通って本格的に筋トレに取り組む

最初の習慣さえついてしまえば、後は自然に継続できると思います。いくつになっても自分の成長を感じることのできる筋トレの魅力にハマること間違いなしです。筋トレの習慣によって老後の人生が大きく変わることでしょう。

50代から筋トレをすることで健康で豊かな第二の人生を

今回はサルコペニアについての解説と、その予防としての筋トレをお伝えしました。
筋トレをすることによって健康で長生きできる期間を伸ばすことができます。おいしいご飯を食べるにしても、旅行に出かけるにしても必ず必要となるのが筋肉です。

老後は、子どもに介護を頼ることなく自立して健康な生活を楽しむ――これほど素晴らしい人生はないのではないでしょうか。
思い立ったら今日できることからスタートです。50代のうちから筋トレの習慣を身につけて健康で豊かな生活をめざしましょう。

※1 聖マリアンナ医科大学雑誌Vol. 42, pp. 27-35, 2014「高齢者に対する筋力トレーニング指導の効果」

※2 第 52 回日本老年医学会学術集会記録「4.サルコペニアに対する治療の可能性: 運動介入効果に関するシステマティックレビュー」48:51~48:54P

ライタープロフィール

オータム

現役医師

筋トレ歴3年以上、週3回以上ジムに通う筋肉ドクター