幸せなシニア以降の人生のために

遺される家族のためにできること 突然迎える「最期の瞬間」を考えたことがありますか?

夫婦・家族

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最期を迎えるときの治療方法や最期の迎え方について、「病気になってから、家族と話し合う」「いざ、その時になったら検討すれば良い」と考えている人は少なくありません。しかし命の危険が迫ったとき、自分の希望を伝えることが難しくなります。まずは「自分はどうしたいのか」をゆっくり時間をかけて、自分自身に聞いてみることが大切です。

この記事の監修

Mizuho

20代で弁護士資格を取得。弁護士時代、人の悩みや困っていることに寄り添い、それを解決していくことを日々経験。弁護士実務経験を経た後、「暮らしを良くする、人生を豊かなものにする」ことをコンセプトにした記事を執筆しております。

あなたは、人生の「最期の瞬間」を迎える時のことを考えたことがありますか? 「死ぬのは、まだ先だろう」「自分に限っては、突然病気になるなんてことはない」などと思っている人も多いと思います。しかし、人生の最期の迎え方を考えていなかったがために、残された家族が心残りを感じることも少なくありません。

では、私たちは「最期の瞬間」を迎えるにあたり、どのような準備が必要なのでしょうか?

「最期の瞬間」を考えるのは、病気になってからでは遅い

命の危険が迫ると、自分の気持ちを伝えられない

いつ訪れてもおかしくない、"もしものとき"。人生の最期の瞬間は、いつ、誰に訪れてもおかしくないものですが、人は、自分に"もしものとき"が訪れることを、それほど深くは考えません。

命の危険が迫ったとき、およそ4分の3の人は、治療方法や死に方などについて、自分の希望を伝えることができなくなります。(※1)

最期の迎えかたは、「延命治療はしないでほしい」「死ぬときは、自宅で家族に看取られながら死にたい」など、人によって希望はさまざまです。
医学が進歩している現代だからこそ、治療方法や、呼吸を止める時期についても、さまざまなアプローチがあります。どのようにして最期の瞬間を迎えるのかは、家族としても、本人の希望を尊重したいものです。

病気になってからでは、遅い

最期を迎えるときの治療方法や最期の迎え方について、「病気になってから、家族と話し合う」「いざ、その時になったら検討すれば良い」と考えている人は少なくありません。確かに病気にもなっておらず、元気な状態の時に"自分が死ぬときのこと"を考えるというのは、あまりに現実味がないことから、その必要性を感じないのも無理はありません。
しかし、病気の種類によっては発病後にこうした準備がままならないケースも考えられそうです。

たとえば、いまや死亡原因の上位にあがるがんの場合、全身の機能は、健常時とさほど変わらない状態が続きますが、死亡前の数カ月で、急速に状態が悪化します。

体調が良好な時は、がんになっても近いうちに死ぬことまでは想像できていないことも多く、悪化した時には、死が間近に迫り、最期を迎える準備が十分とは言えない状況になっている場合も少なくありません。

厚生労働省「第1回 人生の最終段階における医療の 普及・啓発の在り方に関する検討会|アドバンス・ケア・プランニングいのちの終わりについて話し合いを始める(神戸大学大学院医学研究科 先端緩和医療学分野 木澤義之)37P」の情報を基に作図

がん同様、死亡原因の多い「心不全(臓器不全)」のケースでは、心臓の動きが悪くなることから血の巡りも悪化し、肺炎などの感染症の発症がたびたび見られます。持ち直すこともありますが、病気を重ねるなか徐々に状態が悪化する傾向にあります。こういった病状をたどることから急激な変化が起こったときに再び持ち直すかどうかの判断が難しく、急変したと思ったら、そのまま急速に死に至ることも大いにありえます。

厚生労働省「第1回 人生の最終段階における医療の 普及・啓発の在り方に関する検討会|アドバンス・ケア・プランニングいのちの終わりについて話し合いを始める(神戸大学大学院医学研究科 先端緩和医療学分野 木澤義之)38P」の情報を基に作図

では、一見死に直結する病気に見えない認知症はどうでしょう。症状は緩やかなスピードで進行するため、終末期そのものが不明確であり、"もしものとき"を話し合うタイミングも困難です。

厚生労働省「第1回 人生の最終段階における医療の 普及・啓発の在り方に関する検討会|アドバンス・ケア・プランニングいのちの終わりについて話し合いを始める(神戸大学大学院医学研究科 先端緩和医療学分野 木澤義之)39P」の情報を基に作図

このように病気によっては急速に病状が悪化することもありうるため、病気になってから"もしものとき"を話し合うようでは、遅いことがお分かりになるかと思います。

ACPとは

"もしものとき"を話し合うタイミングを逸し、人生会議ができないまま亡くなる人はとても多くいます。そのため、近年、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という考え方が生まれました。

ACPとは

万が一の時に備え、自分が大切にしていることや望んでいること、どのような医療やケアを受けたいのかを自分で考えたり、信頼する人たちと話し合ったりすることを、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)と言います。
冒頭のとおり、4分の3の人は最期が迫ったときに、自分の最期の迎え方を他の人に伝えることができない状態になっています。そのため、人生会議を行い、自分で最期の迎え方を考えてみたり、それを大切な人と相談したりすることが重要になってくるのです。

大切な人と話す必要性

アドバンス・ケア・プランニングという言葉を知った人のなかには、自分の希望だけを考えておけばよく、人生会議は必要ないと考える人もいるかもしれません。しかし、残される人はどうでしょう? 約半数の人が大切な人の死に対して、「心残りがある」と回答しています。

▼大切な人の死に対する心残りの有無

属性

心残りがある

心残りはない

無回答

一般

42.5%

53.3%

4.1%

医師

42.2%

55.0%

2.8%

看護師

50.4%

48.0%

1.6%

介護職員

56.8%

40.5%

2.6%

厚生労働省「H29度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書 P20」の情報を基に作表

残された人は、あなたの死で、ただでさえ悲しむことになりますが、そんななかでも残された人のこころが少しでも軽くなるように、生前から準備をしておきましょう。

心残りを減らす方法

では、あなたの大切な人たちは、どうすればあなたの死への心残りを減らすことができるのでしょうか?

厚生労働省「H29度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」P21の情報を基に作図

「人生の最終段階について話し合えていたら」「大切な人の苦痛がもっと緩和されていたら」「望んだ場所で最期を迎えていたら」。
ご覧のとおり、残される人の思いはさまざまですが、一番の後悔は、大切な人である本人と、人生の最終段階について話し合えなかったことにあります。

実際、人生の最終段階における医療について、詳しく話しあったことのある「一般国民」は、わずか2.7%。最も多い割合を見せた「医師」であっても9.2%と非常に少ない割合です。(※2)その理由として、多くの人は「話し合うきっかけがなかったから」と答えています。

厚生労働省「H29度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」P35の情報を基に作図

確かに、死が間近に迫っているわけでもない段階で、最期の迎え方について話し合うのは、何らかのきっかけがない限り、難しいことが多いのが普通です。では、どんなきっかけがあれば、最期の迎え方について話すことができるのでしょうか?

厚生労働省「H29度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」P37の情報を基に作図

その出来事は、「自分の病気」や「家族等の病気や死」であることが多くなっています。自分や身近な人が病気になったり亡くなったりすれば、今まで「死」を考えたことがなかった人も、死について考えるきっかけになります。しかしながら、先ほども述べたように、病気になってから最期の迎え方を話し合うのでは、時既に遅しというケースも多々あります。

このように、きっかけがなければ、話す機会すら設けることが難しい「最期の迎え方」。話しあっておかないと、周りにいる大切な人の心残りとなってしまう可能性も高いでしょう。そのため、生前に最期の迎え方をまず自分自身が考え、人生会議を行い、それを大切な人と話し合うことがとても大切です。

人生の終え方を考えるにあたり、自分の気持ちを見つめ直してみる

以上から分かるように、ほとんどの人が最期の迎え方について話し合うきっかもなく、自らの最期に関する人生会議を行ったことがありません。しかしながら、最期の迎え方を詳しく話せていない一番の原因は、どんな最期を迎えたいのか、自分自身でわかっていないことにもあります。

そこで紹介したいのが、神戸大学が厚生労働省の事業の一環としてまとめた「人生の最終段階における医療体制整備」の項目です。こちらを基に考えてみてはいかがでしょうか。

  • ステップ1 考えてみましょう
  • ステップ2 信頼できる人が誰かを考えてみましょう
  • ステップ3 主治医に質問してみましょう
  • ステップ4 話し合いましょう
  • ステップ5 伝えましょう

神戸大学「これからの治療・ケアに関する話し合い -アドバンス・ケア・プランニング -」P3の情報を基に作表

ステップ1 考えてみましょう

家族と話し合うにしても、まず自分自身がどうしたいのかがわかっていないと、家族の人も困ってしまいます。家族からしてもあなたの希望が1番大切です。まずはあなた自身が、自分の希望を自分に問いかけてみましょう。

ステップ2 信頼できる人が誰かを考えてみましょう

最期の迎え方は、とても大切なお話です。特に延命治療含めた最期の医療の方法は、命に関わる問題です。最期の迎え方を、誰と分かち合うのか。信頼できる人を考える必要があります。

ステップ3 主治医に質問してみましょう

最期を迎える時の治療方法は、ご自身の症状や病気の種類によって異なってきます。ご自身が望んでいる治療法が、症状からして可能なものなのかどうかは、1度主治医に質問しておきたいものです。そのほうが、いざその瞬間になった時に、ご家族も医師も混乱をせずに済みます。

ステップ4 話し合いましょう

治療が不可能な病気にかかった時に、最期を迎えるにあたっての治療方法をどうするのか、家族や大切な人と話しあっておくことが大切です。延命を重視するのか、苦痛を和らげることを重視するのかで、治療方法もかなり変わってきます。自分自身と大切な人に後悔が残らないよう、しっかりと話し合いましょう。

ステップ5 伝えましょう

話し合った結果は、医療・介護従事者にも伝えるようにしましょう。あなたとご家族で話し合った治療法が医療従事者の考えと食い違うこともあるからです。混乱が生じないように伝えておきましょう。

自分と大切な人のために、心残りのない人生の終え方を

以上のように、自分や家族に心残りがないように自分の望んでいる最期の迎え方を考え、家族や大切な人と話す時間を作ることが大切です。この一歩を踏み出すことが、自分のためだけでなく、大切な人の心残りを減らすことにもつながります。

最期の瞬間を含めて自分の人生ですから、誰かに相談する前にまずは「自分はどうしたいのか」を、ゆっくり時間をかけて、自分自身に聞いてみることが大切です。
自分自身が本当に望んでいることであれば、たとえ家族と意見が合わない場合でも、家族の心残りは小さく、気持ちもいくぶん穏やかになるでしょう。

※1 神戸大学「平成29年度厚生労働省委託事業 人生の最終段階における医療体制整備事業」
https://square.umin.ac.jp/endoflife/shimin01/img/date/pdf/EOL_shimin_A4_text_0416.pdf

※2 厚生労働省「H29度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」P32
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf