【特集】50代から気をつける病気。予防・対策

耳の聞こえが悪いのは年のせい? 突発性難聴なら早期治療で回復可能性が高まります

50代から気をつける病気。予防・対策

突発性難聴の症状や治療方法、薬物治療時の注意点について解説します。

【執筆者】中西 真理

突発性難聴は、突然片耳(まれに両耳)の聞こえが悪くなる病気です。耳の聞こえが悪くなるのは、「蝸牛(かぎゅう)」という組織の中にある有毛細胞(音を感じ取って電気信号に変え、脳に伝える役割を担う細胞)が、何らかの原因で障害を受けるためです。

有毛細胞が傷つく理由として、ウイルス感染や血流の悪化などの影響が示唆されていますが、明らかにはなっていません。その一方で、ストレスや睡眠不足などがあると発症しやすいことが知られており、糖尿病も影響していると考えられています。

引用)看護roo!  https://www.kango-roo.com/ki/image_1085/
利用規約)https://www.kango-roo.com/ki/guide/

突発性難聴は、子どもから高齢者まであらゆる年代に起こりうる病気ですが、社会で活躍している40~60代で生じることが多い(※1)といわれています。そして、突発性難聴になった後、症状が完全に回復する人は3人にひとりと言われています。

難聴の症状が出てから1週間以内に薬物治療をスタートさせると、治癒する可能性が高くなることがわかっています(※1)。

そこで今回は、突発性難聴の症状や治療方法、薬物治療時の注意点について解説します。

突発性難聴は、耳鳴りやめまい、吐き気などをともなうことがあります

突発性難聴になると、突然耳の聞こえが悪くなります。「前日まで問題なく音が聞こえていたのに、朝起きたらテレビの音が聞こえにくくなっていた」「突然電話の音が聞こえなくなった」といった症状で気づく人もいます。

聞こえの程度には個人差があり、まったく音が聞こえなくなる人もいれば、特定の音域のみが聞こえにくくなる人もいます。また、耳が詰まった感じがする程度という人もいます。症状が軽い場合は、難聴を自覚しないこともあります。 さらに、副症状として、耳鳴りやめまい、吐き気や嘔吐などをともなうこともあります。

耳鳴りは、難聴の発生と前後して生じることがあり、「キーンという耳鳴りの跡、急に耳が聞こえなくなった」というケースもあります。同様にめまい、吐き気、嘔吐なども、難聴の発生と前後して生じることがあります。ただし、メニエール病のように、めまいの発作をくり返すことはありません。そして、難聴と同時、あるいは難聴の症状が現れる前に起きるめまいは、グルグルとからだが回転するようなめまいであることが多くなっています。一方、難聴の症状が現れた後に起きるめまいは、からだがフワフワと揺れるようなタイプのめまいであることが多くなっています。

なお、突発性難聴はくり返し起きることはありません。また、聴力が改善と悪化をくり返すといった症状の波もありません。
同じような症状が再発した場合は、メニエール病や聴神経の腫瘍、低音のみが聞こえにくくなる「低音障害型感音難聴」など、他の病気の可能性があります。

 

突発性難聴の症状と特徴

突発性難聴の特徴

突然の難聴

文字通り、突然聞こえが悪くなる。片耳の場合が多いが、両耳に生じることもある。再発はしない。

高度な難聴

聞こえの程度は個人差が大きい。

軽い難聴の場合は、気がつかないことがある。

原因不明

難聴の原因となる病気(腫瘍など)や、原因となるできごと(大きな音を耳元で聞くなど)がない。

副症状の特徴(個人差が大きく、副症状の無い人も)

耳鳴り

難聴に前後して発生する。

めまい、吐き気、嘔吐

難聴に前後して発生する。めまい発作を繰り返すことはない。

突発性難聴の薬物治療は副腎皮質ホルモン(ステロイド)が中心です

突発性難聴の治療は、発症から1週間以内に開始すると効果が高いことが知られています。そして、治療開始から3カ月程度までは回復の可能性があるとされています。

治療を外来で行うか入院で行うかは、医療機関の方針により異なります。しかし、症状が重い場合は安静が必要となるので、入院治療を勧められます。また、糖尿病がある場合、入院して血糖管理を行いながら治療することもあります。

治療は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)による薬物療法が主流です。ステロイドは、点滴または内服で投与します。病状によっては、鼓膜の奥にある鼓室にステロイドを注入することもあります。ステロイドのほか、内耳の血管を広げて循環を良くする薬や神経の修復をうながすビタミンの一種などを併用することもあります。

治療は1週間から10日ほどかけて行い、2~3日間隔でステロイドの量を徐々に減らしていきます。ステロイドを使用すると寝付きが悪くなることがあるので、副作用を防ぐために夕食後や就寝前のステロイドの量を減らすことがあります。また、薬の量を徐々に減らしていくために、内服治療をしている場合は量を切り替えるタイミングで飲み間違いが起こりやすくなるため、注意が必要です。

ステロイドの飲み忘れに気づいた場合は、その日のうちであれば忘れた分を気づいたときに飲めば問題ありません。しかし、日付が変わってしまった場合は、飲み忘れた量や切替えのタイミングによって飲み方が変わってきます。気づいた時点で必ず医師や薬剤師に連絡をとり、その後の飲み方について指示を仰きましょう。

治療に使われるステロイドは、副作用が怖いというネガティブイメージのある薬です。しかし、適正な量を短期間使用する場合、大きな副作用が生じることは多くありません。不安がある場合は、医師や薬剤師に遠慮せず相談しましょう。聴力回復の機会を失わないためにも、薬物治療は積極的に行いましょう。

 

ステロイドを短期間使用する際に生じる可能性のある副作用

副作用

対処方法

血糖値の上昇

甘いものをとりすぎない。糖尿病がある場合は、血糖コントロールのため入院も考慮。

血圧の上昇

上昇傾向が見られたら主治医に相談。

胃腸障害

潰瘍歴のある人は、医師に相談。胃の粘膜を保護する薬が処方されることもある。

不眠

不眠状態が続く場合は、睡眠導入剤が処方されることもある。

食欲の増加

食事の量や体重が急激に増加しないように注意が必要。食欲が治まらない場合は、低カロリーの食品を用いる場合も。

眼圧の上昇

治療終了後、2~3カ月経っても眼圧が正常化しない場合は、治療が必要。

40歳を過ぎたら耳の聞こえに注意! 聞こえ方がいつもと違う場合はすぐに耳鼻科を受診しましょう

突発性難聴には、以下の場合に聞こえに関する後遺症が残りやすいという研究結果が報告されています。(※2)

  • 発症が40歳以上である
  • 治療開始が難聴発症から8日目以降である
  • 高音が聞こえにくい

年齢や聞こえにくい音の範囲はどうすることもできないものですが、症状に気がついてすぐに受診すれば、早い時期に治療を開始することができます。
突然耳の聞こえが悪くなったら、すぐに耳鼻科を受診しましょう。そして、適切な治療を遅滞なく受けましょう。

参考文献・参考サイト

(※1)e-ヘルスネット(厚生労働省)「情報提供>感覚器など>聴覚器>突発性難聴について」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/sensory-organ/s-001.html

(※2) 一般社団法人日本聴覚医学会「学術誌 論文公開> AUDIOLOGY JAPAN第43巻2号:89~92,2000年「突発性難聴の予後に関する検討」」
https://audiology-japan.jp/

執筆者

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬学修士。

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。