ビジネスシーンでの人間関係を構築するうえで、初対面の第一印象は重要な要素になります。たとえ、最初はつたなくとも「相手に対しての興味を持つこと」はしっかり伝わっています。相手の課題や潜在的なニーズを察知しながら、自分が提供できる価値を見出していくようにしましょう。
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ビジネスシーンでは、「話し方」が大切なキーポイントになります。特に初対面となれば、話し方によって相手への印象が大きく変わってしまうことを経験している人は多いのではないでしょうか。
実際、ビジネスシーンでは「話し方」をワンポイント工夫するだけで、驚くほど違う効果が出ることもあります。
一方、ビジネスパーソンのなかには「コミュニケーションが苦手」という人は、少なからずいることでしょう。どのような会話をすれば、社内や顧客とのコミュニケーションがスムーズになるのでしょうか。この記事では、そのヒントを探っていきます。
初対面の第一印象、8割以上が「話し方」をチェック
ビジネスシーンでの人間関係を構築するうえで、初対面の第一印象は重要な要素になります。
スーツ販売の大手ストア「THE SUIT COMPANY」が実施した『社会人の第一印象に関するアンケート』では初対面の相手の「話し方」をチェックしている人が81.6%に上るというデータがあります。
「ビジネスマンの第一印象は...「話し方」、「礼儀」、そして服装(スーツ)では「シワがなく清潔感がある」で決まる!!|THE SUIT COMPANYのプレスリリース」の情報を基に作図
言葉の使い方や声のトーン、表情の有無やジェスチャーの有無、相槌やアイコンタクトといった複数の要素がありますが、それらを総合して「話し方」をチェックしている人が多いということでしょう。
しかし、文化庁が行った調査では「初対面の人とのコミュニケーションが苦手である」と回答する人が幅広い年代で半数以上を占めていることが分かります。
文化庁「『国語に関する世論調査』におけるいわゆる『コミュニケーション』に関する問い(抜粋)|P1,初対面の人とのコミュニケーションについての意識」より転載
また、「どのような場面でコミュニケーションが難しいと感じたか?」という質問には、4割近い人が「相手との人間関係を作り上げながら伝え合うこと」と回答しており、初対面での相手の「話し方」が第一印象を形成するのに大切と考える人が多いなか、半数以上の人が初対面の人とのコミュニケーションに苦手意識を持っています。
文化庁「『国語に関する世論調査』におけるいわゆる『コミュニケーション』に関する問い(抜粋)|P3,初対面の人とのコミュニケーションについての意識人とのコミュニケーションで難しいと感じること」を基に作図
会話が苦手な人の共通点
NHKが東証1部上場企業の人事担当者に向けて行ったアンケートでは、71%が「社内コミュニケーションに課題がある」と回答しています。具体的な課題として挙げられているのは、「報告・連絡・相談が不足している」「相手の本音やニーズを聞き出せない」「筋道立てて考えを話すことができない」などの項目です(※)。
会話が苦手な人の共通点として、「相手への配慮や気遣い」「その場の状況に合わせて自分の考えを論理的に発言することが苦手」というものがあります。
そんな会話が苦手な人に対して、ビジネス界のベストセラー「人を動かす」の著者D・カーネギーが興味深い指摘をしています。
「話し上手になりたければ、聞き上手になることだ。興味を持たせるためには、まず、こちらが相手への興味を持たなければいけない。
相手が喜んで答えるような質問をすることだ。相手自身のことや、得意にしていることを話させるように仕向けるのだ」
引用:D・カーネギー「人を動かす」文庫版,創元社,2016,p123, 442210098X
会話が苦手な人は「相手」に焦点を当てて会話をしてみてはいかがでしょうか。カーネギーは、「相手は自分が思っているよりも百倍以上、自分のことに興味を持って」いるとも話しています。相手が喜ぶような質問をすることで会話が膨らみ、話し上手に近づくひとつの方法になりそうです。
マスク生活では話し方が変わる?
さて、依然としてマスクが手放せない状況において、マスクがコミュニケーションに与える影響は無視できないものになっています。
文化庁「令和2年度『国語に対する世論調査』の結果の概要|P6」より転載
上記は文化庁が行った「マスクを着けると話し方や態度などが変わると思うか」という質問に対する回答です。20代を筆頭に多くの年代で、「変わることがあると思う」と答えています。
また、コロナ下でのオンライン会議では、多くの人が「声の大きさに気を付けるようにする」「はっきりとした発音で話すようにしている」などの回答が挙がっており、コロナ下において、コミュニケーションの在り方が変化していることが分かります。
文化庁「令和2年度『国語に対する世論調査』の結果の概要|P7」より転載
会話をスムーズに進めるカギは「相手」
ところで、ビジネス上の会話には、雑談だけでなく、会議などでの話し合いや議論もあります。
ここで参考にしたいのは、文部科学省が示す「小中学生の言語力育成に関しての意見」です。わたしたち大人にも十分通用する具体例がありますのでご紹介します。
日本の文化がポジティブに見直されていることを考慮し,ヨーロッパ的な「対話」の捉えとして,相手との対話の中で相手の論拠・論理の弱さを指摘し,相手の無知の知を知らせるという考え方も重要である。
ここからは、「相手」を尊重するこころのもと、会話を発展させることの重要性が分かります。そして相手の話に興味を持ち、自分自身の頭で論理を組み立てることも重要です。
まとめ
ここまで見てきたように、ビジネスシーンでは、「相手に対しての興味を持つこと」が大切です。たとえ、最初はつたなくともあなたが真摯に話していることはしっかり伝わっています。そうした姿勢もまた、相手と良い関係を築く潤滑油になってくれることでしょう。そのうえで、相手の課題や潜在的なニーズを察知しながら、自分が提供できる価値を見出していけると、なお良い会話になることでしょう。