50代から気をつける病気。予防・対策

50代以降に受けるべき予防接種の種類と注意点

50代から気をつける病気。予防・対策

感染症対策でもっとも重要なのは、かかる前に予防をすることです。万が一感染症にかかった場合に「重症化するリスク」や周囲の人への「二次感染のリスク」を考えると、予防接種を受けるほうが、メリットが大きいのは明らかです。ご自身と大切な人の健康を守るためにも、50才を過ぎたら予防接種を検討しましょう。

【ライタープロフィール】遠藤愛

いつどこでかかるかわからないのが感染症です。インフルエンザのような季節性のものに限らず、体力や免疫力が低下したときにかかりやすい感染症もあるため油断はできません。

感染症対策でもっとも重要なのは、かかる前に予防をすることです。
予防接種を受けることで感染症のリスクを減らすだけでなく、万が一発症しても症状を軽く抑える効果が期待できます。

今回は、50代以降の方に特に受けてほしい予防接種と、その注意点について解説します。

ミドル・シニア世代の予防接種はなぜ必要?

まずは、予防接種について簡単におさらいをしておきましょう。
厚生労働省のウェブサイトでは、「予防接種」について、以下のように解説しています。

予防接種とは、病気に対する免疫をつけたり、免疫を強くするために、ワクチンを接種することをいいます。ワクチンを接種した方が病気にかかることを予防したり、人に感染させてしまうことで社会に病気がまん延してしまうのを防ぐことを主な目的としています。また、病気にかかったとしても、ワクチンを接種していた方は重い症状になることを防げる場合があります。

(予防接種情報 よくある質問 Q1:予防接種ってなに?-厚生労働省 より引用)

50代を過ぎたミドル・シニア世代は、加齢による体力の衰えや持病などで免疫力が低下しやすい傾向にあります。免疫力の低下は感染症にかかるリスクを増やすだけでなく、重症化や持病の悪化にもつながりかねません。

さらに、感染症は自身の健康が脅かされるだけでなく、周囲の人にうつしてしまうリスクもあります。社会全体で感染症を蔓延させないためにも、ひとりひとりが責任を持って感染対策をすることが大切です。

ミドル・シニア世代に受けてほしい予防接種

ここからは、50代以降のミドル・シニア世代に積極的に受けてほしい予防接種について解説します。

必ず受けてほしい予防接種

<インフルエンザ>

インフルエンザウイルスが原因で、発熱・頭痛・関節痛など全身のつらい症状を引き起こす感染症です。特に高齢の方や慢性疾患(持病)を持つ方が感染すると、肺炎の合併や持病の悪化を招き、それによって入院を余儀なくされ、最悪の場合、死亡することもあります。

下の図は、東京都におけるインフルエンザによる入院患者の割合を基に、「59才以下」と「60才以上」に分類したものです。ご覧のとおり、「60才以上」の割合が高いことがわかります。

東京都感染症情報センター「過去9シーズンの年齢階級別入院患者報告割合の推移(2011~2020年)」の情報を基に作図

つらい全身症状に加え、重症化すると入院や死亡のリスクもあるインフルエンザですが、予防接種によってそれらのリスクを減らせることがわかっています。

厚生労働省「平成22年版厚生労働白書」の情報を基に作図

現在、65才以上の高齢者と、一部の持病を持つ60〜64才の方を除き、インフルエンザワクチンは「任意接種」となっています。法律で定める「定期接種」と異なり、任意接種の場合は費用が全額自己負担です。しかし、かなり高い割合で感染や重症化の予防ができると考えれば、よほどの理由がない限り積極的に予防接種を受けたほうがメリットは大きいと言えるでしょう。

<肺炎球菌感染症>

肺炎球菌が原因の感染症で、気管支炎・肺炎・敗血症など重篤な合併症を引き起こすことがあります。現在、肺炎は日本人の死因の第5位(※)です。高齢になるほど肺炎で亡くなる人の割合が高い傾向にありますが、その肺炎の主な原因菌が「肺炎球菌」だと言われています。

少々古い情報ですが、東京都のデータを見ると、侵襲性肺炎球菌感染症の患者は乳幼児と高齢者に多く、特に60代以降が大半を占めています。

東京都感染症情報センター「東京都における侵襲性肺炎球菌感染症由来の肺炎球菌の血清型について(2013~2015年)」の情報を基に作図

インフルエンザと同様、肺炎球菌感染症も免疫力の低下した高齢者や持病のある方は重症化しやすい傾向にあります。65才以上の高齢者と持病のある60才以上の方は定期接種の対象となるため、対象年齢になったら予防接種を受けるようにしましょう。

なお、定期接種の対象者は年度ごとに異なり、その年度(4月1日〜翌年3月31日まで)に65才となる方を筆頭に、70才・75才・80才......と年齢が決められています。医療機関へ行く前に確認しておくとよいでしょう。

体力・免疫力の低下でかかりやすい感染症 

インフルエンザや肺炎球菌のほかにも、免疫力の低下したシニア世代が注意すべき感染症があります。

<帯状疱疹>

帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水痘(みずぼうそう)ウイルスが再び活性化して起こる感染症です。からだの中に潜伏していたウイルスが、免疫力が低下した際に活発化し、皮膚に紅い斑点と水ぶくれが生じます。特に50代以降で患者が増える傾向にあり、加齢による免疫力の低下や疲労・ストレスが発症の引き金となっています。

帯状疱疹の症状は、皮膚だけでなく神経にも炎症を起こすため、激しい痛みをともなうのが特徴です。さらに、治癒した後も長期にわたって神経痛に苦しむことがあります。
重症化するケースもあるため、50才を過ぎたら予防接種を受けておくと安心です。

<百日せき>

百日咳菌による感染症で、激しい咳が特徴です。感染力が強く、感染初期は風邪に似た症状であるため、知らない間に周囲に蔓延することがあります。
長引く咳によって体力の消耗も激しく、乳幼児や高齢者は重症化しやすいため注意が必要です。

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<破傷風>

土や泥の中にいる破傷風菌が傷口から侵入して起こる感染症です。破傷風菌から出される毒素によって神経障害を起こし、口の開けづらさ、首筋の張り、歩行障害などが見られ、適切な治療をしなければ全身のけいれんや呼吸障害で死亡することもあります。
これまでに破傷風の予防接種を受けたことがある方も、その効果は約10年と言われています。趣味でガーデニングや畑仕事などをする方は、小さな傷口から感染することもあるため、追加の予防接種を受けておくと安心です。

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予防接種を受けるときの注意点

予防接種は、弱毒化・不活化したウイルスや細菌を成分とする薬剤(ワクチン)をからだの中に入れて免疫を獲得するものです。そのため、「感染症の予防」という本来の目的以外の作用(副反応)が現れることがあります。

安全に予防接種を受けるため、さらには副反応が現れても適切に対処するために、いくつか注意してほしいことがあります。

写真4

接種前の注意点

ワクチンを接種したからといって完全に感染症を防げるわけではなく、副反応が現れる可能性があることを理解し、十分納得したうえで受けるようにしましょう。
予防接種に関する説明書をよく読み、わからないことや気になることは事前に医師に確認しておくことが大切です。
また、接種当日に発熱している、体調が優れない、過去の予防接種でアレルギー反応を起こしたことがあるなど、医師が「接種できない」と判断した場合は、予防接種が見送られることがあります。原則、予防接種は体調の良いときに受けましょう。

接種後の副反応

ワクチンにはさまざまな種類がありますが、いずれの場合も接種部位の赤み・腫れ・痛みはよく見られる副反応です。
肺炎球菌ワクチンの場合、非常にまれではありますがショック症状や蜂窩織炎(細菌感染が皮膚および皮下組織に広がり、炎症を起こした状態)など重い副反応が報告されています。また、過去に肺炎球菌ワクチンを接種した方が5年以内に再接種をすると、注射部位が硬くなり、赤みや痛みが強く現れることもあります。

もし副反応が現れたら?

重篤な副反応である「アナフィラキシーショック」は接種後30分以内に現れることが多いため、接種後しばらくは医療機関で待機し、体調に問題がないことを確認して帰宅するとよいでしょう。
ほかの副反応も通常24時間以内に現れることがほとんどですので、この間はとくに体調に注意し、異変を感じたらすぐに医療機関を受診するようにしましょう。

自分と大切な人を守るために予防接種を受けましょう

予防接種は完全に感染症を予防できるわけではなく、副反応が現れる可能性もあります。しかし、万が一感染症にかかった場合に「重症化するリスク」や周囲の人への「二次感染のリスク」を考えると、予防接種を受けるほうが、メリットが大きいのは明らかです。ご自身と大切な人の健康を守るためにも、50才を過ぎたら予防接種を検討しましょう。


ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。