「不登校」というとネガティブな印象になりがちですが、何かの理由があっての結果です。親だけでは難しい場合には、学校はもちろん、教育支援センターや教育相談所を頼るのも手段のひとつです。
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中学生の不登校は少なくありません。完全なる不登校ではないものの、学校になじめず、悩みを抱えている子どももいることでしょう。
もしも、わが子が「学校に行きたくない」と言いだしたら、どう対応すればよいのでしょう。
今回は、不登校傾向にある子どもの実態をご紹介。そのうえで親としての心構えを考えてみたいと思います。
中学生の不登校の現状
不登校とは、どのような状態を指すのでしょうか。文部科学省による不登校の生徒の定義は以下のとおりです。
連続又は断続し年間30日以上欠席し、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)
引用:文部科学省「不登校の現状に関する認識」
なお、文部科学省によると「不登校」状態にある中学生は増加傾向にあるようです。令和元年現在、全国に12万7,922人いることが明らかになっており、全中学生の「25人に1人」が不登校であるとされています。
引用)文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要|P15 小・中学校における不登校の状況について」
さらに、日本財団は、不登校傾向にある中学生(年間欠席数は30日未満)は、全中学生の10.2%にあたる約33万人(※1)としています。10人に1人ということは、1クラスに数人いてもおかしくないような、非常に高い割合ともいえるでしょう。
なお、「不登校傾向」とは下記のような状態を指しています。
- 学校の校門や保健室、校長室等には行くが、教室には行かない
- 基本的には教室で過ごすが、遅刻や早退が多く、授業に参加する時間が少ない
- 基本的には教室で過ごすが、皆とは違うことをするなど、授業にあまり参加しない
- 基本的には教室で過ごし、授業に参加しているが、「学校に通いたくない・学校がつらい・嫌だ」と感じている
「不登校傾向にある中学生」の数は、「不登校の中学生」の3倍にも上ることが明らかになり、不登校でないから安心とは言えないようです。「不登校傾向」にある子どもも、「不登校」の子どもと同じように苦しんでいると考えられるからです。
中学生が不登校になる理由
子どもが不登校になる理由はいくつかあります。先ほどの日本財団の調査結果をもとに見ていきましょう。
理由の上位は、「朝、起きられない」「疲れる」ですが、「授業がよくわからない・ついていけない」「小学校の時と比べて、良い成績が取れない」など、学習面での理由から不登校になるケースも見られています。
日本財団「不登校傾向にある子どもの実態調査報告書 2018/12/12|P10. 【現中学生に聞いた】中学校に行きたくない理由」を基に作表
子どもたちは自分に適した教育環境を求めている
では、子どもたちが行きたいのはどのような学校なのでしょうか。日本財団の調査で圧倒的に多かった回答は、「自分の好きなこと、追求したいこと、知りたいことを突き詰めることができる」学校です。単に「自分のしたいこと」を求めているのではなく、「自分の学習のペースにあった手助けがある」「常に新しいことを学べる」という答えも多く、学習に対する意欲がうかがえ、これらに応えられる教育環境の場が求められていると言えます。
日本財団「不登校傾向にある子どもの実態調査 2018/12/12|P12.【不登校または不登校傾向にある現中学生と卒業生(中学卒業後~22歳)に聞いた】学びたいと思える場所」の情報を基に作図
子どもが不登校になったら
「不登校」というとネガティブな印象になりがちですが、何かの理由があっての結果です。文部科学省は、「まず親は子どもの現状を認め、冷静に話を聞くことが重要」と説いています(※2)。
不登校を解決するには親のサポートは不可欠ですが、親がすべての責任を負うわけではありません。親だけでは難しい場合には、学校はもちろん、教育支援センターや教育相談所を頼るのも手段のひとつです。
また、不登校の解決は「子どもが再び登校する」ことだけではありません。
文部科学省では復学という結果だけを求める支援ではなく、子どもが自ら進路を主体的にとらえて、社会的な自立を目指すことを基本的な考えとしています(※2)。
子どもの才能や能力に応じて可能性を伸ばせるよう、本人の希望を尊重したうえで、ICTを活用した学習やフリースクール、夜間中学といった教育環境も選択肢に入れることも考えられます。
なお、中学校で不登校だった子どもの85%は高校に進学しているというデータがあります。高校へ進学する頃には85%の子どもが不登校を乗り越えているということです。さらに、大学や短大などさらに上の学びを目指し、進学している子どもも22.8%いますから、親としてはひとつの安心材料になるのではないでしょうか。(※3)。
不登校だった子どもたちは、「休んだことで今の自分がある」「成長した・視野が広がった」「人に優しくなった」など、不登校の経験をバネに前向きに進んでいる様子もうかがえます(※3)。
人生の早い段階で自分と向き合ってきたからこそ、豊かな生き方ができるようになった子どもがたくさんいることも頭に置きつつ、まずはわが子に寄り添うことから解決の糸口を探してみることを始めてはいかがでしょうか。