「好き」を仕事に。私たちの小商い

アフリカ生地服飾雑貨店「梅田洋品店」オーナー 梅田昌恵(うめだまさえ)さん

夫婦のこれから

梅田さんの作る服飾雑貨は、アフリカで買い付けた生地で作られています。「街のお洋服屋さん」として起業する夢を叶え、一人ひとりのお客様と向き合い元気にする。梅田さんの思い描いた「アフリカワイイ」は今日も誰かを元気にし、ハッピーにしています。

【監修】伊藤璃帆子 (Rihoko ITOH)

「本当に好きなことを仕事にしたかった」
そんな気持ちをきっかけに、自分で作ったものをインターネットなどで販売する方が増えています。大規模なビジネスではなく、小さくスタートするからこそ、家庭と両立しながら、生活の変化に柔軟に合わせて無理なく仕事ができるのかもしれません。個人から始めた「小商い」に焦点をあて、インタビューする本企画。
第2回目は、アフリカの鮮やかな生地で洋服を製作する「梅田洋品店」のオーナー兼お針子の梅田昌恵さんにインタビューしました。

海外ボランティアをきっかけに「アフリカワイイ」物づくりを始める

店舗名:梅田洋品店
開業:2004年
●店主 梅田昌恵→オーナー兼お針子

梅田さんの作る服飾雑貨は、アフリカで買い付けた生地で作られています。思いがけない色合わせや大胆なプリントに圧倒されそうですが、出来上がった服は驚くほど着心地が良く、着る人を元気にしてくれるパワーがあります。
そんな素敵なファッションを生み出す梅田さんは、どのようにしてアフリカの生地と出会ったのでしょうか。

「生まれ育った北海道で事務仕事をしながら、『街のお洋服屋さん』になることを夢見て、洋裁の勉強をしていました。早くから独立起業を夢見てはいたものの、具体的に何をするかまでは決まっていませんでした。ある時、会社の上司から教えて貰った手工芸技術指導や販売支援のための海外ボランティアの募集広告がきっかけとなり、2000年に、アフリカ大陸ジンバブエ共和国へ飛び立ちました。生まれて初めて訪れたアフリカの、故郷とはまったく違う気候風土に戸惑いながらも、2年にわたる滞在中に、周辺各国も巡って様々な経験をしました」(梅田さん)

この時、梅田さんがアフリカで出会ったのは、現地のカラフルでかわいい布たちです。そこから「アフリカワイイ(アフリカ+カワイイ)」という発想が生まれ、梅田さんの物づくりの基本となったそうです。

自分が本当に良いと感じられたものと出合ったとき、受けた刺激を何かの形に生かそうと行動に移すことは、なかなかできることではないと思います。梅田さんの場合、ご自身の夢に向かって洋裁を学び、それを生かすボランティアを経て、独立開業への道を切り拓いていきました。アフリカでのボランティア時代は、洋服屋さんへの最短ルートではなくとも、梅田さんの物づくりにとって欠くことのできないもっとも重要な体験となったようです。

派遣社員として働きながら、副業で夢に見た 「梅田洋品店」を開業

アフリカ買付の様子(梅田洋品店HPより)

ジンバブエから帰国後、梅田さんは洋服屋さんとしての第一歩を歩みはじめました。はじめは派遣社員として働きながら副業でアフリカの生地を生かした雑貨や洋服のデザイン活動を開始。イベントや雑貨店での販売をしながら、徐々に販路を広げます。

――副業で物づくりを始めて、販路を広げる。それは簡単なことではなさそうですが、梅田さんは実際にどのような形で販路を広げていったのでしょうか。

「試行錯誤の末に、タンザニアで手に入れた「カンガ」というプリント生地を使ったスカートを開発しました。パネル柄を裁断せず、かつ身体のラインも綺麗に見えるデザインが梅田洋品店の人気商品のひとつ「カンガのバルーンスカート」となりました。ウェストはゴム仕様で、着こなしやすいシルエットと、洗濯機で洗える手軽さが相まって、多くのお客様の支持を得ることができました」(梅田さん)

2004年からはオンラインショップを開始。「カンガのバルーンスカート」が人気を得た事で、作って販売する楽しさと手応えを感じ、さらに実店舗の立ち上げを決意します。

「2006年、西荻窪に念願の店舗をオープンしました。美術館のギャラリーショップにも「カンガのバルーンスカート」を卸し、好評を得た事でさらなる自信にもつながりました。その後は実店舗を続ける傍ら、各地のギャラリーでポップアップショップを開催して、現在につながっています」(梅田さん)

以降、毎年欠かさずアフリカを訪れ、生地、ストールやアクセサリーなどの服飾雑貨の買い付けをご自身で行っています。その都度、訪問先から発信されるブログも評判です。私たちが知らない普段着のアフリカを知ることができます。

*ブログ「お針子だより

2002年に帰国し、洋服づくりを始めた梅田さんが実店舗を持つまで4年。梅田さんの場合、実店舗を持ったあとも各地で販促活動を並行して行っています。自分で作ったものを初めて売るとき、誰もが不安に思うはずですが、お客様の反応を見ながら徐々に販路を拡大していったことが無理することなくご自身の自信に繋げていけたそうです。

オーダーメイドの洋服作りが梅田洋品店のスタイルに

梅田洋品店の顧客が増えてきたころ、自然な流れでオーダーメイド(特注品)も受けるようなりました。これも梅田さん自身がデザインから製造まで関わっているからできること。
2012年、青山にある根津美術館前のビンテージマンションにアトリエを移転し、平日は予約制のアトリエ、週末は販売という営業形態にシフトしました。

「日本でも、かつて既製品がそれほど流通していない時代、洋装店に行き生地を選んで自分のサイズで洋服を作ってもらう事はそれほど特別な事ではありませんでした。好みのサイズ・型・柄を選んでから裁断と縫製を進める服作りは、いまでもアフリカでよく見る光景です」(梅田さん)

洋服を選ぶとき、「この色柄は好きだけど、デザインがもっとこうだったら良いのに」という気持ちになることがありますが、そういった悩みが解消されるだけでなく、自分の体によく馴染み、長く愛用できるお気に入りの一着に仕上げられるのが、消費者から見たオーダーメイドの良さです。
遠方で仕入れが大変なアフリカの商品ゆえに、売れずに無駄になってしまうのは極力避けたいところですし、丈夫で長持ちする生地ですから、お客様には長く着てもらいたいのが売り手の思いでもあります。
梅田さんが大切にしているのはお客様との対話で、お客様一人ひとりにぴったりな一着に仕立て上げることによって、使い捨ての量産品とはまったく違った長く愛せるファッションアイテムを提供することができています。

「現在も販売は行っていますが、基本的にはオーダーメイドと、ご希望のお客さまのお直しを中心に受け付けています。アフリカの生地は可愛いだけではなく、とても丈夫です。体型の変化に合わせてお直ししながら長く着続けることができるのも魅力の一つ。色落ちもせず、洗濯機で洗えてメンテナンスも楽ちんな点も長く着られる理由です」(梅田さん)

カンガのバルーンスカート(HPより転載)

梅田さんが目指すお店作りのポイント

梅田さんがここまで販路を広げるにはどのような工夫があったのでしょうか。良い商品をつくる事はもちろん大事ですが、品質やセンスが良いだけではものを売ることはできません。一人でビジネスをするにはコネクションづくりも必要不可欠です。

人脈を大切にする

梅田さんが各地のギャラリーで展示販売を開催するには情報収集とネットワークの構築が欠かせなかったといいます。各地で開催しているポップアップイベントでは、会場となる現地のスタッフさんらがお手伝いに入るそうです。
アフリカの肝っ玉母さんみたいな大らかさで、いつも賑やかなポップアップショップはお客様にはもちろん、現地スタッフさんたちにも大評判。一人でここまで頑張ってこられたのは、上手に周囲を巻き込み、みんなで楽しむことができる人徳と才能なのでしょう。

お客様の着こなしスナップ写真(HPより転載)

お客様とのコミュニケーションを大切にする

「誰かを元気にしたい、喜んでもらいたいという思いでオーダーメイドの服を作るために、お客様との対話を大切にしています。買い物することを楽しい体験の時間としてご提供する工夫も心がけていることです」(梅田さん)

梅田さんが仕事を継続するための元気の源にしているのが、お客様の喜びの声。
梅田さんの人柄がよく表れるのがオーダーメイド受注会です。常連の方が多く、和気藹々としているのも印象的ですが、そこで初めて出会ったお客様同士が楽しそうに生地を選ぶ様子を目にすることもしばしば。お互いに生地を体に当ててみながら「こっちの方が良い」「それ、お似合いね」などおしゃべりも弾みます。

「『梅田さんの服を着ていると、人に褒められます』というお客さまの声をはげみに、初心を忘れず、服飾作家として「アフリカワイイ」をベースにした作品作りを続けています」と梅田さん。

 

「街のお洋服屋さん」として起業する夢を叶え、一人ひとりのお客様と向き合い元気にする。梅田さんの思い描いた「アフリカワイイ」は今日も誰かを元気にし、ハッピーにしています。
現在はアトリエ活動が中心ですが、オンラインショップも充実しています。ぜひオンラインでチェックしてみてください。

梅田洋品店

女性にとって、ファッションはパワーの源です。「お洋服が好き」「自分で作って販売してみたい」という方は、服飾学校へ通うのも楽しそうです。個人が制作するクラフト雑貨などを販売するオンラインモールも充実しているので、腕試ししてみるのもおすすめですよ。服飾学校はハードルが高いと思われるかもしれませんが、各市町村が運営しているカルチャーセンターに講座があったり、生地屋さんでも提携スクールがあったりと、比較的身近に学べる環境が見つけられそうです。
「子どもが小さいころはお洋服や小物を作ってあげていた」という方も多いことでしょう。使わずに眠っているミシンが活躍してくれるかもしれませんね。

監修

伊藤璃帆子 (Rihoko ITOH)

美術家。東京都在住。
編集、執筆、写真撮影、イラスト、フードスタイリング等を手がける。
日常使いのアイテムをちょっと良いものに変えてみませんか。
暮らしや家事にまつわるアイデアを厳選してご紹介していきたいと思っています。