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要介護認定のやり直しは可能? 認定結果に納得がいかないときの対処法

夫婦・家族

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要介護度の判定に納得がいかず、認定のやり直しを希望する人は少なくありません。もし認定結果に疑問を持ったら、まずは担当のケアマネジャーに相談し、適切な対処法を一緒に検討しましょう。

この記事の監修

渡辺 有美

独身時代は都市銀行に勤務し、その後、結婚と子育てを経て介護の道へ。介護福祉士としてデイサービス・特養・訪問介護の現場で10年以上働いた経験を活かし、高齢者の方々の役に立つ記事を多数執筆しています。

介護保険サービスを利用するには、最初に「要介護認定」を受ける必要があります。この認定結果によって利用できるサービスの幅が決まるため、当事者やご家族にとって要介護認定は非常に重要なステップだといえるでしょう。
ただ、なかには予想と異なる判定が出てしまい、今後の介護生活への影響を考えて困惑している方もいるのではないでしょうか。

今回は、要介護認定の結果に納得がいかない場合の対処法、正しい判定をしてもらうためのコツを解説していきます。

予想と認定結果にズレが生じる理由とは?

なぜ実際の状況とミスマッチな判定が出てしまうのでしょうか。その理由を知るために、まずは要介護認定の仕組みを簡単にチェックしていきましょう。

要介護認定の仕組み

要介護認定とは、当事者がどれくらい介護を必要としているかを専門的に判定するものです。市区町村の窓口や地域包括支援センターで要介護認定の申請をすると、まずは認定調査員が本人の元を訪れて聞き取り形式の「認定調査」を行います。その後、かかりつけ医による「意見書」と「認定調査の結果」をもとに、コンピュータによる「一次判定」をします。
最後に、専門家による「介護認定審査会」において、医師の意見書、一次判定の結果、認定調査の特記事項を総合的に判断して「二次判定」を行い、最終的な要介護度を決定します。

厚生労働省老人保健課「要介護認定の仕組みと手順」の情報を基に作図

現状に合わない認定結果が出てしまうのはなぜ?

「予想と異なる要介護度に認定された」「どう考えてもこの要介護度はありえない」など、現状にそぐわない判定結果が出てしまう例は確かにあります。その原因のひとつとして考えられるのが、最初に行われる「認定調査」です。

認定調査では、本人の住んでいる自宅や介護施設などに調査員が直接訪問し、心身の状態や生活状況、認知機能など、全74項目の聞き取り調査を行います。この結果をコンピュータによる一次判定にかけ、そこで算出された要介護認定等基準時間に基づいて、どの要介護度が適当かを判断していきます。ところが、調査時に何らかの理由で本人のありのままの状況が調査員へ正しく伝わらないことがあります。すると、実際よりも軽い判定が出てしまうなど、正しい判定を受けられない事態も起こり得るのです。

厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順 P6」の情報を基に作図

不適切な判定により生じる問題

正しい判定を受けられないと、どのような問題が生じてくるのでしょうか。
まずは、「必要十分な介護サービスを受けられない」ことが考えられます。下記の表は、要介護状態を区分別に表したものです。要介護度が一段階上がるごとに、日常生活能力が大幅に低下していくことがお分かりいただけるかと思います。

厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順 P11」の情報を基に作図

もともと介護保険はこのような要介護者の日常生活をサポートするための制度です。しかし、認定された要介護度が実際の状況に見合っていなければ、生活面の不自由が十分に解消されず、そのしわ寄せは本人だけでなく家族にまで降りかかることに......。

本来なら介護保険でカバーできた部分を家族が担うことで、家族の肉体的・精神的負担が増して仕事や家庭へ悪影響の及ぶおそれもありますし、この状態が長期化すれば、親の介護のために仕事を辞めざるを得ない人が出てくるかもしれません。また、たとえば「要介護3」と判定されるべき人が「要介護2」になってしまうと、要介護3以上が入居条件とされる特別養護老人ホームの申し込み資格が得られなくなってしまいます。

要介護認定の結果に不満がある時の対処法

実際の介護度に見合ったサービスを利用するためには、実情に合った判定を受けることが不可欠です。もしも理不尽な認定結果が出てしまったときは、まず、なぜその判定になったのかを市区町村の担当課へ問い合わせてみましょう。
説明を聞いても「やはり納得がいかない」という場合は、「要介護認定のやり直し」が可能です。方法は、「審査請求(不服申し立て)」と「区分変更」の2種類があります。

「審査請求(不服申し立て)」をする方法

都道府県に設置されている「介護保険審査会」に審査請求をすると、認定結果が妥当であるかどうかの審査が行われます。請求者の主張が認められた場合は、市区町村の決定の全部、あるいは一部が取り消され、要介護認定をやり直すことになります。

申請期限は、認定結果の通知を受けた翌日から3カ月以内です。これを過ぎると審査請求を受け付けてもらえないので注意しましょう。申請は原則本人が行いますが、代理人に委託することも可能です。ただし、審査請求は結果が出るのが遅く、申請から数カ月待たされることも珍しくありません。そのため、もっと素早い対応を望む場合は、次に説明する「区分変更」を検討してみることをおすすめします。

「区分変更」をする方法

「区分変更」とは、要介護認定を受けた後に本人の状態が変化し、これまでの要介護度では支障が出てしまう場合に、次の更新を待たずに改めて認定調査を行うものです。結果は1カ月程度で出るため、審査請求をするよりもスピーディーに問題を解決できる可能性があります。

申請には再度主治医の意見書が必要になるため、念のため要介護度が下がってしまったことや、不本意な判定が出たことを、事前にかかりつけ医に相談してみましょう。

区分変更は、市区町村の担当窓口へ「区分変更申請書」を提出して申請します。原則として本人か親族が申請することになっていますが、事業所や施設の担当者が代理で申請することも可能です。まずは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するようにしましょう。

審査請求や区分変更をする際の注意点

ご紹介した2つの方法は、不当と思われる要介護認定を受けた際に、適切な要介護度に認定し直してもらうための手段です。ただ、審査請求も区分変更も、申請したからといって必ずしも希望の要介護度に認定されるとは限りません。なかには、「変更の必要なし」と判断され、申請が却下されるケースや、最初の判定よりも区分が下がってしまうケースもあります。
これらも念頭に置きながら、判定結果と本人の状況をよく照らし合わせ、今後の対応を冷静に判断していきましょう。

正しい判定をもらうには? 要介護認定を受ける際の注意点

要介護認定を受ける際は、いくつか注意点があります。正しい認定を受けるための必須ポイントですので、認定調査に向けてしっかり備えていきましょう。

認定調査には必ず家族が同席する

認定調査には、できるだけ家族が同席するようにしましょう。本人だけだと、その日の体調や気分により、調査結果が左右されてしまうおそれがあります。また、本人のプライドにより聞かれたことに対し、何でも「大丈夫です」「問題ありません」と答えてしまい、実際の状況が正しく伝わらないことも考えられます。
調査の日は、仕事を休んででも家族がその場に同席することをおすすめします。

普段の様子をありのままに伝える

聞き取り調査では、聞かれたことに正直に答えることが大切です。できないことを「できる」と答えるのも問題ですが、できないことを実際よりもオーバーに伝えることもよくありません。
確かに要介護度が高くなるほど受けられるサービスの幅は広がりますが、同じサービスを受けても要介護度が高い人ほど負担額が増すケースもあります。また、主治医の意見書と内容があまりに異なると不信感を持たれてしまうこともあるでしょう。

結局は、本人に合った認定を受けることが、いちばん望ましいといえます。ぜひ普段のありのままの様子を正直に伝えるようにしましょう。

重要なことは事前にメモしておく

聞き取り調査は短い時間で多くの調査を行うため、調査員は次々と質問をしながら手際よく調査を進めていきます。そのため、調査を受ける側は質問に答えることで頭がいっぱいになってしまい、大切なことをうっかり伝え忘れてしまうこともあるかもしれません。
そのような事態を防ぐため、親の普段の様子や日常生活で困っていることを前もってメモに起こし、伝え忘れがないようにしましょう。調査項目にない内容でも、調査員が必要と判断すると「特記事項」として認定調査票に書き添えてくれます。この特記事項は、介護認定審査会で判定の際に考慮してもらえるため、悩みごとや困りごとがあれば忘れずに伝えるようにしてください。

まとめ

要介護度の判定に納得がいかず、認定のやり直しを希望する人は少なくありません。もし認定結果に疑問を持ったら、まずは担当のケアマネジャーに相談し、適切な対処法を一緒に検討しましょう。また、現状と一致しない判定結果が出ないよう記事でご紹介した認定調査のポイントもぜひ押さえておきましょう。