くらしの豆知識

危険なヒートショックから健康を守る「温度のバリアフリー」

暮らしの豆知識

最近、健康と住まいに関して注目されているのが「ヒートショック」。 急激な温度差によって体に悪影響を及ぼす現象で、高齢者を中心に誰にでも起こる危険性があります。

最近、健康と住まいに関して注目されているのが「ヒートショック」。
急激な温度差によって体に悪影響を及ぼす現象で、高齢者を中心に誰にでも起こる危険性があります。

特に気をつけたいのが、冬場の浴室やトイレなど、家の中の寒い場所。
暖かい部屋から寒い部屋へ移動することで血圧が急激に下がり、時には心筋梗塞や脳卒中などの重大な病につながることもあります。

危険なヒートショックから健康を守るためには、温度のバリアフリー化で住宅の温度を快適に整えることが大切です。

浴室が寒いと危険な理由「ヒートショック」とは?

ヒートショックとは、急激な温度変化によって、血圧が大きく変動する、脈拍が乱れる等、からだに起きる悪影響のことです。

人間は寒い場所に行くと、からだの熱を逃がさないように血管が収縮し、血圧が上昇します。反対に暖かい場所へ行くと、血管が拡張し血圧が低下します。

温度によって血圧が変化することは、若くて健康な人にでも見られる正常な反応です。
しかし、あまりにも急激な血圧変動は、心臓や脳の血管には大きな負担となります。失神を起こして転倒したり、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしたりする危険性もあります。
特に高齢者や高血圧などの疾患を持っている場合は、リスクが高いため注意が必要です。

ヒートショックの危険が高い、冬の浴室

消費者庁「News Release 平成29年1月25日(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/170125kouhyou_1.pdf)」図3を基に作製

ヒートショックは、家の中で日常的に起こる可能性があります。特に危険性が高いのは、温度変化の激しい冬の浴室です。

暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動すると、血圧は急激に上昇します。脱衣所で服を脱ぎ、浴室の冷たいタイルで足元から熱が逃げると、体温は更に下がることに。この状態で熱いシャワーを浴びたり、急に熱い湯船につかったりすると、急激な血圧低下を起こし、大変危険です。

ヒートショックは冬場・高齢者に多い

消費者庁「News Release 平成28年1月20日(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/160120kouhyou_2.pdf)」図7を基に作製

消費者庁の資料(※1)によると、入浴中の事故死の数は年間約1万9,000人とされています。入浴中の急激な血圧の変動は、意識障害を起こして溺れたり転倒したりする危険もあります。

また入浴中の事故死は冬場に多く、全体の約5割が12〜2月の寒い時期に発生しています。また、「家庭の浴槽における溺死者数」は65歳以上の高齢者が約9割を占め、75歳以上の高齢者で特に多くなっています。

若い頃には耐えられた温度変化も、からだの機能が弱くなってくると大きな負担に。特にシニア世代はヒートショックの危険性をしっかりと認識し、室内の温熱環境に今まで以上に気を配る必要があります。

「温度のバリアフリー」で健康を守る

ヒートショックを防ぐのに最も有効なのは、室内の温度変化を少なくする「温度のバリアフリー」です。寒さ厳しい北海道や東北地方は、住宅に万全な寒さ対策がなされているため、他の地方と比べて入浴中の事故は少ない傾向にあると言われています。このように、温度変化の少ない住宅は、身を守るのにとても有効です。

温度のバリアフリーで重要なのは、住宅の断熱性を高めて屋外と室内の空気の熱が伝わる速度を遅くすることです。高断熱の家では、夏の暑さや冬の寒さの影響を受けにくく、家の温度を一定に保つことができます。
既存の住宅でも、断熱材を入れる、窓やドアからの熱が出入りを防ぐなどのリフォームが可能です。

断熱材を入れる

断熱工法には、大きく分けて「充填断熱工法」と「外張断熱工法」の2種類があります。
充填断熱工法は、柱などのすき間に断熱材を充填するポピュラーな方法です。外張断熱工法は、柱などの構造体の外側を断熱材ですっぽりくるむ方法です。
どちらの工法においても、壁の中に湿気をためないように、通気層や気密シートなどの対策が必要です。断熱材には、繊維系のグラスウールや、発泡プラスチック系発泡ポリスチレンフォームなどの素材が使われます。

あたたかいユニットバス導入

家全体の断熱施工が難しければ、一部分だけに断熱対策を施しても良いでしょう。
特に冬の寒さを感じやすい浴室では、断熱性能の高いユニットバスに交換したり、ユニットバス周囲に断熱対策を施したりすることで寒さを和らげることができます。また、浴室の換気扇を暖房機能付きのものにすると、入浴前に浴室を暖めておくことができます。

窓やドアなどを気密・断熱仕様に

熱の出入りが大きい、窓やドアなどの開口部の断熱対策も大切です。
サッシは熱伝導率の低い素材や、すき間風を防ぐ気密性の高いものに交換すると、夏の暑さや冬の寒さを伝えにくくなります。また、1枚ガラスではなく、空気の層を含んだ複層ガラスなどの断熱性の高いガラスに交換すると、断熱性能が向上します。

入浴時には3つのヒートショック防止対策を

今すぐ住宅のリフォームを行うのが難しいという場合でも、日常的な対策でヒートショックのリスクを軽減することができます。特にリスクの高い入浴では、温度変化がゆるやかになるよう環境を整えることが大切です。一手間の配慮で、安全で快適な入浴時間を過ごすことができます。

 1.脱衣所や浴室を暖めておく

ヒートショックの原因となる温度変化を少なくするには、入浴前に脱衣所や浴室を暖めておくことが最も有効です。
脱衣所では、火事の危険の少ない電気ヒーターなどの小型の暖房機を使うのが手軽でよいでしょう。浴室は、シャワーを高い位置に設置し、そこから浴槽にお湯を注いで溜めたり、浴槽のフタを開けておいたりすることで暖められます。

2.食後すぐの入浴や、入浴前の飲酒や服薬は避ける

食後すぐは、血圧が下がりやすいと言われています。食後から入浴までの時間は、1時間以上空けるとよいでしょう。また、飲酒や服薬による血圧の変化も気になります。入浴は体調が落ち着くまで控えたほうがよいでしょう。なお、夕方前は外気温がまだ高いことから、からだへの負担が少なく入浴にも適した時間帯です。明るいうちからの早めの入浴もおすすめです。

3.お湯の温度は41℃以下

消費者庁のウェブサイト(※2)によると、シャワーや湯船のお湯の温度は、41℃以下が推奨されています。 寒い時期には急いで熱いお湯に入りたくなるかもしれませんが、熱すぎるお湯に急に入るのは危険です。
負担のかからないぬるめの湯温にし、かけ湯で徐々にからだを慣らしてからつかるようにしましょう。

まとめ

日本人は、暑さや寒さを我慢してしまう傾向にあります。
昔から冬場の浴室やトイレ、廊下などは寒くて当然だと思いがちですが、温度リフォームを行って家の中の温度を一定にすると、心筋梗塞や脳卒中などの重大なリスクを減らすことができるのです。

寒い室内では、日々の活動も低下してしまいます。年齢を重ねても健康的に暮らすためには、暖かい室内で活動的に暮らすことが大切です。

冬場、浴室やトイレへ入ったときに寒さを感じたら、温度のバリアフリー対策を検討するタイミングかもしれません。