50代から気をつける病気。予防・対策

運動不足が死亡率にも影響! 適度な運動で生活の質を向上させよう

50代から気をつける病気。予防・対策

「運動=スポーツ」と考えるのではなく、「運動=からだを動かすこと」と軽い気持ちでとらえると始めやすく、長続きします。運動が難しい場合には、ちょっとした掃除をするなどほんの少しからだを動かすだけでも十分です。できる範囲で長く継続できるものを、日常生活の一部に取り入れるようにしましょう。

【執筆者】中西 真理

運動は、生活習慣病の予防や筋力をはじめとした、からだのさまざまな機能の維持などに重要な役割を果たすものです。その一方で、運動不足がもたらす具体的なリスクについては、あまり知られていないのが現状です。

古い情報ですが、厚生労働省の資料によると、「運動不足」は、喫煙・高血圧に次ぐ死亡原因の第3位となっており、運動不足に関連した死亡者数は年間5万人以上にも上ります。また別の報告によると、運動習慣が認知症やがんの発症率にも関与していることが示唆されています(※1)。

厚生労働省「平成29年版 厚生労働白書|社会保障と経済成長 図表8-4-1リスク要因別の関連死亡者数(2007年)」を基に作図

そこで今回は、運動不足がもたらすさまざまなリスクを紹介するとともに、日常生活で運動量を増やす方法、運動時に注意すべきことなどを解説します。

運動不足のリスクと運動が全身にもたらす効果

日ごろ、からだを動かす習慣があまりないと体力や持久力が低下し、筋力も衰えてきます。筋力が衰えると、動くこと自体がおっくうとなり、引きこもりがちになることもあります。買い物やちょっとした外出、散歩などの気分転換を楽しむ機会も減ることにもなるため、生活の質の低下につながります。そのほか、筋力の低下が原因で転倒し、介護が必要になる場合もあります。

さらに、運動不足は病気の発症にも関与します。運動する機会が少ないと体内に脂肪が蓄積して、糖尿病・脂質異常症・高血圧などになるリスクが高まります。これら生活習慣病は動脈硬化を引き起こし、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など致死的な病気へとつながります。また、運動不足で骨に適当な負荷がかからない状態が続くと、骨からカルシウムが溶け出してもろくなり、骨粗しょう症になりやすくなります。

一方で、運動をすると生活習慣病に関するリスクがおさえられ、がんや動脈硬化に関連する死亡を減らすことができます。

国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ「身体活動量と死亡との関連について」の情報を基に作図

また、骨に刺激が与えられるため丈夫になり、筋力がつくことで転倒のリスクも軽減されるほか、運動による適度な疲れが質の良い睡眠を誘い、規則正しい生活を送れるようになります。さらに、ストレス解消や気分転換にも効果が期待できるため、うつ病の予防や改善にも有効です。また、身体機能が維持されるので老化の進行がゆるやかになり、生活の質も向上します。

このように、運動は将来的な病気や死亡に関するリスクだけではなく、日ごろの生活の質の向上にも役立つものです。そのため、無理をしない範囲で運動する習慣を生活の中に取り入れることがすすめられます。

日常生活に運動習慣を取り入れるコツ

継続的な運動が健康に良いとわかっていても、運動のために時間を割き、継続することは簡単ではありません。「運動=スポーツ」と考えるのではなく、「運動=からだを動かすこと」と軽い気持ちでとらえると始めやすく、長続きします。

もちろん、いきなりきつい運動から始める必要はありません。まず1日10分程度、普段よりもからだを動かすことから始めましょう。10分歩くと約1,000歩、距離にして約600~700メートルほどになります。たとえば、会社勤めの方であれば、昼休みに歩いて5分ほどの場所にある店へ行き、帰ってくるだけでいつもより1,000歩多く歩くことができます。

そのほか、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、電車内では座らずに立つ、買い物時にカートを使わない、といったことでも運動量を増やすことができます。

また、時間が十分にとれる場合は週に2回程度、軽く息が弾むくらいの運動を30分ほどするのがおすすめです。運動は、どのようなものでも構いません。楽しく長く続けられるものを選びましょう。

なお、筋力の低下が心配な方、転倒などに不安がある方は、筋力のトレーニングも行いましょう。厚生労働省では、腹筋や太ももの筋肉の筋力維持・向上に役立つトレーニングとして、以下のような運動を勧めています。

上体起こし

膝を曲げた状態から頭と肩を起こし、お腹をのぞくようにする。

股関節のストレッチ

両足の裏を合わせて股を開き、両膝を軽く下へ押す。

このほか、全10種類の運動を紹介しています。興味のある方はぜひ試してみてください。

厚生労働省「身体活動・運動」

運動時に注意すべきこと

運動が健康に良いとはいえ、すべての人にお勧めできるわけではありません。
心臓の病気がある方は、運動により心臓に負担がかかる可能性があるため、運動の可否だけではなく運動の強さや頻度についても主治医の指示を仰ぐ必要があります。

喘息の方は、調子の悪いときは無理に運動をしないようにしましょう。運動する際は事前に医師に相談し、発作に備えて気管支拡張作用のある薬を携帯するようにしましょう。

筋肉や関節の痛みなど整形外科分野の病気がある方は、禁止されている動きなどに注意し、からだに負担の少ない運動を選ぶようにしましょう。リハビリ中の方は無理をせず、理学療法士や医師の指示にしたがって運動するようにしましょう。

腎臓の病気がある方は、腎機能がどの程度障害されているかによって運動の可否・強度が変わってきます。初期の腎障害であれば運動で問題が生じることは少ないですが、尿たんぱくが増加する場合は強度を下げる必要があります。不安な場合は医師と相談し、運動強度についても確認しましょう。

なお、糖尿病の方にとって運動療法は食事療法に並ぶ基本的な治療のひとつですが、インスリン注射や飲み薬などで治療している方の場合、運動量が多すぎたり空腹時に運動したりすると低血糖を起こすことがあります。特に激しい運動や長時間にわたる運動をした際には、低血糖症状が10時間以上経ってから生じることもあります。低血糖が予測される場合は、事前に軽く糖分を含む食事をとるようにしましょう。また、低血糖発作に備えて、ブドウ糖を携行するようにしましょう。

運動をすること・からだを動かすことは健康を維持し、生活の質を向上させるために欠かせないものですが、大切なのは楽しみながら続けることです。体調が悪いときや天気が悪いときには無理をせず、休むようにしましょう。

運動が難しい場合には、ちょっとした掃除をするなどほんの少しからだを動かすだけでも十分です。できる範囲で長く継続できるものを、日常生活の一部に取り入れるようにしましょう。

執筆者

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬学修士。

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。