「子どもが言うことを聞いてくれない」と悩む前に 子育て世代なら知っておきたい脳科学と心理学

夫婦・家族

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「~しちゃダメ!」という否定形の言い回しで言われれば言われるほど、無意識下では「~しなさい」という真逆の命令として受け取られてしまいます。ですので、子どもを注意するときは、肯定的な言い回しを使うようにしましょう。脳科学や心理学をうまく活用しながら、ストレスを抱え込まない子育てを楽しみたいものです。

この記事の監修

黒田貴晴

職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決を脳科学と心理学を用いてサポートしています。また、人工知能を活用した心の研究にも取り組んでいます。

子どもがなかなか言うことを聞いてくれずに疲れてしまう。いつの時代もお母さんたちの悩みです。ついつい怒り過ぎてしまい、「やり過ぎちゃったかな......」と後悔してしまうこともあるでしょう。
そんなとき、ちょっとした脳やこころの仕組みを知っていれば、子どもがスムーズに動いてくれるようになるかもしれません。

「~しちゃダメ!」という言い方は、実は逆効果

子どもは、運動能力や判断力が未熟ながらも好奇心旺盛です。
子どもが飲み物をこぼしそうになったとき、「こぼしちゃダメ!」と思わず大きな声が出てしまうものです。また、トラブルを防止するために、あらかじめ「勝手に触っちゃダメよ」などと注意することもあるでしょう。
このように、ちゃんと注意しているにもかかわらず、子どもが何度もこぼしてしまったり、注意を聞き入れなかったりで、イライラしてしまうお母さんも多いはずです。

一見すると「~しちゃダメ!」という言い回しは特に問題ないように思えるかもしれません。しかし、ダメだと言われれば言われるほど、余計にやりたくなってしまう心理が、実は子どもにはあるのです。これを心理学では、「カリギュラ効果」と呼んでいます。
浦島太郎が玉手箱を開けてしまったシーンや、『鶴の恩返し』で青年がはた織りを覗き見してしまうシーンを思い浮かべてみると分かりやすいのではないでしょうか。

なぜこのようなことが起こってしまうのでしょう。これは、潜在意識は否定形を理解しないとされているからです。試しに、以下の文を読んでみてください。

「ピンクのゾウをイメージしないでください」

いかがでしょうか? イメージしないように書かれているにも関わらず、無意識にイメージしてしまいませんでしたか。

「~しちゃダメ!」という否定形の言い回しで言われれば言われるほど、無意識下では「~しなさい」という真逆の命令として受け取られてしまいます。ですので、子どもを注意するときは、肯定的な言い回しを使うようにしましょう。つまり、「こぼしちゃダメ」ではなく、「ちゃんと飲もうね」という感じです。そして、ちゃんとできたのなら褒めてあげることも大事です。そうすることで子どもは、「こんなときはどうすればいいのか」を学んでいきます。

ワガママな子どもをどうやって動かせばいいのか

子どもが歯磨きをしようとしない、宿題をやろうとしないというのも、多くのお母さんにとっては悩ましいことでしょう。やるように言ってもなかなか動こうとせず、むしろ嫌がってやろうとしないことも多いものです。

子どもに限ったことではありませんが、人は他人から命令されて動くというのを嫌う傾向があります。そこで試してもらいたいのが、「選択肢を示して相手に選ばせる」という方法です。
たとえば、歯磨きを嫌がる3歳の子どもの目の前に、歯ブラシのほかにアンパンマンとパンダのぬいぐるみを用意し、「アンパンマンとパンダさん、今日はどっちといっしょに歯磨きする?」と聞いてみるのです。このように選択肢を示し、子ども自らが決定する形をとれば、抵抗が起こりにくくなります。そして、この場合はどちらのぬいぐるみが選ばれたとしても、「歯磨きをする」ことになります。

選択肢を作る際には、どちらが選ばれたとしても都合のいい結果になるようにしておくことがポイントです。直接的に歯磨きをするように言ってしまうと、やるか、やらないかの二択になってしまい、「やらない」という選択肢が選ばれやすくなってしまいます。
そこで、「やる」ことを前提にした選択肢を用意してしまえば、その枠内でしか選べない状態になるため、抵抗されることが少なくなります。

そもそも子どもが親に対して反抗する根底には、親から自立して自分で判断しようという目的や、自分のことを意思を持った人間として親から認めてもらいたいという気持ちがあります。これらを考えるのであれば、選択肢を出して選んでもらうという形をとった方が、合理的なやり方であると言えます。

「~しなさい」という直接的な言い方に反抗してくる子どもに腹を立てるよりも、選択肢を示してさりげなく誘導するほうが、子どもにとってもお母さんにとっても、ストレスがかかりません。子どもが反抗してくる理由を理解したうえで、上手に対処しましょう。

やる気がないと決めつけないで

上述の歯磨きのように、簡単なことを言って聞かせるのであれば、言い方を工夫するなどして子どもを動かすことができます。しかし、面倒なのが、学校の宿題をはじめとする勉強ではないでしょうか。ただでさえ"やらされている感"が出てしまいやすいうえに、思うように課題をこなせないと、子どもはすぐにやる気を失ってしまいます。
そんなとき、子どもに合った勉強のやり方を見つけるうえでヒントになるのが、「認知特性」です。

箸や鉛筆を持つのに右利きや左利きがあるように、目で学んだほうが頭に入るという子どももいれば、音声で学んだほうが身に付きやすいという子どももいます。このように、外界からの情報を頭の中で理解したり、記憶したり、表現したりするには、人によって得意な方法があります。これが「認知特性」と呼ばれるものです。子どもの認知特性に合った勉強のやり方を心がけることで、学習の負担を減らすことができます。

認知特性は大きく分けると、「視覚優位者」「言語優位者」「聴覚優位者」の3つのタイプに分類され、そのなかで、さらに2タイプに分類されます。

視覚優位者

カメラタイプ

写真のように二次元で思考する

3Dタイプ

空間や時間軸を使って三次元で考える

言語優位者

ファンタジータイプ

文字や文章を映像化してから思考する

辞書タイプ

文字や文章を図式化してから思考する

聴覚優位者

ラジオタイプ

文字や文章を、耳から入れる音として情報処理する

サウンドタイプ

音色や音階といった、音楽的イメージを脳に入力する

参考:篠原菊紀,沢田誠『最新科学で解き明かす 最強の記憶術』,洋泉社MOOK,2017,p.60-61.(洋泉社)(ISBN-13 978-4800311429)

勉強が思うようにスムーズにいっていない場合には、やり方がその子の認知特性に合っていないことが考えられます。たとえば、色をたくさん使って整理された歴史の資料集は、視覚情報によって物事を理解する視覚優位者にとっては学びやすい教材になりますが、それ以外のタイプの子どもにとっては、色の情報は余計なものであり、理解すべき内容が頭に入ってきにくくなってしまいます。

思うように勉強が進まないわが子を見て、すぐに「やる気がない」や「理解力が無い」と決めつけてしまうのはよくありません。子どもに合わせたやり方で、やる気を引き出してあげましょう。

まとめ

いかがでしたか。子どもをしつけるにも、勉強を教えるにも、ちょっとした工夫で親子の負担が減るばかりか、むしろ楽しくなる工夫に溢れているものです。脳科学や心理学をうまく活用しながら、ストレスを抱え込まない子育てを楽しみたいものです。