50代から気をつける病気。予防・対策

その腰痛、放置して大丈夫?シニアに多い慢性腰痛の原因と対処法

50代から気をつける病気。予防・対策

腰痛そのものは病気ではありませんが、症状が現れる背景には何かしらの理由があります。適切な治療・ケアを受けるためにも、まずは専門医の診察を受けることをおすすめします。

【ライタープロフィール】遠藤愛

「腰痛」は私たちにとって身近な症状のひとつです。約8割の人が生涯に一度は経験すると言われています(※1)。
そのため、腰痛を自覚しても「年のせいだろう」と見過ごし、市販の湿布や塗り薬で対応しがちです。しかし、なかには単なる腰痛ではなく、重篤な病気が潜んでいることもあります。

今回は、腰痛が起こる原因と病気との関係、症状に合わせた対処法について解説します。

腰痛はなぜ起こる?

まず、「腰痛」とは何なのか、を改めて理解しておきましょう。厚生労働省のウェブサイトには、以下のようにあります。

"「腰痛」とは疾患(病気)の名前ではなく、腰部を主とした痛みやはりなどの不快感といった症状の総称です。一般的に坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)を代表とする下肢(脚)の痛みやしびれを伴う場合も含みます。腰痛は誰もが経験しうる痛みです。"
*2 腰痛対策 厚生労働省より引用

腰痛そのものは病気ではありませんが、症状が現れる背景には何かしらの理由があります。さらに、「動くたびに痛む」「痛みがずっと続く」状態は常にストレスにさらされることになり、決して見過ごすことはできません。
まずは、その腰痛が何に由来するものかを知ることが大切です。

腰痛の原因として、次のようなことが考えられます。

  1. 腰椎や椎間板の変形・損傷
  2. 内臓や血管の病気
  3. 腰椎への細菌感染・がんの転移
  4. その他

ひとつずつ見ていきましょう。

1.腰椎や椎間板の変形・損傷

人間のからだは、首からおしりにかけていくつもの骨(椎体)が連なっています。椎体と椎体の間でクッションの役割を果たす軟骨組織を「椎間板」と呼び、これらが連結したものが「背骨(脊椎)」です。
脊椎は関節や靭帯と結合し、「脊柱管」と呼ばれる脊髄(神経)の通り道を作っています。

腰椎・椎間板のトラブルには、ねじれや反り返る姿勢の反復によって起こる「腰椎分離症」、腰椎に強い力が加わることで椎間板内の髄核が飛び出して神経を圧迫する「腰椎椎間板ヘルニア」、加齢にともなう腰椎の変形で脊柱管が狭くなり神経を圧迫する「腰部脊柱管狭窄症」などが代表的です。
また、女性は閉経前後に女性ホルモンが減少することで骨がもろくなり(骨粗鬆症)、圧迫骨折を起こしやすくなります。

2.内臓や血管の病気

腰に異常がなくても、内臓や血管の病気が原因で腰痛を引き起こすことがあります。
たとえば、胃潰瘍・胆嚢炎など消化器系の病気、尿路結石や腎盂腎炎など泌尿器系の病気、子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科系の病気、解離性大動脈瘤や腹部大動脈瘤など血管の病気が代表的です。

3.腰椎への細菌感染・がんの転移

細菌感染によって腰椎に炎症が生じると、発熱や腰痛などの症状が現れます。また、ほかの臓器から転移したがんが腰椎を破壊すると激しい痛みを引き起こします。

4.その他

加齢や生活習慣、心理的要因によって起こる腰痛があり、ストレス・抑うつ・筋力低下・冷えや凝りによる血行不良・運動不足などが主な原因です。

このように、腰痛の原因はさまざまです。
治療や対策を行う前に、まずは自分の腰痛がどのタイプに当てはまるかを知ることが大切ですが、実際は腰痛患者の8割以上が「原因不明」とも言われています。これは、必ずしも画像検査の結果と症状が結びつかないことや、不安・ストレスで自律神経や脳の働きに不具合が生じ痛みに対する過敏性が高まるなど、視覚的に「この部位に異常がある」と特定できないものが多いためです。

すぐに受診すべき腰痛の特徴

腰痛には、原因がはっきりせず、また特別な治療を要しないケースが多い一方で、早期治療を必要とする「危険な腰痛」もあります。なるべく早く治療を受けるためには、異常サインを見逃さないことが大切です。

たとえば「腰椎椎間板ヘルニア」は、腰痛だけでなく脚全体のしびれや麻痺をともない、次第に排尿・排便に支障が出てきます。また、「腰部脊柱管狭窄症」は歩行障害が顕著に見られるのが特徴です。いずれの場合も、生活の質を著しく低下させ、治療が遅れると後遺症が残るリスクがあります。

痛みやしびれはからだが発する異常サインです。「たかが腰痛」と軽く考えず、次のような症状がある場合はすぐに受診されることをおすすめします。

・安静にしていても痛みが引かない

内臓や血管に病気の疑いがあります。背中から腰にかけての激痛が突然起こる、じっとしているのに強く痛む場合は、大動脈解離も疑われます。一刻も早く病院を受診しましょう。

・足のしびれやマヒがある。失禁してしまう

脊椎神経に障害がある可能性が高いです。治療のタイミングを逸すると回復が遅れ、後遺症の残る可能性も出てきます。

・熱がある

体温がどんどん上昇するような場合は、細菌感染が疑われます。専門的な検査や治療が必要です。

・痛みがひどくなる

ガンをはじめとする別の病気の併発が疑われます。

腰痛の原因によって対処法は変わる

腰痛の治療・対処法には、薬物療養・運動療法をはじめいろいろな方法がありますが、原因に応じたケアを行うことが重要です。まずは診察・検査を受け、原因が見つかればそれに対する治療を行います。

原因が特定できない場合は、腰痛改善を目的とした薬の使用やリハビリなど、対症療法で痛みをコントロールします。自己流の間違ったケアは腰痛を悪化させることにつながるため、必ず医師や理学療法士の指導のもと行いましょう。

1.自宅で行えるセルフケア

・運動療法

腰痛のケアでもっとも重要なのが運動療法です。骨折やがんの転移など原因がはっきりしている場合を除き、過度の安静はかえって逆効果であることがわかっています。現在の腰痛治療では、「痛みが落ち着いたらなるべく早くからだを動かす」のが常識です。

また、「なんとなく腰がだるい」「ずっと同じ姿勢でいると腰が痛くなる」など軽い違和感や不快感を抱えている方におすすめなのが、『これだけ体操』です。
『これだけ体操』は腰痛治療の権威である松平浩医師が考案した体操で、書籍やテレビでも広く紹介されています。

松平医師によれば、原因不明の腰痛の多くは「髄核」のずれによって引き起こされるといいます。この髄核のずれを元に戻す方法が、『これだけ体操』です。

松平浩先生よりいただいた資料を基に作図

また、筋力低下や筋肉の緊張が原因で起こる腰痛もあります。
腰を支えているのは主にお腹や背中、おしり、太ももの筋肉ですが、これらの筋肉をうまく使えないとからだを支えることができず、腰痛の原因となります。

ストレッチで腹筋・背筋・腰回りの筋肉をほぐし、適度に負荷をかけたトレーニングすることで腰痛改善が期待できます。

セルフケアを行う際は必ず専門家に相談し、無理のない方法で行いましょう。

写真2

・日常生活での注意点

腰に負担をかけない動作を心がけることも大切です。

  • 重い物を持たない
  • 前かがみの姿勢を避ける
  • 猫背にならないようにする
  • 就寝時は横向きの姿勢で寝る

2.専門家による治療

・薬物療法

消炎鎮痛作用のある内服薬・ぬり薬・湿布薬などで痛みをコントロールします。筋肉の緊張をほぐし、血流改善作用のある薬を用いることもあります。

・温熱療法

患部を温めることで血流を改善し、痛みを和らげる対症療法です。冷えや凝りが原因の腰痛に対しては効果が期待できますが、炎症性の場合は症状を悪化させる可能性があります。

・神経ブロック注射

神経の周辺に局所麻酔薬やステロイド剤を注射して、痛みが伝わるのを遮断(ブロック)する治療法です。

慢性腰痛の場合、治療のゴールが見えないことや痛みに対する不安から悲観的になる方が少なくありません。しかし、「痛みが出るのではないか」「動くと悪化するのでは」といった不安から腰を必要以上に保護するような生活(安静にしすぎる生活)を送ると、回復が遅れるだけでなく筋力の低下や抑うつなどの悪循環を生み出します。

繰り返しますが、過度の安静は逆効果です。専門家の指示に従って根気強く治療やリハビリを続け、痛みをうまくコントロールすることが腰痛対策では何よりも重要です。

写真3

「たかが腰痛」と思わないで まずは専門医に相談を

腰痛はとても一般的な症状であるため、ともすれば軽く考えてしまいがちです。しかし、長引く腰痛は健康や生活に影響するだけでなく、重篤な病気や後遺症のリスクが潜んでいることもあります。適切な治療・ケアを受けるためにも、まずは専門医の診察を受けることをおすすめします。

【出典・参考元】

※1 一般社団法人日本職業・災害医学会「日本職業・災害医学会会誌第63巻第6号
http://www.jsomt.jp/journal/pdf/063060329.pdf

【写真】

1:腰痛の女性

2:準備運動をする女性

3:カウンセリングを受ける女性

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ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。