「好き」を仕事に。私たちの小商い

フランス古道具店「粋気社(すきしゃ)」店主 国分みどりさん

夫婦・家族

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「自分の価値観に正直で、芯がぶれないことが小商いの鉄則」と、お話してくださったのはフランスの輸入雑貨店を営む国分みどりさん。「小商い」に焦点をあて、実際に好きなことで起業した方たちにインタビューをしました。

この記事の監修

伊藤璃帆子 (Rihoko ITOH)

美術家。東京都在住。
編集、執筆、写真撮影、イラスト、フードスタイリング等を手がける。
日常使いのアイテムをちょっと良いものに変えてみませんか。
暮らしや家事にまつわるアイデアを厳選してご紹介していきたいと思っています。

多様性を尊重する動きが高まる昨今、「本当に好きなこと」「やりたかったこと」を始める方が増えています。そのなかで「小商い」に焦点をあて、実際に好きなことで起業した方たちにインタビューする本企画。今回は、フランスの輸入雑貨店を営む国分みどりさんにお話を伺いました。

フランス古道具の骨董商となったきっかけ

粋気者店主の国分みどりさん

店舗名:粋気者(すきしゃ)

開業:平成14年(2002年)

スタッフ
●店主 国分みどり→粋気者の運営と衣装製作アトリエCostumeHouseBun2の二足わらじ
●娘店長 国分雪→デパート勤務をしながら店主をサポート。年1回はフランス買い付けへ
●フランス在住スタッフ 秋谷ひとみ→フランス人の旦那様の協力の元、田舎のブロカント(古道具)買い付け

国分みどりさんは、アパレル会社で子供服のデザイナーとして在籍されていた経験を生かし、現在個人で舞台衣装のお仕事をされていますが、そのお仕事と並行して骨董商も並行して営まれています。
『粋気者』を立ち上げたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

「現在フランス在住スタッフとして勤務する秋谷ひとみさんとの出会いがきっかけです。ひとみさんは、以前日本でモダンダンサーとして活動し、作品やスタジオ発表会の衣装を私にオーダーしてくれていました。彼女が結婚してフランスに住むことになったと聞き、良い機会なので彼女の家へ遊びに行くことにしました。すると、そこにはひとみさんが蚤の市(フリーマーケット)で手に入れたアンティークがドッサリ! その頃、私もちょうど雑貨店をやってみたいという思いがあり、迷わず一緒に仕事を始めることになりました」(国分さん)

もともと雑貨が好きだった国分さんは、ご自身の「好きなもの」との縁をフランスで察知し、そこから起業を果たしました。しかし、起業に対する不安は誰もが考えることです。国分さんはどのように不安を乗り越えたのでしょうか。

収入の道は一つに絞らない

繊細な絵付けのお皿は熱狂的なコレクターがいるほどの人気商品

「元々骨董や古道具が好きだったということもあり、異国の商品を扱うことにもスンナリ入っていけたと思いきや、知らない事が多すぎて失敗は数知れず! 最初に開店した路面店は大赤字であっけなく3年で閉店。その後現在のイベント出店形式に変更して現在に至っています」(国分さん)

路面店では失敗したけど、方針を切り替えることで継続の道が拓けたそうです。失敗に拘らず、フレキシブルに無理なく続ける方法を考えることが継続できるかどうかのポイントかも知れません。

衣装の仕事とのバランス

アンティークの仕事はイベント出店ですから土日が中心になります。イベントの日程に合わせ、月に5日〜10日程度が出店日。国分さんはイベント以外の日はアトリエで衣装製作の仕事をしています。

「アパレル会社に在籍している頃から続けてきた衣装のお仕事とブロカントの商売のバランスをとることで、収入源を複数確保しています。これは独立開業に限らずですが、いろんな世界と繋がりながら、複数の視点を持つことは、社会の在り方が変わっていくこれからの時代に必要なことではないかと思います。其々の世界で得られた情報は、時に繋がったり重なったりして新たな発見をもたらします。それによって生活が活発化すれば、なおいいですね」

苦しいけれど、楽しい露天商のお仕事

出店されていた大江戸骨董市の様子

自分が本当に好きで始めた小商いですが、露天商という仕事にはつらいこともあるようです。主に出店されている大江戸骨董市は屋外での開催。搬入搬出、販売しながら屋外のイベントで過ごすのは確かに重労働です。それなりの体力と気力が無いと続きません。過酷な状況で出店を継続する為に、身体を気遣い、気候への対策は欠かせません。正に頭と体を使うお仕事です。「つらいこともあるけれど、やっぱりこの仕事は楽しいですよ」と国分さんは言います。

露天商の楽しい点

常に新しい発見や出会いがある

お客様の知識やアレンジ力、生活を楽しむ感覚の良さにはいつも驚かされます。又、骨董商の方々はそれぞれ扱う商品の専門家なのでとても勉強になります。

フランスの各地を巡ってその生活、文化、考え方を知ることができる

買い付けの合間の美術館巡りも楽しみの一つです。衣装のオーダーとのタイミングが合えば生地をフランスで仕入れることもあります。

露天商の苦労する点

体力勝負

イベント毎の運搬搬入搬出では肉体労働が伴います。屋外イベントも多いので酷暑極寒に関わらず天気を選べません。

買い付けの時も重い荷物を持ってウロウロ

治安の悪い地区のマーケットも多く、交通やホテル、様々なアクシデントも自力で対応していかなければならない事がたくさんあります。

野外でのイベントは防寒がとても大切。

どのような状況下でも様々な出会いやお客様とのやり取りが、続けていくモチベーションになっているそうです。
国分さんが販売している食器類を、思いもよらない用途で買われていくお客様もいらっしゃいます。印象的だったのが、シュガーポットを亡き愛犬の骨壷として購入されたお客様のお話! 物としての決まりきった用途に沿って使うのではなく、皆さんが自由な発想で生活に古道具を活用しているのは、国分さんにとっても刺激的だといいます。
「経験から学ぶ事が沢山あります。お客様のお話を聞いて『なるほど! そんな使い方も素敵ね!』と思うことも少なくありません。自由な発想をお客様から教えていただき、買い付けの参考にしています。買い付けの際に目的を絞ることは大切ですが、それだけに拘らない。別の仕事の視点も忘れずに頭の中に入れておくことも大事です。息抜きもしながら様々な情報や刺激を受けることも海外買い付けのメリットです。組織に属さず、自分自身が楽しみながら、アンテナを立てて感性を磨いていく。自由裁量を持つことが、個人で仕事を続けるコツかも知れません」

また、家事や家族との生活を両立する方法を考えながら仕事をすることも大切だと国分さん。

「私たち世代にとって、自分の事だけではなく高齢になった親の介護という問題も避けて通れません。仕事はマイペースで無理をしない。家族の事も出来る範囲でやっていくと覚悟することも大切です。」(国分さん)

自分の価値観に正直で、芯がぶれないことが小商いの鉄則

「今後について今迄通り蚤の市や骨董市の出店はもちろんですが、イベントへの参加だけにとどまらず自ら主催するポップアップショップ(期間限定店舗)のチャンスを増やしていきたいと考えています。ブロカントには職人さん達の温もりがひとつひとつに残っています。そんな物達を愛し、生かして使っていただける橋渡しを続けていきたいと思います。」(国分さん)

好きを仕事にして続けるには自分なりのルールは必要不可欠です。最後に、国分さんが小商いを続ける上で大切だと考えていることをお聞きしました。

国分さん流小商いを続けるコツ

夢を持ち過ぎない

夢を持ちすぎないとは身の丈に合った仕事のやり方を自ら考えて実行する。誠実であることで周囲からのサポートも受けられるようになり、次のステップに繋がります。

正直に売ること

「アンティークはひとつひとつの物に歴史があります。見たこともない物と出合って、調べてもわからない事もあります。『どんな使い方をしていたのかしら』と妄想を掻き立てる物もたくさんあります。たくさんの物を見て、知識を増やしていくことは古物商として大切なことです。そして、過剰な上乗せをせずに、それらの正しい価値をお客様に伝えていくことを心がけていきたいと思っています」

 

アンティークなどを扱う古物商の仕事は一つひとつの商品が高額であったり、免許が必要だったりといったハードルの高さがあります。国分さんが参加されているアンティークのイベントは、出展者の枠に厳しい制限があることが大半で、参加費も高額なこともあります。
もし、ご自身で商品を販売してみたいと思ったら、まずはフリーマーケットで出品してみるのはいかがでしょうか。地域で開催されるフリーマーケットなら、参加費は2〜3,000円程度が大半ですからチャレンジしやすいのも魅力ですよ。