ダイエットをしていないのに急に痩せるのは病気が隠れている場合もあります。「痩せること」と「病気」の関係性を理解し、適切な対応につなげましょう。
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「急に痩せるのは病気のせい」という話を聞いたことはありませんか? 家族や知人が急に痩せると「体調が悪いのかな?」と、心配になりますよね。
ダイエットで意図的に体重が減ると嬉しいですが、そうでない場合は病気が隠れている場合もあります。
では、なぜ病気になると痩せるのでしょうか? また、痩せる病気にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで今回は、痩せる原因は何か、痩せる病気にはどのようなものがあるのかをはじめ、病院に行く目安とチェックポイントや・周囲の人が急に痩せた場合は、どう対応すればよいのかについてまとめました。
「痩せること」と「病気」の関係性を理解し、適切な対応につなげましょう。
「急に痩せると病気」は本当? 痩せる原因とは
まず、「痩せる」とはどのような状態なのか考えてみましょう。痩せは、摂取カロリーよりも消費カロリーが上回ったときに起こります。その原因は主に以下の3つです。まずは、意図して痩せたのか、そうでないのか見極めましょう。
1.食事量の減少
食事量が減少し、摂取カロリーが減ることで痩せます。これには、意識的に減らす場合と、偶発的に減る場合があります。
意識的に減らす場合とは、ダイエットを目的に高カロリーの食事を制限する場面がイメージしやすいと思います。
偶発的に減る場合は、ストレスや病気などで食欲が低下した状態です。
他にも、抗生物質や痛み止めなど薬の副作用によっても起こります。
2.運動量の増加
運動量が増加すれば、消費エネルギーは減ります。たとえば、趣味でスポーツを始めた、体力を使う職種へ転職したという場合が考えられます。
3.栄養の吸収阻害や代謝異常によるエネルギー消費量の増加
食事量や運動量が変わっていなくても、痩せることがあります。食事をきちんと摂っているのに栄養がからだに吸収されていなかったり、ホルモンの分泌異常により代謝機能が正常に働いていなかったりします。これには、何かしらの病気が隠れていることがあります。
痩せる病気にはどんなものがあるの?
では、痩せを引き起こす病気にはどのようなものがあるのでしょうか? ここでは、主な病気5つを取り上げて紹介します。
1.がん
「痩せる病気」と聞いたとき、がんをイメージする人は多いと思います。たしかに、がんは痩せる病気のひとつです。がん細胞は、正常な細胞よりも多くのエネルギーを消費するため、痩せる傾向がありますが、以下のような症状でも痩せやすくなります。
- がんそのものによって食事が喉につかえる
- がんによる痛みにより、食欲が低下する
- 抗がん剤や放射線治療の副作用で、吐き気や味覚障害が起こる
- がんに対する不安により、食欲が低下する
2.甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、男性より女性に多くみられます。
甲状腺ホルモンには、代謝を活発にする作用があるため、エネルギー消費量が増えることで痩せます。食欲はあるのに、体重が減るのが特徴です。
3.糖尿病
膵臓から分泌されるインスリンが正常に作用しなくなり、血糖値が高くなる病気です。
糖尿病と聞くと、肥満の人が多いというイメージがあるかもしれません。しかし、糖尿病が進行すると痩せることがあります。理由は、インスリンが低下すると血液中のブドウ糖を正常に利用できなくなるためです。そうなると、からだはタンパク質や脂肪を分解してブドウ糖を作ろうとするため痩せることになるのです。
糖尿病患者数は、増加傾向にあり、糖尿病有病者と糖尿病予備軍は合わせて約2,000万人(※1)いるといわれています。
厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査結果の概要|図9「糖尿病が強く疑われる者」の割合(20 歳以上、性・年齢階級別)」の情報を基に作図
4.胃・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸に潰瘍ができる病気で、主な原因はピロリ菌といわれています。潰瘍による痛みで食欲が低下し、痩せることがあります。
5.うつ病
ストレスや自分自身の性格などさまざまな要因が重なり、脳の神経伝達物質がスムーズに機能しなくなることで発症すると考えられています。不安の増強や気力の低下から食欲が減退し、痩せる人もいます。
急に痩せたらどうすればいいの? 緊急性を見分けるチェックポイント
痩せたからといって、全てのケースで慌てて病院に行く必要はありません。ここでは、体重減少とあわせて注目すべきポイントをまとめました。
体重減少の目安は、6か月で5%以上の減少
ダイエットしていないのに、もとの体重から6か月で5%以上減っていれば、病院を受診しましょう。たとえば、体重60kgの場合、60(kg)×0.05(5%)=3(kg)以上の減少が目安です。
「痩せた」以外に症状がないか
何か病気が隠れている場合、痩せること以外にも症状がある可能性があります。動悸、発汗、気力の低下など、体調に変化がなかったか振り返ってみてください。
内服している薬の副作用に「食欲低下」や「体重減少」がないか
先述のとおり、痩せる原因には抗生物質や痛み止めなどの副作用もあります。主治医に聞くか、処方薬をもらうときに同封されている説明書(薬剤情報提供書)をチェックしましょう。
食欲低下につながるような、精神的ストレスがなかったか
不安や環境の変化など、ストレスによって食欲は変化します。一時的な食欲低下はあまり問題になりませんが、続く場合は病院を受診しましょう。
家族や知人が急に痩せたときの対処法
もし家族や知人が急に痩せたとき、どのように関われば適切な対処につながるでしょうか?
相手の体調を気にかけ、優しく声をかけることから始めてみてください。
「最近痩せた?」と声をかけてみる
忙しかったり、心配ごとがあったりすると、自分のことまで気が回らなくなりますよね。痩せたことに本人が気づいていないかもしれないので、痩せたようにみえると伝えてみましょう。そうすることで、「実はダイエットを始めたんだ」「最近、食欲がなくて......」など、痩せた原因を話してくれるかもしれません。
ストレスや悩みごとがないか、食事がとれているか気にかける
最近変わったことはなかったか、さりげなく聞いてみましょう。仕事や友人関係など、気づかないうちにストレスが大きくなっていることもあります。
一緒に食事をする機会があれば、普段より食事量が減っていないか気にかけてみましょう。
定期的な体重測定を勧める
体重の増減は気になるポイントですが、まずは今の体重が適正なのかどうか知ることも必要です。
一般的な指標はBMIで、体重(kg)÷身長(m)²で求められます。身長は、cmではなくmで計算する点に注意してください。
以下の通り、普通体重は18.5以上25.0未満で、標準は22.0です。
BMI(kg/㎡) |
判定 |
---|---|
< 18.5 |
低体重 |
18.5 ≤ BMI < 25.0 |
普通体重 |
25.0 ≤ BMI < 30.0 |
肥満(1度) |
30.0 ≤ BMI < 35.0 |
肥満(2度) |
35.0 ≤ BMI < 40.0 |
肥満(3度) |
40.0 ≤ BMI |
肥満(4度) |
厚生労働省 「e-ヘルスネット [情報提供] 肥満と健康」を基に作表
ただし、痩せていれば良いというわけではありません。BMIと死亡リスクについての調査では、BMI21~27が、一番死亡率が低いという結果が出ているようです。(※2)
痩せすぎず太りすぎず、適正な体重維持が健康的な生活に欠かせないということが分かります。
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ 「肥満指数(BMI)と死亡リスク」の情報を基に作図
病院受診を勧める
急激に体重が減っている場合や、他にも症状がある場合は、念のため病院に行くよう勧めましょう。もしかすると、病気が原因で痩せたのかもしれません。
一般的に、担当になる診療科は内科です。痩せた以外に症状があるときは、その症状に合った診療科を受診してもよいでしょう。病院に行く前に、いつからどのくらい体重が減ったのかや食事量をまとめてから受診するとスムーズです。
まとめ
すべてのケースで「急に痩せたら病気」と確定するわけではありませんが、病気が隠れているケースも考えられます。家族や知人が痩せたときは周囲からの声かけで気づく場合もあるので、コミュニケーションをとり、異常の早期発見につなげましょう。
また、日頃から体重や体調の変化、食事量に気をつけ、気になることがあれば病院を受診しましょう。