両親が要介護状態にならないための工夫

認知症予防に役立つ趣味とは? 60代両親におすすめの趣味と勧め方

夫婦・家族

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趣味を楽しむことで認知機能低下のリスクを下げるというデータがあり、趣味による認知症予防に期待が高まっています。まずは、両親の性格や好みを考えて趣味をピックアップしましょう。

この記事の監修

浅野すずか

看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。

仕事を引退した両親が無気力になった。最近、両親の物忘れが増えた気がする。
このようなことがあると、近く認知症になるのではないかと不安になるのではないでしょうか。
ちまたには認知症予防に効果があるといわれているものがさまざまありますが、実際に効果はあるのかどうか、よくわからないということもあるかと思います。

そこで今回は、認知症予防について「趣味」の観点からまとめました。
両親へ趣味を勧めたいけれど、どのように伝えたらよいのか分からないという方は、ぜひ参考にしてください。

認知症の概要

厚生労働省によると、認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」とされています。(※1)
加齢や脳卒中などにより、脳の細胞が壊れることで発症するといわれていますが、はっきりとした原因は分かっていません。異常なタンパク質が脳にたまることも原因のひとつとされています。

患者数は、以下の図の通り年々増加しています。

内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版)」を基に作図

認知症の主な症状ですが、主として以下のようなものが挙げられます。

  • 記憶障害
  • 見当識障害(日付や季節などが分からなくなる)
  • 実行機能障害(段取りよく物事を進められない)

認知症は発症すると治りませんが、薬により進行を遅らせたり維持したりすることはできます。そのため、いかに予防するかが大切です。

なぜ趣味で認知症を予防できるの?

「趣味を楽しんでハツラツとしている人は認知症になりにくい」とよく耳にしますが、これは、本当なのでしょうか?

実は、趣味を楽しむことで認知機能低下のリスクを下げるというデータがあり、趣味による認知症予防に期待が高まっています。厚生労働省もまた、認知症予防や支援のひとつの方法として、個人的な趣味活動や生涯教育の一環としての活動を推進しています(※1)。

なお、認知症予防には、「生理的アプローチ」と「認知的アプローチ」があるとされています。

「生理的アプローチ」とは、脳そのものをよい状態に保つことです。たとえば、有酸素運動は認知症と関係の深い部位の血流や代謝を良くすることが分かっています。

「認知的アプローチ」とは、脳の認知機能を使って機能の改善や維持を図ることです。たとえば、料理は作りたいメニューを決めてから買い物に行き、調理する順番を考えながら行うため、認知機能の「計画力」を重点的に鍛えることになります。

この2つのアプローチを含む趣味を取り入れることで、認知症予防が期待できます。

また、人との関わりも認知機能の維持に有効です。ボランティアグループ等への参加割合が高い地域ほど、認知症リスクをもつ後期高齢者の割合が少ないというデータがあります。(※2)

別の調査では、夫婦同居で子どもと週 1 回以上会う、友人または親族と週 1 回以上会う人に比べて、独り暮らしで子どもと週 1 回未満しか会わない、友人または親族と週 1 回未満しか会わない人は、認知症を発症する危険度が 8 倍も高いことが分かっています。

厚生労働省 「認知症予防・支援マニュアル(改訂版)p38

これらの調査結果から、人と関わり多くの刺激を受けることで脳が活性化し、認知症が予防できると考えられます。
ラットを使った研究でも、刺激の多い環境で飼ったラットは、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイド蛋白の沈着が少ないことや、神経の情報伝達効率が高まることが分かっています。(※1)

認知症予防におすすめの趣味

では、これらのポイントをふまえて、具体的な趣味を6つご紹介します。

運動

さきほどもふれましたが、有酸素運動は脳の血流を増加させます。テニスやゴルフ、水泳など、過去にたしなんでいたスポーツを再開することは認知症予防におすすめです。これまで運動習慣がなかった人は、散歩も良いでしょう。お金がかからず、家の近くでもできるため、気軽に取り入れやすいでしょう。

運動は脳の血流増加だけでなく、高血圧や高脂血症のリスクを減らします。その結果、脳血管性認知症の予防にもつながります。

ウォーキング以上の強度の運動を週3回以上すると、まったく運動しない人よりアルツハイマー型認知症の危険度が半分になるというデータがあります。(※1)

歌詞を思い出しながら歌う、音程を意識する、リズムを取ることは、脳の活性化につながります。また、ストレスの発散にもつながることから高血圧との関係があるとされる脳血管性認知症の予防に役立ちます。さらにチャレンジしたい場合は、楽器の演奏や簡単なダンスを取り入れることも良いでしょう。

日記を書く

自分の体験を日記に残すことは、認知機能のなかでもエピソード記憶の維持に効果的です。
特に、2~3日前のことを思い出しながら日記をつけると鍛えられます。たくさん書くと負担になるので、数行ずつでも始めてみましょう。より簡単にしたい場合は、前日に食べたものをメモするのもおすすめです。

旅行

旅行の計画を立てることは、認知機能の計画力が鍛えられます。
旅行先では新しいものを目にしたり現地の人と会話したりと多くの情報に触れるので、脳の血流が活性化します。さらに歩数が増えることで、運動にもなります。

知的なゲーム

囲碁や将棋といった戦略をたてて勝利を目指すゲームは、思考力・計画力が必要です。
相手がいるので、コミュニケーションをとりながら楽しめます。
日本健康麻将協会では、認知症予防に「健康麻将」を推進しています。「賭けない」「飲まない」「吸わない」をルールにしており、脳の活性化や引きこもり防止に人気です。

「通いの場」への参加

厚生労働省は、2019年にまとめた「認知症施策推進大綱」のなかで、認知症予防の一環として住民主体で行う「通いの場」を推進しています。喫茶店での見守りや体操教室の開催など、内容はさまざまですので、近くで開催されていないか探してみましょう。
運動不足の解消や脳の活性化だけでなく、人との関わりが持てるのが魅力です。

趣味を勧めるうえで気を付けるポイント

健康なうちから取り組むことを勧める

認知症は急に発症するのではなく、いくつかの要因が時間をかけて積み重なることで発症します。高齢になるほど発症率が高まるので、「まだ大丈夫」と油断せずに少しずつ取り組むことを勧めましょう。

両親の性格や好みを考えて勧める

認知症予防に役立つ趣味はたくさんあります。まずは、両親の性格や好みを考えて趣味をピックアップしましょう。たとえば、社交的な性格なら「通い場」への参加、気軽に始めたいならウォーキングのように選ぶのがおすすめです。
また、これまで仕事が忙しく「時間ができたらやろう」と思っていた趣味があるなら、それにチャレンジすることを勧めてみましょう。

無理強いをしない

趣味は、楽しんでやるからこそ趣味になるので、無理に押し付けないことが大切です。いくら認知症予防のためとはいえ、本人が苦痛に感じれば意味がありません。
また、始めてみて合わないと感じたり飽きたりしたら、趣味を変えるのもひとつの方法です。本人が自分に合ったものを見つけるまで、さまざまなものを取り入れてみましょう。

まとめ

趣味で認知症予防が期待できることは、さまざまな研究や調査からも分かっています。しかし、「これをやれば認知症が防げる」と断言できる趣味はありません。楽しめるもの、負担にならないものを選ぶことが大切です。

両親の生きがいになり、豊かな老後生活につながるような趣味を提案しましょう。

【参考資料】

(※1) 厚生労働省 「みんなのメンタルヘルス 認知症」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

(※2) 厚生労働省 「"通い場"の介護予防効果 検証はどこまで進んだか」p3
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000529365.pdf