50代から気をつける病気。予防・対策

40代以降での発症が増加中 「大人喘息」とは

50代から気をつける病気。予防・対策

大人喘息は「早期発見・早期治療」、さらに「治療の継続」が重要です。病気と上手く付き合っていくためには、病気を正しく理解し必要以上に恐れないことも大切です。

【ライタープロフィール】遠藤愛

「喘息は子どもの病気」と思っている方はいませんか?
じつは、成人の1割程度に「大人喘息(医療用語では成人喘息)」があると言われています。
また、喘息によって命を落とす方は年間1500~1600人ほどいると言われ、命に関わる病気でもあります。息苦しさや長引く咳と痰といった自覚症状があっても、「まさか自分が......」と見過ごしてしまうと重症化につながってしまいます。
喘息は、子どもだけの病気ではありません。今回は、大人喘息の特徴や治療法、生活の注意点について解説します。

意外と知られていない「大人喘息」

まずは、「喘息」という病気について理解しましょう。
厚生労働省のウェブサイトには、以下のように解説されています。

喘息とは、一般的には気管支喘息のことをいいます。アレルギー反応などによって気管支の炎症が慢性化すると、気道が狭くなり刺激に対して過敏な状態となります。このため、発作的に喘鳴(のどがゼイゼイ鳴ること)や咳、呼吸困難を起こし、時には死に至ることもある病気です。(厚生労働省 eヘルスネット「喘息」より引用)

喘息には以下のような特徴があります。

  • 息苦しさ・咳・痰をともなう
  • 症状は夜間や早朝に現れやすい
  • ダニやホコリ、ペットの毛、花粉といったアレルゲンのほか、タバコの煙や気候の変化、運動、ストレス、肥満などが喘息発作の引き金となる

さらに、大人喘息ならではの特徴もあります。

成人して初めて喘息を発症する人が多い

小児喘息の人が、「成人以降、そのまま大人喘息に移行する」もしくは「成人して再発する」というのはまれで、大人喘息は「成人してから初めて発症した」というケースがほとんどです。特に40代を過ぎてからの発症が多く、男女の割合は女性がやや上回る傾向にあります。

厚生労働省「患者調査 平成29年患者調査 閲覧(報告書非掲載表) 4 推計患者数,性・年齢階級 × 傷病小分類別 年次」の情報を基に作図

発作の原因が特定されない「非アトピー型」が多い

小児喘息のほとんどが、ダニやホコリ、ペットの毛といった発作の原因(アレルゲン)を特定できる「アトピー型」なのに対し、大人喘息はアレルゲンを特定できない「非アトピー型」の割合が高い傾向にあります。
非アトピー型の発作の原因として、タバコの煙やストレス、呼吸器感染症(かぜやインフルエンザ)、肥満などが挙げられます。

病状が慢性化・重症化しやすい

大人喘息は基本的に完治することは難しく、「生涯にわたって付き合う病気」と考えるのが普通です。
病状が慢性化、重症化する背景には、喘息と持病の症状を判別しにくいことや、病気に対する認識不足、仕事や子育ての忙しさで治療開始が遅れることなどがあります。
のちほど詳しく述べますが、慢性的な炎症により気道が狭くなったまま元に戻らない「リモデリング」も大きく関係しています。

60代以降で喘息死が急増する

医学の発展によって重度の発作による「喘息死」は減っているものの、いまだ年間約1500~1600人が喘息によって命を落としていることはすでにお伝えしました。
下図のとおり、死亡者数を年代別に見ると、65才以上の高齢者が死亡者数全体の約9割を占めていることがわかります。
これは、高齢になるほど体力や病気への抵抗力が低下していること、自己管理が難しくなることなどが影響していると考えられます。

厚生労働省「人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡 上巻 5-15 死因(死因年次推移分類)別にみた性・年齢(5歳階級)・年次別死亡数及び死亡率(人口10万対) 年次 2018年」の情報を基に作図

大人喘息はなぜ治りにくい?

一般的に「大人喘息は完治が難しい」と言われており、その原因のひとつに気道の「リモデリング」があります。

「リモデリング」とは、繰り返す喘息発作や病状の慢性化によって気道の線維化が進み、気道が硬くなって元に戻らない状態を指します。常に気道が狭い状態になるため、治療をしても症状の改善が乏しく、重篤化しやすいのが特徴です。

リモデリングが起こる背景には、喘息の症状を見過ごす、症状がないからといって日頃の自己管理を怠る、治療の中断などがあります。これには、忙しさによる受診の遅れ、病気に対する認識不足、高齢による認知力の低下など、年代やライフスタイルも関係していると考えられます。
しかし、症状が軽いからといって受診を見送ったり、処方された薬を中断したりすると、発作を繰り返して炎症を悪化させ、結果的に喘息の難治化や重症化につながってしまうのです。
高齢でご自身による症状の判断や薬の管理が難しい場合は、周囲のご家族や介護者のサポートも必要になります。

大人喘息の治療と生活で気をつけること

もし、冒頭でお伝えした喘息の特徴(喘鳴、息苦しさ、長引く咳や痰など)が見られるのであれば、早めに医療機関を受診することをおすすめします。診断が早くつけば治療開始も早くなり、病状の悪化を防げるからです。

大人喘息は「慢性化・重症化しやすい」「完治は難しい」と繰り返しお伝えしましたが、症状を上手くコントロールすれば、健康な人と変わらない生活を送ることが可能です。

そして、この「健康な人と変わらない生活」こそが、喘息治療の目標となります。 ここからは、喘息治療の要となる「薬物療法」と、発作を予防するための「生活上の注意点」について詳しくお伝えします。

薬物療法

喘息治療は、ステロイドを中心とした薬物療法が基本です。
薬物療法には2つのタイプがあり、「コントローラー」と呼ばれる長期管理薬と、「リリーバー」と呼ばれる発作治療薬に分けられます。わかりやすく言えば、コントローラーは「症状が出ないように毎日続ける治療薬」、リリーバーは「発作が起きたときに応急的に使う治療薬」になります。

毎日続ける治療薬には、炎症を抑える作用や気道を広げる作用がありますが、即効性はなく、長く使い続けることで効果を発揮するのが特徴です。

一方、発作時に応急的に使う治療薬には気道を広げる即効性がありますが、炎症を抑える効果はありません。また、コントローラーを使用せず発作時のリリーバーだけに頼ると、喘息の悪化につながるため注意が必要です。

コントローラー(毎日続ける治療薬)

リリーバー(発作時の応急的治療薬)

長く使うことで効果を発揮

気道の炎症を抑える作用

気道を広げる作用

速やかに気道を広げ、症状を改善

※炎症を抑える作用はない

※リリーバーだけに頼るのは危険

喘息の説明は、しばしば「火事」に例えられます。
喘息は気道に慢性的な炎症(ボヤ)が生じている状態で、コントロール(消火)が上手くできないために発作(火事)を起こすという考え方です。

リリーバーで一時的に発作(火事)をしのいでも、気道の炎症(ボヤ)はくすぶっています。そのため、喘息治療では継続したコントローラーの使用がとても重要なのです。 「発作が起きたら対処すればいい」という考え方では、喘息と上手く付き合うことはできません。

生活上の注意点

喘息の治療では、薬物療法だけでなく日頃の生活管理も非常に重要です。ポイントは、「喘息発作の要因となるものを遠ざけること」と言えます。

アレルゲン対策

大人喘息には非アトピー型が多いとはいえ、アレルゲンが関係するアトピー型の方もいます。まずは医療機関でアレルゲンを調べ、それに応じた対策を取りましょう。
ホコリやダニ、ペットの毛が原因の場合は室内の掃除や換気をこまめに行い、花粉アレルギーの方はマスクやメガネの着用とともに、花粉症の治療をしっかりと行うことが大切です。

禁煙

タバコの煙は気道の炎症を悪化させます。また、肺機能の低下にもつながるため、喫煙・受動喫煙ともに避けましょう。

感染症予防

風邪やインフルエンザなどの感染症も、喘息を悪化させる要因のひとつです。
手洗いとうがいは習慣的に行い、インフルエンザワクチンの接種やマスク着用で感染症を予防しましょう。

肥満対策

肥満も喘息を悪化させる要因のひとつです。適度な運動や筋力トレーニング、栄養バランスの取れた食事で体重をコントロールしましょう。

ほかにも気候の変化、ストレス、運動などが喘息発作の要因として挙げられます。どのような条件や環境で症状が現れやすいかを知り、それを回避することが重要です。
また、高齢になれば全身の機能の衰えや体力低下にともない、病気に対する抵抗力も落ちます。持病の悪化が喘息発作を引き起こすこともあるため、日頃から体調管理を心がけるようにしましょう。

繰り返しになりますが、喘息発作は長く付き合っていく病気です。
治療を継続し、上手に付き合うことでコントロール可能な病気であることを理解し、症状がないからといって薬を勝手に減らしたり、中断したりすることのないようにしてください。
高齢で自己管理が難しい方は、家族や専門家のサポートを受けながら治療が続けられるようにしましょう。

病気を正しく理解し、上手に付き合いましょう

大人喘息は「早期発見・早期治療」、さらに「治療の継続」が重要です。
受診の遅れによって治療のタイミングを逃したり、病気を楽観視して自己管理が不十分になったりすると、病状が急激に悪化して重篤な事態を招くこともあります。

それと同時に、病気と上手く付き合っていくためには、病気を正しく理解し必要以上に恐れないことも大切です。
早めに医療機関を受診し、専門家からの診断・アドバイスを受けながら、ご自身のからだとしっかり向き合っていきましょう。

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。