【特集】50代から気をつける病気。予防・対策

てんかんの原因と対処方法~50代から気をつける病気~

50代から気をつける病気。予防・対策

ご自身ばかりでなく、周りの人がいつてんかんを発症するか分かりません。50代以降に発症するてんかんの特徴や予防、対処法などをご紹介します。

【監修】ペンネーム:新井龍太郎

50代から気をつける病気のひとつにてんかんがあります。てんかんは、子どもの病気だと思っている方も多いので、意外だと思われるかもしれません。しかし、てんかんの発症率は50代以降上昇します。

またてんかんは、発症すると日常生活に支障をきたす精神障害と認識している方がいます。そのため、てんかんを持っているというだけで差別を受けることが起こりえます。てんかんは、命に関わることもある病気ですが、適切な治療を受ければコントロールできる症例が多く、普通に日常生活を送ることができます。

今回は、50代以降に発症するてんかんの特徴や予防、対処法などをご紹介します。てんかんに対する正しい知識を身につけ、あなたや家族がてんかんを発症したとしても、慌てることなく前向きに捉え、豊かな人生を送れることを願っています。

てんかんという病気を知りましょう

はじめに、50代以降に発症するてんかんの症状や特徴、原因、対処法などをご紹介します。

てんかんの種類

てんかんは、発作部位、原因、症状によって分類されます。
脳の広範囲が過剰に興奮して起こる「全般発作」と、脳の一部が過剰に興奮して起こる「部分発作」、そして「分類不能」の発作とに分けられます。またてんかんの原因によって、脳に明らかな病変が認められる「症候性」と脳に明らかな病変が認められない「特発性」とに分けられます。

種類

症候性(病変が認められる)

特発性(病変が認められない)

全般てんかん

ウエスト症候群
レノックス・ガスト―症候群
など

小児欠神てんかん
若年性ミオクロニーてんかん
など

部分てんかん

側頭葉てんかん
前頭葉てんかん
前頂葉てんかん
後頭葉てんかん

ローランドてんかん
原発性読書てんかん
など

部分発作は、意識障害がない「単純部分発作」、意識障害がありけいれんをともなわない「複雑部分発作」、部分発作から二次的に全般発作に至る「二次性全般化発作」に分けられます。

全般発作の症状は、「強直間代発作」「欠神発作」「ミオクロニー発作」「脱力発作」の4つに分けられます。それぞれの発作の特徴を簡単に表にまとめて紹介します。

発作の種類

症状

強直間代発作

強直発作から起こり間代発作へと移行する発作。

強直発作とは、突然短時間意識を失い、手足を伸ばし全身を強直する発作。間代発作は、手足を曲げたり伸ばしたりするけいれんを起こす発作。

欠神発作

突然数十秒間、意識がなくなる発作。

ミオクロニー発作

一部の筋肉が一瞬収縮する発作。瞬間的な発作であるため自覚しない人も多い。

脱力発作

数秒間、筋肉の緊張が突然低下する発作。倒れてしまうことが多い。

50代以降の方に発症するてんかんは、複雑部分発作、側頭葉てんかんが最も多く(※)なっています。

50代以降に発症率は上昇します

てんかんの発症率は、幼児期が最も高く、年齢が上がるにしたがい低下していきますが、50代になると発症率は上昇に転じ、高齢になるほど発症率は高くなっているという報告があります。
日本でのてんかん患者数は、大規模な調査が行われていないため明らかにはなっていません。しかし、高齢者のてんかんは気づきにくいことを考えると、てんかんを発症していても気づいていない方が相当数いると考えられます。
今後、高齢化が進むにつれ、てんかん患者数も増加していくと推測されています。

幼少期と50代以降で発症するてんかんの原因は異なります

50代以降に発症するてんかんは、新たに生じた脳の障害が原因となっている割合が大きくなっています。脳出血や脳梗塞による脳血管障害、外傷、脳腫瘍、認知症などよって発症すると考えられています。

てんかんの予防と対処法

50代以降の方がてんかんを発症しないようにする気を付けることは、脳血管障害を引き起こさないようにすることです。日常生活で心掛けることを紹介します。

  • 肉食中心の食事ではなく、野菜などの食物繊維をしっかり食べてバランスの取れた食事を心掛ける
  • 過度な飲酒や喫煙を控え、適度な運動をして健康的な生活を送る
  • 塩分を控えた食事を心掛けて、満腹になるまで食べず腹八分目までにする

続いて、てんかん発作中、発作後に周りにいる人にできる対処法を紹介します。

  • 落ち着いて行動し、発作中に本人がけがをしないように気を配る
  • けいれんが見られた場合は、衣服をゆるめ舌を噛まないように下あごを持ち上げる
  • 吐いた物で窒息しないようにするために、顔を横にする
  • 5分以上発作が続く場合や発作が短時間で何度も起こった場合は救急車を呼ぶ
  • 発作後は意識がもうろうとしたり、眠ってしまったりすることがあるので付き添う

高齢者のてんかんには注意が必要です

高齢者のてんかんに多くみられる複雑部分発作は、けいれんがなく自動症(本人の自覚がない状態での動作)が目立たないことも多いため、医師の診断が難しいケースがしばしばあります。

高齢者てんかんの発見には家族が果たす役割は大きい

高齢者に多い複雑部分発作は、けいれんがなく発作中の記憶がない場合もあるため、自覚していない方も少なくありません。発見が遅れると命に関わる重大な事故につながる危険性もあります。また、てんかんと症状が似ているアルツハイマー病や認知症を患っている場合には、てんかんの症状が出ているにもかかわらず、家族でさえてんかんが発症していることに気づかないことがあります。

高齢者のてんかんの発見は、家族や周りにいる人の注意深い観察が大きな役割を果たします

では、注意すべき症状とはどんなものでしょう。周りの方に以下のような疑わしい症状が見られたときは、出来るだけ早く医師に診察してもらいましょう。

  • 口をモグモグ動かす
  • 数分間動かずぼんやりしている
  • 意識がとぎれる
  • 就寝中にけいれんがある

抗てんかん薬を服用するときの注意点

高齢者のてんかんは、抗てんかん薬の治療効果が良好で少量でも効果のある方がいます。しかし副作用も出やすいので注意が必要です。抗てんかん薬の量は、効果と副作用の様子を見ながら徐々に増やしていくことが重要です。
高齢者が服用する主な抗てんかん薬と副作用を表にまとめて紹介します。

薬剤名

急性副作用

用量による副作用

長期服用による副作用

カルバマゼピン

皮疹、肝障害、血小板減少、汎血球減少など 

複視、眼振、めまい、運動失調、眠気、嘔気 など

骨粗鬆症

ラモトリギン

皮疹、肝障害、血小板減少、汎血球減少など

眠気、めまい、複視、興奮

 

レベチラセタム

 

眠気、行動異常、不機嫌

 

ガバペンチン

 

めまい、運動失調、眠気、ミオクローヌス

体重増加

※空欄は、特に副作用が見られない場合と副作用が出ることがごくまれな場合です。
※「ミオクローヌス」とは、自分の意思とは関係なく起こす不随意運動です。

また、他の薬との相性や食べ物との食べ合わせがあるので、服用している薬を医師に伝え、指示にしたがうことが大切です。

てんかんの正しい知識を身につけて豊かな人生を送りましょう

てんかんの発症を予防するためには、バランスの取れた食事を取り、規則正しい生活を送ることが大切です。もしてんかんが発症してしまった場合でも、適切な治療を受ければ今までと変わらない日常生活を送れることが多いです。

50代以降に発症するてんかんは、発見が難しいために適切な治療を受けることが遅れて、重大な事故に結びついてしまう可能性があります。高齢者てんかんの症状を知り、夫婦や家族で注意深く観察し、疑わしい症状がみられたら出来るだけ早く医師の診察を受けましょう。
ご自身ばかりでなく、周りの人がいつてんかんを発症するか分かりません。てんかんに対する正しい知識を身につけておけば、慌てずに対応することができます。健康に気を付け豊かな人生を送りましょう。

参考文献

一般社団法人日本神経学会「てんかん診療ガイドライン2018」
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html

監修

ペンネーム:新井龍太郎

2001年 東北大学医学部入学 同大学卒業後、大学病院勤務。
現在は、高齢の方に予防の知識を深めて健康寿命を延ばしていただくことを目的に、各種媒体で執筆活動を続けている。
趣味はバイクでのツーリングと楽器演奏。