幸せな”第三の生活”のために

幸せな老後を過ごすための介護サービス~その種類と費用について

夫婦・家族

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幸せな老後を過ごすための介護サービス。実は複雑で、地域の介護サービスの事情もあります。地域のケアマネジャーや地域包括支援スタッフに相談し、いつまでも主体的な生活ができるよう工夫することが大事です。

この記事の監修

いのきぶんいち

居宅介護支援事業所の管理者として約10年間の勤務経験で述べ5000人の相談援助経験あり。現在、経験を活かしてWEBライターとして活躍中。

長寿社会において幸せな"第三の生活"を過ごすには、必要に応じて介護サービスを利用することだと考えます。しかし、介護保険法に基づく介護サービスだけでも26種類・54サービス(※)にのぼるため、それらを一般の人が理解するのが難しいのは当然のことです。

また、必要なサービスを導入すると、どのくらいの費用になるのか、不安になっている方も多いでしょう。次のデータをご覧ください。

公益財団法人生命保険文化センター「令和元年度生活保障に関する調査」の情報を基に作図

上記の調査によると、親などを介護するうえで「自分の肉体的・精神的負担」「自分の時間が拘束される」に続いて、「自分の経済的負担」「介護サービスの費用が分からない」ことを不安に感じる人が多いことが分かっています。

わたしはケアマネジャーとして高齢者や家族と関わるなかで、目的や希望に沿った介護サービスの利用をご提案してきました。その経験から、介護サービスの種類や費用の仕組み、費用の軽減制度について事例なども踏まえて詳しくお伝えしていきます。

介護サービスの種類

介護サービスの種類は大きく分けると、介護保険で利用できる「介護保険サービス」と介護保険を活用しない行政や民間の「介護サービス」に分けることができます。また、「介護保険サービス」のなかでも、「在宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つに分けることができます。
これらのサービスは、どのような場合に受けられるのかを解説していきましょう。

1.在宅サービス(介護保険サービス)

在宅で生活されている高齢者には、下記の介護保険サービスが用意されています。

サービス内容

サービス種類

介護の相談・ケアプランの作成

居宅介護支援

自宅に訪問

訪問介護(ホームヘルプ)

訪問入浴

訪問看護

訪問リハビリ

夜間対応型訪問介護

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

施設に通う

通所介護(デイサービス)

通所リハビリ

地域密着型通所介護

療養通所介護

認知症対応型通所介護

訪問・通い・宿泊

小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

短期間の宿泊

短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所療養介護

福祉用具を使う

福祉用具貸与

特定福祉用具販売

厚生労働省「公表されている介護サービスについて」の情報を基に作表

居宅介護支援のケアマネジャーに担当してもらえれば、利用者の状態を確認しながら必要なサービスを導入するためのケアプランを作成してもらえます。そのうえで、訪問介護(ホームヘルプ)を利用すれば、在宅で掃除や洗濯、買い物、調理などの家事援助や食事介助、入浴介助、排泄介助などの身体介助を受けることができます。
このほか、自宅浴槽での入浴が厳しい高齢者であれば「訪問入浴」を、健康管理が必要であれば「訪問看護」を、リハビリが必要であれば「訪問リハビリ」を受けることができます。
さらには、外出目的や社会性の維持、リハビリなどを目的として、「通所介護(デイサービス)」「通所リハビリ」を利用することもできますし、家族の休息のために、「短期入所生活介護(ショートスティ)」を利用することもできます。

2.施設サービス(介護保険サービス)

在宅での生活が難しい高齢者のためには、下記の施設サービスが用意されています。

サービス内容

サービス種類

施設等で生活

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

介護老人保健施設(老健)

介護療養型医療施設

特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)

介護医療院

厚生労働省「公表されている介護サービスについて」の情報を基に作表

居住型としては、在宅での生活に戻るための「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」が、リハビリが必要な高齢者には「介護老人保健施設(老健)」が用意されています。このほか、医療の介入頻度が高い利用者には「介護療養型医療施設」「介護医療院」が用意されています。
また、民間が運営する「有料老人ホーム」などにおいても、介護保険を適用してサービスを受けられる施設も存在します。

3.地域密着サービス(介護保険サービス)

サービス内容

サービス種類

地域に密着した小規模な施設等

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

地域密着型介護老人福祉施設

地域密着型特定施設入居者生活介護

厚生労働省「公表されている介護サービスについて」の情報を基に作表

「地域密着サービス」は、今まで生活してきた地域でできる限り生活したいという高齢者のために用意されています。ただし、住んでいる地域に存在する施設しか入居することができません。そのうち、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」では、認知症軽度の高齢者が施設職員の支援を受けながら共同生活を営むといった特徴を持っています。職員と買い物したり、ほかの利用者と協力しながら調理や洗濯をしたりします。
また、「地域密着型介護老人福祉施設」は、全室個室で少人数制になっている特別養護老人ホームのこと。比較的安価で利用できる施設が多いので人気となっています。

行政サービス・民間サービスそれぞれの特徴

続いて介護者が受けられるサービスを見ておきましょう。介護サービスには、介護保険を活用した民間のサービスだけではなく、行政が独自に行っているサービスも存在します。
それぞれの特徴は、以下のとおりです。

民間サービスの種類

  • ホームヘルプサービス
  • 介護タクシー
  • 宅老所(宿泊サービス)
  • 訪問理美容サービス
  • 有料老人ホーム ほか

民間サービスは介護保険を活用できないので実費負担となりますが、介護保険サービスではできないサービスが利用できます。たとえば、訪問介護での「庭の草刈り」などは、民間のホームヘルプサービスを活用できます。このほか、出張で散髪してくれる「訪問理美容サービス」や、車イスやストレッチャーのまま移動できる「介護タクシー」なども、これに当てはまります。有料老人ホームなど、施設サービスを利用することも可能です。

行政サービスの種類

  • 配食サービス
  • 緊急通報システムサービス
  • おむつ購入費助成サービス
  • 徘徊高齢者への支援サービス
  • 外出支援サービス
  • 訪問理美容サービス ほか

自治体によって行われている介護サービスには違いがありますが、上記に掲載しているものは多くの自治体で見られるサービスです。

介護サービスの費用

介護保険のサービスは、1~3割の負担で利用できます。
ただし、受けられる介護サービスの量は介護度によって決められており、その量を超えると自己負担となってしまいます。
介護保険サービスの費用の仕組みがどうなっているのか、また実際の事例を用いて、費用がどのくらいになるのかを見ていきましょう。

介護保険サービスの自己負担額の仕組み

厚生労働省「利用者負担の判定の流れ」の情報を基に作図

介護保険サービスを利用する場合、利用した金額の1割負担、もしくは一定以上の所得で2~3割負担しなければなりません。所得段階に応じた請求額になりますが、利用できるサービス量の上限額は、要介護度別に以下のように設定されています。

要支援1

5万30円

要支援2

10万4,730円

要介護1

16万6,920円

要介護2

19万6,160円

要介護3

26万9,310円

要介護4

30万8,060円

要介護5

36万650円

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

これは「利用限度額」と呼ばれるもので、在宅サービスを利用する場合、この範囲で定められた割合を負担する必要があります。超過分は、全額自己負担になるので注意が必要です。
たとえば、要介護3の方が月間40万円分の介護サービスを利用した場合、26万9,310円まで所得割合に応じた金額を負担し、それ以上は全額自己負担です。
1割負担の方であれば、以下のような計算式になります。

1割負担分......26万9,310円×0.1=2万6,931円
全額自己負担分......40万円-26万9,310円=13万0,690円
1カ月の利用料金......26,931円+13万0,690円=157,621円

在宅サービスを実際に利用した場合の負担額の事例

では実際にサービスを利用した場合、どのくらいの費用がかかるのでしょう。以下を例に、試算してみましょう。

  • 要介護3
  • 週3回(月12回)訪問介護(ホームヘルプ)で生活援助を利用
  • 週1回(月4回)訪問看護を利用
  • 週3回(月12回)通所介護(デイサービス)を利用
  • 福祉用具(車イス・ベッド等)を利用

この場合の金額は、おおむね次の通りです。

 

利用回数等

費用額

訪問介護(ホームヘルプ)

月8回

2万5,120円

訪問看護

月2回

1万520円

通所介護(デイサービス)

月6回

5万6,820円

短期入所生活介護(ショートスティ)

14日

12万8,240円

福祉用具

車イス・ベッド等

1万5,950円

合計

23万6,650円

厚生労働省「介護サービス概算料金の試算」の情報を基に作表

要介護3の場合の利用限度額は、26万9,310円ですので、上記程度のサービス量を利用できるようになり、自己負担額は次のようになります。

1割負担の方の自己負担額の目安

2万3,665円

2割負担の方の自己負担額の目安

4万7,330円

3割負担の方の自己負担額の目安

7万995円

厚生労働省「介護サービス概算料金の試算」の情報を基に作表

これらの金額はあくまでも目安です。利用する法人や事業所の所在地によっては「地域区分」などが加算されることがあります。

施設サービスを実際に利用した場合の負担額の事例

介護保険施設の費用は、「施設サービス費」「居住費」「食費」で構成されています。これらに、必要なものを購入する「日常生活費」が加算されることになります。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1カ月の自己負担の目安(要介護5の人が利用した場合)

介護サービス費

ユニット型個室

約2万7,500円/月

多床室

約2万5,000円/月

食費

約4万2,000円

※1,380円/1日

居住費

ユニット型個室

約6万円/月

※1,970円/1日

多床室

約2万5,200円/月

※840円/1日

日常生活費

約1万円/月

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

上記は要介護5の人が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を1カ月利用した場合の自己負担の目安です。ただし、負担額は、特別養護老人ホームの種別によって金額が異なってきます。ここで、おおよその金額を見ておきましょう

ユニット型個室を利用した場合

約13万9,500円

多床室を利用した場合

約10万2,200円

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

「ユニット型個室」とはユニット型特別養護老人ホームにある居室を、「多床室」とは、従来型と呼ばれる特別養護老人ホームにある4人部屋や2人部屋をそれぞれ指しています。いずれも所得に応じて軽減制度を利用することができます。

介護サービスで受けられる費用軽減制度

介護保険サービスでは1~3割負担で利用できます。ただし、介護費用は長期的な視野で考えておくことがいいでしょう。
ここでは利用の多い3つの軽減措置制度について具体的にお伝えしていきます。

1.特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

介護保険施設の場合、所得に応じた費用に減額されるシステムがあり、「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」と呼んでいます。負担限度額は4段階になっていて、3段階までは基準費用額から減額されます。所得区分は次の通りとなっています。

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

負担限度額認定を受けられるのは「食費」「居住費」の2つです。認定を受けた場合の自己負担は、それぞれ以下のとおりです。

 

基準費用額

第1段階

第2段階

第3段階

食費

1,380円/1日

300円/1日

390円/1日

650円/1日

居住費

ユニット型個室

1,970円/1日

820円/1日

820円/1日

1,310円/1日

多床室

840円/1日

0円/1日

370円/1日

370円/1日

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

そして、要介護5の人が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を1カ月利用した場合の自己負担の目安は次の通りです。

 

基準費用額

第1段階

第2段階

第3段階

ユニット型個室を利用した場合

約13万9,500円

約7万1,100円

約7万3,800円

約9万6,300円

多床室を利用した場合

約10万2,200円

約4万4,000円

約5万7,800円

約6万5,600円

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

これらの負担額認定を受けるには、各自治体への申請が必要です。

2.高額介護サービス費支給制度

厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索|サービスにかかる利用料」の情報を基に作表

「高額介護サービス費」は、介護保険サービスの月々または年間の自己負担額が所得に応じた一定額を超えた場合に支給される金額です。たとえば、自己負担額が1カ月2万5,000円になった場合、第1段階の利用者であれば上限額は1万5,000円となり、超えた1万円は介護保険から支給されることになります。

ちなみに、「世帯」と記載されている金額は、世帯合算で計算できる金額です。たとえば夫婦で介護保険サービスを利用している場合、その夫婦の自己負担額を合算して計算されることになります。こちらも支給を受けるためには、各自治体への申請が必要です。

3.高額医療・高額介護合算制度

医療保険と介護保険サービスの自己負担額を足した額が基準額を超えた場合には、超えた額が高額医療制度によって支給されます。
介護サービスを受けている高齢者の多くは、医療保険サービスも利用されています。そのため多くの方が利用できる制度であるといえます。

支給条件は、1年間で医療保険と介護保険サービス両方の利用があり、どちらかの額が501円以上あることです。世帯合算で計算することになります。
70~74才の方の基準額は次の通りです。

被保険者の所得区分

基準額

①現役並み所得者

標準報酬月額83万円以上で高齢者受給者証の負担割合が3割……現役並みIII

212万円

標準報酬月額53~79万円で高齢者受給証の負担割合が3割……現役並みII

141万円

標準報酬月額28~50万円で高齢者受給証の負担割合が3割……現役並みI

67万円

②一般所得者(現役並み所得者及び低所得者以外)

56万円

③低所得者

被保険者が市区町村民税の非課税者等である場合

31万円

被保険者とその扶養家族全ての人の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合

19万円

全国健康保険協会ウェブサイト「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費 | 健康保険ガイド」の情報を基に作図

一般所得者の場合、1年間で自己負担額が56万円を超えた場合に支給を受けられます。これは、月額に換算すると、約4万7,000円。サービスを多く利用している高齢者であれば、該当する人も多いのではないでしょうか。

まとめ

幸せな老後を過ごすための介護サービスとして、その種類と費用を厚生労働省の資料を基に説明してきました。金額においてもいくつかの事例を示しましたが、実際には利用する地域や介護サービス事業所によって金額が異なることがあります。そのため、介護サービスの利用や費用については、地域のケアマネジャーや地域包括支援スタッフに相談することをおすすめします。

介護保険サービスは複雑であるだけではなく、地域の介護サービスの事情もあります。
お住まいの地域によっては、受けたい介護サービスの定員が埋まり、利用できない場合もあるかもしれません。うまく介護を受けながら生活するためには、地域の事情を把握した専門職員に相談するとよいでしょう。目的や条件に応じた介護サービスを見つけ、いつまでも主体的な生活ができるよう工夫することが大事です。