心身ともに限界に追い込まれる「ダブルケア」 知っておきたい現状と対策

夫婦・家族

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ダブルケアは体力的・精神的な負担が大きいだけでなく、生活にさまざまな影響を及ぼしており、近年社会問題にもなりつつあります。介護には、いつ始まりいつまで続くのかがわからない、という特徴があります。介護者にも自分の人生があることを第一に考え、誰かひとりに負担が集中しない状況をつくりだす備えを、いまのうちからしておきたいものです。

この記事の監修

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。
趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。
Twitter:@M6Sayaka

育児の真っ最中でありながら、親や親族の介護に携わっている――。こうした立場に置かれた人を「ダブルケア」「ダブルケアラー」と呼びます。

ダブルケアは体力的・精神的な負担が大きいだけでなく、生活にさまざまな影響を及ぼしており、近年社会問題にもなりつつあります。

この記事では、ダブルケアの現状と対策について紹介します。

ダブルケアの現状

ソニー生命の調査によると、過去から現在にかけて「ダブルケアを経験」、または「直面」している人の割合は29.1%。「数年先にダブルケアに直面する」と回答した割合を含めると36.6%となっています。10人に3~4人が、ダブルケアを自分ごとと、とらえていることになります。年齢が高くなるにつれてこの割合は高まっており、「50代女性」では経験者が4割を超えています。

ソニー生命「ダブルケアに関する調査2018

ダブルケアラーが出現する背景のひとつに、晩婚化による出産の高齢化が挙げられます。いまの時代、40歳を過ぎて第一子を出産することも少なくなく、結果としてダブルケアに直面しやすくなる実情があります。

同じ調査では、ダブルケアを経験したことがある人のうち「育児が先に始まった」人は、8割を超えているという結果も出ています。ダブルケアを3年以上行っている人は4割に近く、生活に大きな影響をもたらしていることは想像にかたくありません。

ソニー生命「ダブルケアに関する調査2018

ダブルケアラーの実態

ダブルケアの状態になると、体力や精神面だけでなく、経済面でも影響が出てきます。女性が家事や育児を担うことがまだまだ多い日本では、ダブルケアラーの女性の約4割が「仕事を減らした」と回答。無職になった人も半数に及んでいます。

厚生労働省「平成28年版 厚生労働白書|図表4--4--3 ダブルケアに直面する前後の業務量や労働時間の変化」を基に作図

住宅ローンや教育費の出費が多くなりがちな40歳前後での収入の減少は、生活に多大な影響を与えてしまうことが懸念されます。実際、ダブルケアラーの経済的な負担は、月額平均7万5,518円と、データにも表れています。

ソニー生命「ダブルケアに関する調査2018」ダブルケアに関する毎月の負担

ダブルケアに直面、あるいは見込みになったとき

ダブルケアを抱えると、たとえば早朝に子どものお弁当を作って学校に送り出し、親を病院に送って帰宅したのち洗濯や食事の準備。そうこうしているうちに子どもが帰宅する......のような生活が想定されます。

ダブルケアラーの体力的負担はもちろん、それ以外の悩みごととして次のような声も挙がっています。

「育児と介護、どちらを優先させたら良いのかわからない」

「介護に時間が割かれることで、子どもに我慢させていないか不安」

「周囲に介護をしている人がまだおらず、介護の話をしづらい」

「気を使わせてしまうのではないかと気になり、友人に打ち明けられない」

経験しないと分からないこと、家族によって事情が異なる部分も多くあることでしょう。
「介護疲れで家族に手をかけてしまった」というニュースは以前からよくあります。これは極端な例ですが、ダブルケアとなると、その精神的な負荷はなおさらのことです。

そして近年では「ヤングケアラー」の存在にも目が向けられています。介護で忙しい親に代わって、家事やきょうだいのお世話をする子どもを指します。国もこの課題を認識しており、早急な対応を急いでいます。

ダブルケアに直面したときのために知っておきたいのが、各種サポートです。たとえば、自治体の地域包括支援センターでは、介護・子育ての両面、ダブルケアラー自身の相談を横断的に受け付けています。また、NPO法人などが運営する当事者の集まりもあります。
まずは、ひとりで抱え込まない、息抜きの時間を持つなど、自分を大切にすることも考えましょう。

いまのうちから備えと心構えを

少子高齢化が加速度的に進むなか、介護のピークは団塊ジュニア世代が65歳を迎えはじめる2040年と言われています(※1)。現役世代の減少により、高齢者の数に対して福祉・介護従事者が不足することが目下の深刻な課題です。
また、介護が必要になるのは、年齢による身体機能の衰えや認知症に限ったことではありません。60代でも脳梗塞などによって身体に麻痺が生じると、日々の生活で介助が必要になります。実際、ソニー生命の調査では、ダブルケアラーの約4割が「備えを何も行っていない/行っていなかった」と回答しています(※2)。「介護は突然やってくる」ことを前提に考えておいたほうが良いでしょう。

なお、「備えとしてやっておいた方が良いこと」の上位には以下の項目が挙げられています

  • 親族(両親や兄弟姉妹など)とダブルケアが起こった場合の負担・分担について話し合う
  • 親が元気なうちに介護について話し合う
  • 子育て・介護に関する経済的な準備をする(貯蓄・保険など)

介護には、いつ始まりいつまで続くのかがわからない、という特徴があります。
そのときが急に訪れ、場当たり的に誰かひとりの負担にしてしまうと、予想だにしない不幸な結末を迎えてしまうおそれがあることは、決して軽視できません。
介護者にも自分の人生があることを第一に考え、誰かひとりに負担が集中しない状況をつくりだす備えを、いまのうちからしておきたいものです。