50代から気をつける病気。予防・対策
ストレスから自分を守る! 40代以降の責任世代に知ってほしい病気との関連性と対処法

ストレスと病気の因果関係をはじめ、ストレスが原因となりやすい病気について知り、自分にあった対処法でストレスを緩和しましょう。
40代以降は「責任世代」といわれ、仕事でも家庭でも責任あるポジションになることが多くなります。そうすると、より多くのストレスを抱えることになります。
ストレスを感じたとしてもうまく解消できればいいのですが、そうでないとさまざまな不調を引き起こす原因になります。
そこで今回は、ストレスの概要、ストレスと病気の因果関係をはじめ、ストレスが原因となりやすい病気や、おすすめのストレス解消法、注意したいストレス解消法についてまとめました。
ストレスの怖さを認識し、どのように解消したらいいのか考えていきましょう。
目次
ストレスとは? どういうときに感じるの?
ストレスとは、「外部から刺激により、からだに負荷を感じること」 をいいます。
厚生労働省の調査では、58%にあたる労働者が「強いストレスとなっていると感じる事柄がある」と答えています。(※1)
ストレスの原因は、さまざまです。睡眠不足、不安、人間関係などが思い浮かびやすいですが、暑い、寒いといった環境もストレスになります。また、ストレスと聞くとネガティブな出来事をイメージしますが、そうとは限りません。
下記は、公益財団法人循環器病研究振興財団によって精神的ストレスの大きさが点数化されたものです。ここにも書かれているように、「結婚」「妊娠」「大きな個人的達成」など、一見ポジティブな出来事でもストレスになります。
公益財団法人循環器病研究振興財団「知っておきたい循環器病あれこれ」の情報を基に作図
なお、点数の合計が200~299点の人は50%の確率で、300点以上の場合は80%の確率で、なんらかの病気になるとされています。
しかし、これは全員に当てはまるわけではありません。同じストレスがかかっても、その人の耐性によってダメージは異なるほか、周囲のサポートや対処法によっても変わります。ストレスによる影響は、あらゆるものが関係して決まると言えるのです。
なぜストレスをためると病気になりやすいの?
「ストレスをためると病気になりやすい」といわれますが、なぜなのでしょうか?
それは、ストレスがからだの恒常性を乱すからです。
恒常性とは、あらゆる環境の変化に適応して一定の状態を保つことをいいます。たとえば、暑いときは汗をかいて体温を下げ、寒いときはからだが震えて体温を上げますが、これも恒常性のひとつです。
人間のからだは、自律神経系・内分泌系・免疫系の機能が複雑に関係しながら恒常性を保っていますが、ストレスが続くとこれらの機能に影響がでてきます。
ここで、ストレスがそれぞれの機能にどのような影響をあたえるか見ていきましょう。
1.自律神経系:交感神経が優位になる
神経伝達物質(アドレナリン、ノルアドレナリン)が分泌されます。これにより、自律神経が乱れて交感神経が優位になり、眠れなくなったり血圧が高くなったりします。
2.内分泌系:副腎からホルモンが分泌される
副腎からアドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールといったホルモンが分泌されます。なかでも、副腎皮質ホルモンのひとつであるコルチゾールは「ストレスホルモン」として知られており、ストレスがかかると増加します。
コルチゾールには、記憶を司る脳の海馬を萎縮させる、血糖値を上昇させるなどの働きがあります。
3.免疫系:免疫力が低下する
ストレスにより、免疫を維持する白血球の働きが弱くなります。
また、交感神経優位、コルチゾールの分泌増加によっても、免疫力が低下するといわれています。
さらに、ストレスが間接的に病気を引き起こすこともあります。たとえば、ドカ食いを続けることで血糖値やコレステロール値が上昇し心臓病になったり、喫煙本数が増えることで肺がんを発症したりします。
このように、間違ったストレス発散法は病気のリスクを高めます。
ストレスが原因で発症しやすい病気とは?
ストレスとの因果関係が指摘されている病気はさまざまあります。
ここでは、代表的な病気を6つピックアップして紹介します。
心臓病
具体的には心筋梗塞や狭心症などで、突然亡くなることもあります。精神的ストレスは、心臓病の大きなリスクです。なかでも、急性心筋梗塞のリスクは1.55倍上昇するというデータがあります。(※2)
糖尿病
糖尿病は精神面との因果関係が指摘されており、糖尿病患者の約30%にうつ症状があるといわれています。(※3)
また、内分泌や免疫異常によりコルチゾールが増えると、血糖値が上昇しやすくなります。
脳卒中
脳梗塞やくも膜下出血など、脳の血管に異常が起きることで発症します。ストレスが一因で高血圧や糖尿病になると、脳卒中を引き起こしやすくなります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
ストレスや疲れが原因というイメージがありますが、実はストレスだけでは発症しません。
多くの場合、ピロリ菌が原因です。ピロリ菌保菌者がストレスを受けることで、発症しやすくなるといわれています。
メニエール病
耳の奥にある内リンパ液が増えることで、めまいや吐き気などの症状が出ます。
発症のメカニズムは分かっていませんが、原因のひとつにストレスがあると考えられています。
精神疾患(うつ病、神経症など)
脳の神経伝達物質であるセロトニンの減少が、原因のひとつです。セロトニンは脳の神経伝達物質で、心を安定させる作用があります。
しかし、セロトニンが減少すると、快楽をもたらすドパミンや恐怖を司るノルアドレナリンのバランスが崩れてしまいます。
ストレスとうまく付き合う方法
規則正しい生活(食事、睡眠、運動)
バランスのとれた食事、睡眠時間の確保、適度な運動は健康の基本です。なかでも、運動とストレスに関する興味深いデータがあります。
スポーツ庁の調査によると、「運動・スポーツのストレス解消効果について」は、性年代問わず90~95%程度が「大いに感じる」「まあ感じる」と回答しています。
「大いに感じる」と答えた人のうち、日常的に運動・スポーツを実施している人の方が、実施しない人に比べて運動・スポーツのストレス解消効果を感じています。運動習慣のない人は、少しずつでも運動を取り入れることをおすすめします。
スポーツ庁 「平成28年度体力・運動能力調査結果の分析」の情報を基に作図
趣味を楽しむ
趣味を楽しむ時間は、日常を忘れて好きなことに集中できる貴重な時間です。積極的に外に出ていろんな人と交流するのもいいですが、おっくうな人は読書や映画鑑賞など手軽にできるものから始めましょう。
深呼吸や軽い体操で気持ちを切り替える
時間や場所を問わず、手軽に取り入れられるのが深呼吸と軽い体操です。深呼吸は副交感神経を優位にし、軽い体操は筋肉の緊張をほぐすのでリラックスできます。
お昼休憩やトイレに立ったときなど、職場でもやってみてください。
自分のストレスサインを把握し、早めに対処する
寝つきが悪くなった、食欲がないなど、ストレスを感じ始めたときに出る症状は人それぞれです。自分はどのような症状が出るのか知っておくことで、病気になる前に対処できます。
信頼できる人に相談する
家族、友人、同僚など、気の置けない人に話を聞いてもらえるとホッとしますよね。自分だけでストレスが解消できないときは、信頼できる人に相談するのもおすすめです。
さまざまな対処法を試してもストレスにより不調が出始めている場合は、精神科や心療内科の受診も検討しましょう。
やってはいけないストレス発散方法
ストレスを発散しようとして、反対に病気につながってしまうものもあるので注意しましょう。
過度な飲酒
「酒は百薬の長」という言葉がありますが、飲みすぎは病気の原因になります。厚生労働省は、1日の飲酒量の目安を「純アルコールで約20g程度」としています。(※4)
具体的な目安は以下のとおりです。
- ビール中瓶1本
- 日本酒1合
- チュウハイ(7%)350ml缶1本
- ウイスキーダブル1杯
喫煙
たばこの煙は、気道や肺に直接悪影響を及ぼし、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)を引き起こします。また、血圧上昇や血管の壁の損傷などの原因となり、呼吸器以外の病気になる危険性があります。
ドカ食い
ドカ食いによって肥満になると、高血圧や高脂血症になるリスクが高まります。これらはさまざまな病気の原因となるので、注意が必要です。
ギャンブル
不安や悩みから逃れるためにギャンブルにはまると、快楽物質であるドパミンが脳内に出ます。これによりギャンブル依存症になると、生活習慣が乱れ病気のリスクが高まります。
まとめ
私たちは日常でさまざまなストレスにさらされており、ゼロにすることはできません。だからこそ、自分にあった対処法でストレスを緩和する必要があります。早め早めに対処して、病気のリスクを少しでも減らしましょう。
【参考サイト】
※1 厚生労働省 「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 【労働者調査】」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h30-46-50_kekka-gaiyo02.pdf 4P
※2 国立循環器病センター 循環器病情報サービス 「[95]ストレスと心臓」
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph95.html
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット [情報提供]「糖尿病とこころ」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-05-006.html
※4 厚生労働省 e-ヘルスネット [情報提供] 「飲酒のガイドライン」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html
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