大成功!実家の片付け 第1回

実家が倉庫状態に⁉ 親が片付けられない理由とは

大成功!実家の片付け

どうして親は家を片付けられなくなるのでしょう。その理由や片付けのきっかけづくりを「実家片づけアドバイザー」の渡部亜矢さんにうかがいました。

【監修】渡部亜矢(わたなべあや)

最近、いつ実家に帰りましたか? 久しぶりに親を訪ねたら、急に親が年を取ったなと感じた、家が散らかっていたという経験のある方も多いのではないでしょうか。 子どもは、自分の親はいつまでも元気だと思いたいものです。しかし、親は確実に年を取ります。そして年齢とともに片付けられなくなる人は珍しくありません。 また、いざ実家を片付けてみたものの元に戻されていたり、これは必要だからという親の強い意志があったり...と、うまくいかないこともあります。

では、どうして片付けられなくなるのでしょう。その理由や片付けのきっかけづくりを「実家片づけアドバイザー」の渡部亜矢さんにうかがいました。

実家を片付けるのは、親が健やかに過ごすため

さまざまな理由から実家が片付けられなくて相談に来られる方がたくさんいます。なかには、実家の片付けは親が亡くなってからでいいと考えている方もいますが、遺品整理は精神的にも金銭的にも負担が大きくなります。
親が亡くなってしまうと家にあるものすべてが思い出になり、なかなか処分することができません。また片付けには意外とお金がかかります。親が亡くなった後に一軒家を整理したところ、100万円ほどかかったということも珍しくありません。
親が元気なうちに、精神的にも金銭的にも負担が少ない生前整理をおすすめします。

そして重要なのは、親が元気なうちに家を片付けることで、親が安心して暮らせる家をつくることです。
厚生労働省の調査によると(※1)、要介護4、5(※2)の方のうち、介護が必要になった主な原因の第3位が「骨折・転倒」です。そして転倒する場所として多いのが家の中。床に物が散らかっていると、転倒のリスクが高まります。また、地震や火事など緊急時の避難の時ときにも危険が増してしまうのです。
親にできるだけ長く健やかに暮らしてもらうためにも、実家の片付けは大切なことなのです。

“片付けられない“には理由があります

片付けを円滑に進めるには、どうして片付けられなくなってしまったのかを、片付け始める前に子ども世代が理解することが大切です。主な要因は3つあります。

要因1.体力・気力の衰え

年齢とともに足腰が弱るなど体力・気力が衰えることで、物理的に片付けることが難しくなります。たとえきれい好きなお母さんだったとしても、窓拭きや床拭きなど力のいることができなくなりますよね。買い物袋や届いた宅配物を床にそのまま置いてしまう、というのは片付けられなくなるサインです。それがたまっていっていくと、部屋はどんどん物であふれてしまいます。

要因2.親世代と子ども世代の価値観の違い

現在70代80代の方は戦中・戦後の物のない時代を経験していて、物を捨てることに「もったいない」と罪悪感を持つ方が多いです。その後の高度成長期では、物が増えることが豊かさの象徴でもありました。そのため「不要だから捨てよう」と言っても、親世代の価値観からするとそれは受け入れがたいことです。そのため、買い物でもらった紙袋が大量に保管されていたり、使わなくなった座布団や食器類が押し入れに入っていたりします。
一方、子ども世代である40~60代はバブル景気や崩壊を経験し、豊かさは心の持ちようだという価値観を身に着けています。

要因3.少子高齢化で家が余ってしまう

近年は少子高齢化や核家族化が進み、家族で住んでいた家が継がれなくなっています。また、子どもたちも実家に手が回らなくなっているという状況があります。
昔は年に1回は親戚一同が集まったという家でも訪ねる人が減り、使わない部屋が増えて物置部屋になる、親の死後に空き家になるなどして、片付かないままになってしまうのです。

片付けには親と子のコミュニケーションが重要

しかし、「片付けよう」と言って、すぐ片付けられることは稀(まれ)です。
60~74歳の人は、実年齢よりも“気持ち年齢”(自身の気持ちや精神状態の年齢)が平均14歳若い、また“体力年齢”(自身の体力や健康状態)は実年齢より7歳若いと感じているという調査結果(※4)があります。親は「自分はまだ若いから大丈夫」と思いがちなのです。

また、厚生労働省の調査からは、70代80代の方の親の時代よりも、現在は平均寿命が延びていることが読み取れます。

厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」

親世代は“100歳まで生きる”というモデルケースを見ていないので、それがどういうことかイメージができていないところもあるでしょう。
だから「転ぶからよう片付けよう」とストレートに言っても伝わりにくく、また親子だからこそ、言葉のチョイスによってケンカに発展してしまうこともあるのです。

そこで片付けのきっかけづくりとして私がお勧めしているのは、子どもたちが実家にある子ども部屋(自分の部屋)を片付けること。
不要な物を実家に送り、実家の自分の部屋を倉庫代わりに利用している子ども世代も多くいます。まずは自分の部屋を片付けているところを親に見せて、一緒にほかの部屋も片付けようと促しましょう。

人が実家を訪れる機会を作るという方法もあります。お客さんが来るとなると、見えるところだけでも片付けようという心理が働きます。私が実際にアドバイザーとして訪ねた家も、事前にお子さんからうかがっていた状況よりも片付いているということが多々あります。親戚を呼ぶ、季節の変わり目にエアコンの掃除を業者に頼むなどしてみましょう。

また、実家に帰ったときには、物が散らかっていないか、危険な場所はないかなど、家のチェックをお勧めします。その際に、床が傷んでいる、水まわりが使いづらくなっているなど、親が安全に暮らすために必要な修繕箇カ所も見つけることができます。リフォームや模様替えをきっかけに片付け始めることもできます。

家のチェックで見るべき主なポイントは以下になります。

<実家のチェックポイント>

床置きが増えていませんか?

余っている薬は増えていませんか?

日用品の買いだめが増えていませんか?

冷蔵庫の中に賞味期限切れのものや同じ商品がたまっていませんか?

これらを何気なく確認しながら、親との会話の糸口にしてください。例えば、トイレットペーパーが3袋もあった! となると「もう、こんなに買ってどうするの!」などと言いがちですが、親を否定するような言葉はグッと我慢です。「ネットだと安いから、次は私が買うから必要になったら言ってね」と親の気持ちを気遣いましょう。また薬のチェックは親の健康状態を知るためにも重要です。
片付けるための準備として、まずは親とコミュニケーションをはかり図り、親のことを知るということが大切なのです。

出典

※1 厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/index.html

※2 介護保険の要介護認定では、心身の状態により要介護状態区分が7段階に分けられます。要支援1~2、要介護1~5があり、要支援より要介護が、数字は大きいほうが重度となります。

※3 博報堂生活総合研究所「シルバー30年変化」(2016年発表)

※4 厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/dl/life17-09.pdf

監修

渡部亜矢(わたなべあや)

(一社)実家片づけ整理協会 代表理事  実家片づけアドバイザー® 片づけ講師

少子高齢化社会に特化した「実家片づけアドバイザー®」認定講座、人生100年ライフの片づけ整理術、親子で取り組む生前整理、出張片付けサービスなどを展開し、雑誌やテレビ、ラジオでも活躍。遺品整理士の資格も持つ。2019年には、片付けに悩む人々をつなげるサロン「自宅と実家のオンラインサロン」開設。著書に「カツオが磯野家を片づける日~後悔しない「親の家」片づけ入門~」(SBクリエイティブ)、「「5つの鉄則」でラクラク!実家の片づけパーフェクトBOOK」(光文社)など多数。

(一社)実家片づけ整理協会 
 https://jikka-katazuke.jp/