ビジネスパーソンを襲う「完璧主義」 やめたい時の思考の切り替え方

夫婦・家族

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完璧主義の人の悩みは他人の目にはつきにくいため、周囲が思う以上に本人は悩みを抱えているものです。ひとりで抱え込まずに第三者からフィードバックを受けて「本当にこれで大丈夫なんだろうか」という不安を解消することが大切です。

この記事の監修

黒田貴晴

職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決を脳科学と心理学を用いてサポートしています。また、人工知能を活用した心の研究にも取り組んでいます。

「やらなきゃと思っても、なかなか取りかかれない」
「いつも書類などの提出が期限ギリギリになってしまう」

要職につく40~50代のビジネスパーソンはもちろん、専業主婦(夫)の方であっても、同じような悩みを抱える方は多いでしょう。
完璧に仕上げなくては、と思えば思うほど行動するのが遅くなってしまったり、ちょっとしたことがストレスになってしまったりします。

頑張ってしまう人ほど苦しんでしまうこのような問題に、どのように対処していけばいいのでしょうか。

完璧主義で困ってしまうこと

完璧主義の人は真面目に仕事をこなすため職場での評価も高く、上司からの信頼も厚いものです。同僚からも、仕事のできる人として一目置かれることも多いでしょう。
仕事でも成果を出せるため、周囲の人から見れば「特に困ったことはないのでは?」と思われがちです。しかし、完璧主義の人の悩みは他人の目にはつきにくいため、周囲が思う以上に本人は悩みを抱えているものです。

とりわけ問題になるのが、やるべきことに手を付けるのが遅くなる、期限ギリギリになってしまう、ということがたびたび起こる「先延ばし」です。やらなければと思いながらも、なかなかやり始めることができずに焦りが募ってしまい、さらに期限が迫ってくると「これでいいんだろうか?」と不安になってしまう。そのようなことを繰り返しているうちに、ストレスをため込んでしまいます。傍から見ている人にしてみれば、毎回期限内に質の高い仕事をしているので、まさかそんな苦しみを抱えているとは気づきにくいものです。

ところで、仕事をスピーディかつ完璧に仕上げる人もいますが、そもそも完璧主義と先延ばしには関係があるのでしょうか?
大学生を対象とした調査(※1)によると、完璧主義と先延ばしには相関関係があるということが明らかになっています。また、先延ばししてしまう要因として、完璧を目指したいという気持ちよりも、失敗に対する恐怖心や、本当にこれで大丈夫だろうかという漠然とした不安が強く関係しているということが分かっています。
この調査では大学生の課題の提出に焦点が当てられていますが、ビジネスにおいても当てはまると考えていいでしょう。

先延ばしを解決するためにも何とかしなければならないのが、失敗に対して過剰に心配してしまう「失敗恐怖」と、自分の行動に対して本当にこれでいいのだろうかと疑ってしまう「行動疑念」です。

この二つによって行動にブレーキがかかってしまい、思うように動けないことでストレスになってしまいます。逆に、仕事をスピーディに完璧に仕上げる人というのは、自分の行動に対して確信を持っており、そのため失敗に対する恐怖心も少ないと考えられます。
失敗への恐怖心と漠然とした不安をいかに取り除くのかがカギであると言えるでしょう。

完璧主義の苦しみを生んでしまう認知のゆがみ

失敗への過剰な恐怖心や漠然とした不安感は、どのようにして生じてくるものなのでしょうか。
このような感情を生み出してしまう原因として、心理カウンセリングでは『10種類の認知のゆがみ』というものが知られています。認知とは、自分の身の回りの出来事を理解し、それに対して判断や解釈を行うことです。

以下に示すのが、心理カウンセリングで広く知られている認知のゆがみです。

▼10種類の認知のゆがみ

全か無か

二極思考とも呼ばれるもので、ゼロか100かしかないような極端な物事の捉え方をしてしまう。

過剰な一般化

たった数回しか起こっていないようなことでも、いつもこうなるというように一般化して捉えてしまう。

フィルタリング

物事の悪い部分にばかり目がいってしまい、他の良い面を見ようとしなくなってしまう。

マイナス思考

良いことがあってもそれを良いと思えず、物事を常に悪い方向にばかり考えてしまう。

結論への飛躍

根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう。

感情に基づいた判断

客観的な根拠はないにもかかわらず、悪い予感がすればそれが的中すると考えてしまう。

過大評価、過小評価

たいしたことのない問題を大きな問題であるかのように、うまくいった出来事をたいしたことがないかのように捉えてしまう。

レッテル貼り

ちょっとした失敗でもすぐに「自分はダメ人間だ」と、自分にレッテルを貼ってしまう。

"べき"思考

物事や出来事に対して「~であるべき」「~するべき」のように理想像が必ず存在しているかのように考えてしまう。

自己関連付け

何もかもうまくいかないのは全部自分のせいだと自分に関連づけてしまう。

※筆者作表

これらの中でもとりわけ影響が大きいのが、「全か無か」の二極思考や「マイナス思考」「"べき"思考」です。
完璧にやりきるということ自体には、問題はありません。しかし、このような認知のゆがみがあることで、「完璧にできなければ価値はない」「失敗してしまうんじゃないか」などと考えるようになってしまうことでストレスを生み出してしまいます。

完璧主義が関係するストレス

完璧主義の性格はストレスをためやすく、一歩間違うとうつ病にもなりかねません。
最近では、メンタルヘルスの向上に力を入れる企業も増えてきました。実際、職場でのストレスの発生状況はどうなっているのでしょうか。

厚生労働省の平成 29 年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況によると、労働者のおよそ6割が「強いストレスとなっている事柄がある」と回答しています。(※2)
そのうち、上位3つには下記が挙げられています。

  1. 仕事の質・量......62.6%
  2. 仕事の失敗・責任の発生等......34.8%
  3. 対人関係(パワハラ・セクハラを含む)......30.6%

これらの事柄を見ると、共通して完璧主義との関係性が浮かび上がってきます。もちろん完璧主義だけですべてを説明できるわけではありませんが、ストレスの発生源のひとつになっていることは確かでしょう。

完璧主義の方はどうしても細かいところにこだわってしまい、たくさんある仕事を短時間で処理するのが難しいという面があります。また、仕事の失敗や責任についてストレスに感じている人も3人にひとりの割合でいることから、失敗恐怖によってストレスが生じている様子が分かります。

対人関係においても、だらしなく見えてしまう上司、ミスやトラブルの多い同僚や部下など、完璧さを求める人にとってはイライラさせられることも多いかもしれません。完璧さを他人にまで求めてしまうとストレスになってしまいます。

生きづらさをなんとかするには

完璧主義の生きづらさは、どうにかできるのでしょうか。これまで紹介してきた内容を踏まえると、ポイントは3つあります。

  1. 「80点主義」で少しのミスはOKにする
  2. 「自分は自分、他人は他人」と割り切り、他人に自分の考えを押し付けない
  3. 第三者からフィードバックを受け、「これでいいのかな?」という不安を解消する

無理に100点を目指そうとすると、ひとつのミスも許されなくなってしまうため、失敗を恐れてどうしても行動にブレーキがかかりやすくなってしまいます。失敗への恐怖を少なくするためにも、満点ではなく合格点さえ取れれば問題ないんだということを知っておきましょう。

また、自分の価値観やルールを他人にまで押し付けようとしてしまうと、トラブルになりやすくなります。人間は、変化のみならず、他人に動かされることも嫌う生き物です。一見すると、だらしがなかったりミスが多かったりする他人に悩まされているように感じるかもしれませんが、ストレスを生み出している原因はむしろ「完璧であるべきだ」という自分の考え方にあります。
同じようにだらしがない人に囲まれていても、「仕方がないな~」と笑って許せる人がいるのは、完璧でなければならないという考え方をそもそも持っていないからです。他人ではなく自分の考えがストレスを作り出しているというのが、ご理解いただけるのではないでしょうか。

また、今まで完璧を目指して努力してきた人にとっては、失敗した経験というのもあまりないため、OKとNGの境界線がどこにあるのか分からないということも多くあります。そうなってくると、すでに十分であるにも関わらず、まだ何か足りないのではないかと感じてしまい、必要以上にがんばってしんどくなってしまうということになりかねません。

ひとりで抱え込まずに第三者からフィードバックを受けて「本当にこれで大丈夫なんだろうか」という不安を解消することが大切です。