【特集】50代から気をつける病気。予防・対策

50代を過ぎたらフレイル対策を! 寝たきり・介護予防のポイント

夫婦のこれから

今回は、近年よく話題に上る「フレイル」をテーマに、シニア世代の健康維持・寝たきり予防策についてお話します。

【ライタープロフィール】遠藤愛

「いつまでも健康で若々しく、豊かな人生を送りたい」。
年齢を重ねるごとに健康のありがたみを実感し、健康こそが何ものにも代えがたい貴重な財産だと気づく方は多いのではないでしょうか。それと同時に、寝たきりや介護に対する不安を感じる方もシニア世代には多く見られます。

今回は、近年よく話題に上る「フレイル」をテーマに、シニア世代の健康維持・寝たきり予防策についてお話します。

なぜフレイル対策が必要なのか?

フレイルとは、「加齢にともなって心身が衰え、要介護になる可能性が高い状態」を指す言葉です。健康で自立した状態と要介護状態の狭間と言い換えることもできます。

また、フレイルは身体機能の衰えだけでなく、社会的問題(引きこもり・他者交流の減少による孤独など)、心理的問題(認知機能の低下・抑うつなど)が複雑に絡み合っているのが特徴で、放置すれば「寝たきり」に直結するリスクをはらんでいます。

日本人の平均寿命が年々延び続ける一方で、健康寿命は欧米各国に比べると短い傾向にあり、多くの高齢者が寿命を迎えるまでの10年前後を要介護状態で過ごしているのが現状です。

内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体版)図1-2-2-4」のデータを基に作図

「最期までなるべく他人の手を借りず、自分の力で生活したい」と願う方は多いと思いますが、実際は晩年になるほど要介護の割合が高くなり、後期高齢者(75歳以上)の要介護者の割合は前期高齢者(65〜74歳)のおよそ8倍にまで上昇します。

内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体版)表1-2-2-9 要介護認定の状況」を基に作図

人間の筋力は30代をピークに徐々に低下するといわれており、加齢による筋力の低下、体力の低下は避けられません。そのため、年齢を重ねるごとに疲れを感じやすくなり、ちょっとした動作も億劫に感じます。そして、この「疲れやすい」「動くのが億劫」という状態こそ、高齢者を家に引きこもらせる要因のひとつです。

筋力や体力の低下によって外出や運動の機会が減ると活動量が減り、多くのカロリーを必要としなくなるため、食事量の減少が栄養不足を引き起こし、体重の減少にともなう、さらなる体力や筋力の低下を招く、というフレイルサイクルに陥ります。同時に「他者との交流が減る」「抑うつ」「認知機能低下」といった要素も絡み、さまざまな健康問題が発生します。

いったんフレイルサイクルに入ってしまうと抜け出すのは容易ではなく、老後の生活を左右するといっても過言ではありません。健康で豊かな老後を手に入れるためには、50代を過ぎた頃から徐々にフレイルを意識するとともに、フレイル(もしくはフレイル予備群)の予兆にいち早く気づき、適切な対策を取ることが重要です。

もしかして寝たきり予備群? 今すぐできるフレイルチェック

フレイルは、早い段階で気づくこと、適切に対処することが何よりも重要ですが、すでにフレイル状態だからといって気を落としたり、諦めたりする必要はありません。「フレイルの進行を食い止める」「フレイルを改善する」ことでフレイルサイクルを断ち切り、より良い健康状態へ回復することを目指しましょう。

フレイルをチェックすることは簡単です。ここでは、老年医学の研究者であるアメリカのリンダ・フリード氏が提唱する基準を使用します。今すぐご自身の状態を確認してみましょう。

<フレイルの評価基準>
  • 体重の減少
  • 疲れやすい
  • 歩行速度の低下
  • 握力の低下
  • 活動量の低下

5項目のうち、3つ以上に該当する方は「フレイル」、ひとつでも該当する方は「フレイル予備群」となります。

厚生労働省が作成した、より詳細なフレイルチェックリストもあります。ぜひ参考になさってください。

厚生労働省作成 基本チェックリスト

今日からできるフレイル予防

ここからは、具体的なフレイル対策をご紹介します。フレイル対策は「治療」というよりも、生活の中で取り組むべき「習慣」「ケア」に近いイメージです。
ポイントは、次の4つです。

1.からだをつくる基礎となる「食事」

フレイルの原因のひとつに、栄養不足と貧血があります。私たちは、口からとる栄養によって生命や身体の機能を維持していますが、活動量の低下や味覚の変化によって食事量が減り、十分な栄養をとれていない高齢者は少なくありません。

筋肉や血液をつくるのに必要な「タンパク質」、活動のエネルギー源となる「炭水化物」、ホルモンや細胞膜の原料となる「脂質」の3大栄養素をはじめ、これらの栄養素がうまく活用されるように手助けする「ビタミン」「ミネラル」をバランスよくとることが大切です。なかでもタンパク質は、フレイル予防に特に欠かせない栄養素です。後ほどお話しする「サルコペニア(筋肉量の減少)」を予防するためにも、十分なタンパク質の摂取が推奨されています。肉・魚・卵・豆腐には多くのタンパク質が含まれますので、これらの食材を毎日の食事で積極的にとるようにしましょう。ただし、病院にかかっている方は、主治医や管理栄養士の指示にしたがうようにしてください。

2.筋力を鍛える「運動」

運動は、心肺機能の向上や筋力強化といった身体機能へのメリットだけでなく、食欲増進や気分転換など心理面にも良い影響を与えます。高齢であっても、体調やトレーニングの方法を考慮し、安全に筋力トレーニングを行うことで筋肉や骨を丈夫にすることが可能です。

フレイルと密接な関係にある「サルコペニア」は、高齢になるにともない、筋肉量が減少していく現象です。下肢の筋力が低下し、歩くスピードが遅くなる、活動量が減るなど、引きこもりや食事量の減少につながります。さらに、サルコペニアのある高齢者は、そうでない高齢者に比べて転倒リスクが高いこともわかっています。

下肢の筋力を鍛えるには、かかとの上げ下げ(つま先立ち)運動や、スクワットが効果的です。運動の強度や回数は「ちょっとキツイ」くらいが効果的ですが、無理をしすぎるとケガにつながるため注意しましょう。持病のある方は事前に主治医に相談し、ご自身の体調に合った運動を取り入れてください。

3.しっかり食べるための「お口のケア」

口内の清潔を保つことは、唾液の分泌を促し、虫歯や歯周病を防ぐために重要です。口の中の潤いを保ち、しっかりとかめる丈夫な歯を維持しましょう。
入れ歯を使用されている方も、入れ歯の清潔を保つとともに、残っている歯や歯ぐきのケアを十分に行うことが大切です。
虫歯がなくても数カ月に1度の歯科検診を受けることで、トラブルの早期発見につながります。

4.生きる意欲を保つための「閉じこもり予防」

体力や健康面に不安があると、外出が不安になり家に閉じこもりがちになります。閉じこもりは身体機能が低下するだけでなく、生きる意欲や物事への興味を失う、曜日や時間の感覚が曖昧になるなど、抑うつや認知機能の低下につながります。

閉じこもりを予防するためには、食事や運動で身体をメンテナンスするのはもちろん、「社会とのつながり」を持ち続けることが重要です。親しい友人を持つ、趣味の仲間をつくる、地域の社会活動に参加するなど、人や社会とのつながりを大切にしましょう。

フレイルは予防・改善できる

健康で豊かな老後を送るためには、「いかに健康寿命を延ばすか」がカギとなります。加齢による体力・気力の衰えは避けられず、若い頃の体力を維持し続けるのは困難ですが、老化のスピードを緩やかにすることは可能です。また、すでにフレイル状態であったとしても、早期発見と適切な対応によってフレイルからの回復が期待できます。

50代を過ぎたら、からだをつくる基礎となる「食事」、筋力・体力を鍛える「運動」、しっかり食べるための「お口のケア」、生きる意欲を保つための「閉じこもり予防」を意識して、豊かな老後を迎える準備を始めましょう。

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。