詐欺被害から高齢者を守るには? 犯罪の手口と効果的な予防法

夫婦のこれから

高齢者の詐欺被害を防ぐには、本人の注意だけでなく、周囲の働きかけが欠かせません。また、本人が行動を起こす前に家族や専用窓口へすぐに相談できるような環境を整えておくことも重要です。

【監修】渡辺 有美

オレオレ詐欺、振り込め詐欺などによって高齢者がお金をだましとられる詐欺犯罪が多発しています。なかには1千万以上の被害にあう人もおり、事態は深刻です。
高齢者を詐欺の脅威から守るには、どのような対策が有効なのでしょうか。

今回は、老後資金として貯めておいた大切なお金を悪質な手口で奪われることのないよう「高齢者の詐欺被害を防ぐポイント」をくわしくご紹介します。

高齢者の詐欺被害は深刻

「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」といった、電話・FAX・メール等を利用して現金をだましとる詐欺を、一般的に「特殊詐欺」といい、高齢者の被害が目立っています。

警視庁のデータによると、平成31年1月から令和元年11月までの特殊詐欺の被害は1万6,244件で、このうち65才以上の高齢者が8割以上を占めています。

警視庁「特殊詐欺認知・検挙状況等について(平成31年1月~令和元年11月)」の情報を基に作図

なかでも、97.3%と圧倒的に高齢者に被害の多い「オレオレ詐欺」では、70才以降の被害者が一気に増えており、女性の被害が際だって高い数値を示しています。

警視庁「特殊詐欺認知・検挙状況等について(平成31年1月~令和元年11月)」の情報を基に作表

オレオレ詐欺はこれまでもニュースや新聞で大きく取り上げられ、世間で広く話題になっているにもかかわらず、平成28度年が5,753件、平成29年度が8,496件、平成30年度が9,145件と、一向に被害が減る様子は見受けられません。(※1)
最近では詐欺の手口がより巧妙かつ多様化してきていることもあり、日ごろから被害にあわないよう気をつけている人でもうっかり騙されてしまうケースがあります。

また、商品の購入にまつわるトラブル、架空請求、屋根や塗装の工事などに関する詐欺・悪質商法も、高齢者に被害の多い犯罪です。(※2)

都内の消費生活センターに寄せられた相談状況をみてみると、60代以上の高齢者の相談件数は5万6,073件にのぼり、全体の4割を占めています。

東京くらしWEB「平成30年度 消費生活相談年報|7.主な相談別特徴」の情報を基に作図

高齢者からの相談は、7割以上が家事従事者か無職です。また、契約金額の平均は146万円と、全相談件数の126万円と比べて高額になっています。(※2)
相談のすべてが詐欺や悪質商法とは限らないものの、消費生活センターへの連絡を余儀なくされるようなトラブルを抱え込む高齢者が多いことは確かです。なかには、詐欺に気づかなかったり、泣き寝入りをして相談に至らなかったりするケースも考えられ、実際の被害状況はこの数字以上に深刻かもしれません。

こうした詐欺や悪質商法に対し、高齢者自身とその家族はあらためて詐欺の手口や被害状況をしっかり把握し、大切なお金をだましとられることのないよう自衛していく必要があります。

高齢者が騙されやすい詐欺の手口とは?

詐欺の手口にはさまざまな種類がありますが、とくに「オレオレ詐欺」「架空請求詐欺」「還付金詐欺」などの詐欺で高齢者の被害が多くなっています。(※1)
それぞれのくわしい手口をみてみましょう。

オレオレ詐欺

子どもや孫になりすまして電話をかけ、「会社のお金を横領した」「交通事故を起こした」などと偽り、お金をだましとる詐欺のことです。
犯人が家に直接現金を受け取りにくるケース、ATMからお金を振り込ませるケース、キャッシュカードを受け取り口座からお金を引き落とすケースなど、やり口はさまざまで、最近では警察官や会社の上司をかたるニセモノの第三者が出てくる「劇場型」も増えています。
70才以上の高齢女性に被害が多く、家族や周囲の人の見守りや詐欺防止のための対策が必須といえるでしょう。

架空請求詐欺

メールやハガキなどで、本人の身に覚えのない料金を請求してくる詐欺のことです。
記載されている連絡先へ電話をすると、プリペイドカード払いやコンビニ払いなど、支払い方法を指示してお金を請求してきます。架空請求のメールやハガキが届いたら無視するのがいちばんよいのですが、差出人が公的機関を連想させるような名称だったり、「訴訟」や「差し押さえ」といった不安をあおる言葉が記載されていたりするため、怖くなって電話をしてしまう人も多いのが実情です。

また、インターネットを閲覧中に、いきなり料金の請求画面が表示される「ワンクリック詐欺」も、こちらからコンタクトをとらない限り個人情報がもれる心配はありません。メールやハガキの場合と同様に無視しましょう。

還付金詐欺

突然電話をかけてきて、医療費の払戻金や年金の還付金があるなどと言い、ATMでお金を振り込ませる詐欺のことです。
「お金を受け取るにはATMでの手続きが必要」といってATMへ誘導し、手続き内容を説明するふりをしながら、犯人の口座へお金を振り込ませる手口です。市役所や年金事務所などの名称で電話をしてくることもあるため、うっかり信じてしまいそうになりますが、払戻金や還付金の受け取りをATMで操作することはありません。
このような電話がかかってきたら、いったん冷静になって電話を切り、自分の方から市役所など本来の窓口へ問い合わせましょう。

その他の詐欺

購入していない商品を勝手に送りつけて代金を請求する「送り付け詐欺」、宝くじに当たったなどと連絡をしてきて受け取りの手数料を請求する「当選商法」、健康食品などの無料体験をよそおって誘い出し、最終的に高額な商品を購入させる「催眠商法」など、詐欺の形態は多岐にわたっています。

詐欺師の集団は、あらゆる手口で現金をだましとろうと狙っています。自分だけは大丈夫と過信せず、「いつか自分も被害者になるかもしれない」と、たえず用心しておきましょう。

高齢者が詐欺にあいやすいのはなぜ?

高齢者が詐欺にだまされてしまうのは、主に以下のような理由が考えられます。

昼間ひとりで在宅していることが多い

家でひとりで過ごす人は、それだけ詐欺グループや悪徳業者と接触するリスクが高まります。相談できる相手や忠告してくれる相手がそばにおらず、自分の判断だけで行動してしまうため、より大きな被害につながる危険をはらんでいます。

孤独感から、親切な態度で接してくる相手を信じやすい

高齢者のなかには、家族と疎遠だったり気軽に話せる仲間や友人がいなかったりして、日々孤独を感じながら生活している人も少なくありません。そのような人にとって、自分のことを心配してくれたり、話にじっくり耳を傾けてくれたりする相手に好感を抱き信用してしまうのはごく自然なことでしょう。相手は、そういった高齢者の心理に実に巧みにつけ込んできます。

詐欺が巧妙になってきている

上で述べた「劇場型詐欺」のように、最近はチームを組んでワナを仕掛けてくる詐欺が横行しています。詐欺の手口はテレビや新聞で見聞きしてよく知っていたはずなのに、実際に詐欺に直面してみたらすっかり信じ込んでしまった......という話はめずらしくありません。
詐欺についての知識はあっても、犯人たちの方が一枚も二枚も上手で、当事者が詐欺を見破るのはそうそう簡単ではない状況が想像できます。

認知機能の低下

認知症の人は、判断力や理解力といった認知機能が低下しているため、悪質な勧誘などに直面してもそれが詐欺だと見抜くことが難しく、被害にあいやすいといえます。また、認知症を発症していない人でも、加齢とともに認知機能は徐々に衰えてくるため、若いころよりもだまされるリスクが高まります。

振り込め詐欺などがニュースで話題になると、「なぜあんなに簡単に信じてしまうのだろう」「怪しいと思わなかったのだろうか」と不思議に思う人は少なくないでしょう。ですが、詐欺の手口が巧妙になっていることに加え、このような判断能力の衰えが詐欺被害をより深刻にしていると考えられます。

高齢者を詐欺の被害から守る方法

高齢者の詐欺被害を防ぐために、ぜひ日ごろから意識して取り組みたいポイントをお話しします。

普段から家族で詐欺について話をする

今どんな詐欺が増えているのか、それはどんな手口なのかといったことを、家族間で普段からよく話題に出すことで、本人への注意喚起になります。
また、よくいわれる「家族で合言葉を決めておく」も、有効な対策のひとつです。ただ、家族の名前や誕生日などは知られている可能性があるため、合言葉は家族にしかわからないような言葉にしましょう。
本人が認知症の場合は、電話の脇に合言葉を書いたメモを貼っておくなどして、合言葉を忘れないような工夫も大切です。

周囲の人間がこまめに様子を確認する

「最近元気がない」「お金に困っている様子だ」「見知らぬ人がよく出入りしている」等、普段と異なる様子が見られたら、なにかトラブルに巻き込まれていることが考えられます。家族、ケアマネジャー、ヘルパーなど、日ごろから家に出入りする人がこまめに様子を確認し、何か不審な点を見つけたら、本人にくわしく話を聞いたり消費生活センターへ連絡したりして早めに対策をとりましょう。

つねに留守番電話にしておく

電話による詐欺はいまだ多く、「電話に直接出ない」というのを徹底するだけでもある程度の詐欺防止になります。家の電話はつねに留守番電話にしておき、家族や知り合いからの電話にはあとで自分からかけ直すようにしましょう。また、電話を着信すると警告メッセージが流れたり、通話を録音したり、着信拒否をしたりできる「振り込め詐欺防止装置」を利用するのもおすすめです。

ATMの利用限度額は低めに設定する

最近は、ATMの1日の利用限度額を自分で決められる金融機関が多いので、あらかじめ限度額を低く設定しておくのがおすすめです。万が一、詐欺に遭ってATMからお金を振り込むような事態になっても、ATMの利用限度額を超えてお金をとられる心配はありません。1日ごと、1カ月ごと、それぞれ限度額を設定できる銀行もあるので、ご利用の金融機関にご確認ください。

まず「相談窓口」に連絡する

お金を要求するような連絡、高額商品の勧誘などがあったら、行動を起こす前に「消費者ホットライン」や「警察相談専用電話」へ電話をしましょう。

  • 消費者ホットライン......118
  • 警察相談専用電話......#9110

なお、政府広報オンラインから、詐欺対策として上記の連絡先が記載された「防サギシール」、詐欺にあわないためのヒントがまとめられた「防サギリーフレット」などを無料でダウンロードできます。これらを目立つ場所に貼ったり本人に渡したりして、「何かあったらまず相談」を心がけましょう。

政府広報オンライン「防サギグッズ

詐欺にあったときはどうする?

詐欺にあったときはすぐに警察へ通報し、指示に従いましょう。
振り込め詐欺の場合は、「振り込め詐欺救済法」により、お金が戻ってくるケースがあります。対象になる詐欺は、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺のほか、ヤミ金融や未公開株式購入に係る詐欺などです。(※3)
気づいた時点ですぐに「振込先の金融機関」へ連絡しましょう。

また、訪問販売、電話勧誘販売、各種契約などは、クーリングオフ制度を利用して契約を解除することができます。ただし、契約書面を受け取った日から8日以内に申請しないと適用されないため、期限に注意しましょう。

まとめ

高齢者の詐欺被害を防ぐには、本人の注意だけでなく、周囲の働きかけが欠かせません。また、本人が行動を起こす前に家族や専用窓口へすぐに相談できるような環境を整えておくことも重要です。
詐欺によってこれまでコツコツ貯めてきた老後資金を不当に奪われないために、しっかり対策をしていきましょう。

※参考資料

※1 警視庁「特殊詐欺認知・検挙状況等について(平成31年1月~令和元年11月)」
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei.xlsx

※2 東京くらしWEB「平成30年度 消費生活相談年報」7.主な相談別特徴
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/sodan/tokei/documents/h30_1_7.pdf

※3 金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」
https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/furikome/index.html

監修

渡辺 有美

介護やマネー関連が専門のフリーライター。

独身時代は都市銀行に勤務し、その後、結婚と子育てを経て介護の道へ。介護福祉士としてデイサービス・特養・訪問介護の現場で10年以上働いた経験を活かし、高齢者の方々の役に立つ記事を多数執筆しています。