介護予防の考え方と取り組みの基本 保険を使える支援サービスの活用法を知っておこう

夫婦・家族

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介護保険における「要介護認定」の種類には、7段階あります。「要介護」の手前である「要支援」も介護保険サービスの対象範囲です。「親や親族の介護は、まだ先の話かな」と感じる人も、自分自身のために介護予防サービスについて知っておきましょう。

この記事の監修

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。
趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。
Twitter:@M6Sayaka

介護保険と聞くと、「要介護認定」という言葉を思い浮かべる方は多いと思います。しかし、実は介護保険によるサービスは「要介護」の手前、「要支援」の段階から利用できます。

「親が高齢になったものの、なんとか自力で生活できるため介護が必要な段階ではない。けれども、入浴やリハビリ、家事援助など部分的に手助けが必要」という場合には、介護保険の「予防給付」制度を利用できる可能性もあります。これは自分自身のためにも知っておきたい制度です。

今回は、その内容と申請手続き、相談先などについて紹介します。

介護保険サービスを申請できる「要支援」カテゴリー

介護保険における「要介護認定」の種類には、7段階あります。「要介護」の手前である「要支援」も介護保険サービスの対象範囲です。

要介護と認定された場合に受けられるものを「介護給付」、要支援と認定された場合に受けられるものを「予防給付」といいます。文字どおり、要介護になるのを予防し、なるべく自立した生活を続けるためのサービスを利用できます。

予防給付で利用できるサービスには下記のようなものがあります。

厚生労働省資料「介護サービスの種類」を基に作成

事業者が利用者の自宅を訪問しての入浴、リハビリ、看護などのほか、施設に通う形でのリハビリや認知症予防のためのサービス、施設への短期宿泊、あるいはそれらを組み合わせたサービスを受けられます。杖や歩行器といった福祉用具を借りることもできます。

介護予防の重要性

介護予防は、高齢者本人のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を維持するという目的だけでなく、将来を考えたときに重要な意味を持ちます。
日本では、「要介護」「要支援」認定者の数は右肩上がりの状況にありますが、「要支援」、あるいは「要支援」と「要介護」の境界で認定を受ける人の増加幅が年々大きくなっており、介護予防の視点からは好ましい状況になっているといえます。

厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割(平成30年度)|P4 要介護度別認定者数の推移」を基に作図

その一方、「2040年問題」が懸念されています。これは団塊ジュニアが「高齢者」となる2040年に65歳以上の人口が4,000万人に達する(推計)ことをいいます。このタイミングで日本は、少子高齢化のピークを迎えることになります。

65歳と聞くとまだ若い印象がありますが、そこから先の日本は「現役世代の減少」という問題と直面します。現役世代の金銭的負担についてはよく言われますが、高齢者にとって困りごとになりそうなのが、福祉の仕事に携わる人の不足です。全体的に労働人口が減ってしまうなか、介護が必要になっても福祉分野の人手不足により十分なサービスが受けられない、あるいはサービスを受けるための費用負担が大きくなることが考えられます。
これらの理由もあいまって、可能な限り自立した生活を長く続けることは、とても重要です。

要支援認定の申請手続き

この章では、介護サービスを利用するまでの流れを紹介します。基本的には、要介護認定を受ける手続きと同じで、下記のようになっています。

  1. 要介護認定の申請:自治体(市区町村)の介護保険担当窓口で行います。
  2. 認定調査:申請後、市区町村の認定調査員が訪問して聞き取り調査を実施します。
  3. 一次判定、主治医意見書:訪問調査の結果に基づいたコンピュータ判定、また、かかりつけ医に病気などの状況を市区町村が尋ねます。
  4. 二次判定:3.の結果を踏まえ、審査・判定が行われます。

こうして、「要介護」または「要支援」の区分認定が決定し、原則として申請から30日で結果が通知されることになっています。

認定が降りれば、実際の介護予防サービスの利用に進むことができます。最初に行うのは「ケアプラン」の作成です。
ケアプランとは、社会福祉法人や社会福祉協議会、医療機関などのケアマネジャーが利用者本人やその家族と話し合い、どのようなサービスをどのくらい利用するのかを決めるものです。いわば"支援の計画書"です。

ケアプラン作成後に、サービスを提供する各事業者と契約を結び、利用を開始します。なお、最初の認定の有効期間は原則6カ月です。有効期間を超えてサービスを利用する場合は、更新手続きが必要です。

介助・介護の強い味方「地域包括支援センター」

「介護保険で利用できるサービスに、どのようなものがあるのか知っておきたい」「いまの親の状況をどう考えたらよいのか分からない」「サービス利用中に支援の必要度が増した」などの場合、もっとも相談しやすいのが各地にある、地域包括支援センターです。

地域包括支援センターの最大の特徴は、介護サービスと医療、行政サービスなどについて横断的に相談できることです。
「サービスを利用したいが経済的に厳しい」といった事情を抱えている場合も費用の捻出方法についてアドバイスを受けられます。サービス利用中に何かトラブルが起きたときに、あらゆることを相談できる場所として覚えておきましょう。

介護予防サービスの利用で周囲の負担軽減も

「親や親族の介護は、まだ先の話かな」と感じる人も、自分自身のために介護予防サービスについて知っておきたいところです。というのも、近年では子育てと親・親族の介護を同時に抱えてしまう「ダブルケア」が問題になっているからです。

内閣府の調査(※)によれば、日本では25万3,000人がダブルケアを行っている状況にあると推測されています。ダブルケアの中心層は、30代~40代半ばにかけての子育て世代です。

厚生労働省「平成28年版 厚生労働白書|図表4-4-2 ダブルケアを行う者の年齢構成」の情報を基に作図

背景には晩婚化があると言われています。高齢出産も珍しくないのが現代です。そのために子育てと親の介護が同時期に来てしまうのです。「孫が独立しないうちに自分が要介護になってしまった」となると、自分の子どもがダブルケアを担うことになってもおかしくありません。

このように考えると、介護予防は自分自身にとっても必要なことになります。介護予防への基礎知識を持ち、早めの対策を取れるよう心がけておきましょう。