ひとり暮らしの親に必要な支援は? 離れている子どもは何ができるのか

夫婦のこれから

早い段階から親がその地域で「必要な支援を受けながら自立した生活を送る」ことを意識する必要があります。

【監修】清水 沙矢香

高齢の親がひとり暮らしをしている場合には、何かと気がかりなこともあるでしょう。特に離れて暮らしている場合、直接できることは限られてしまいます。
そこで今回は、ひとり暮らしの高齢者が求めていること、そのために何ができるのかを、一緒に考えていきたいと思います。

ひとり暮らしの高齢者の心配ごと

内閣府がひとり暮らしの高齢者(65歳以上)を対象に行ったアンケート調査によると、高齢者が「日常生活の不安(複数回答)」の上位に挙げているのは、以下の事柄です。

内閣府「平成27年版高齢社会白書 日常生活の不安」を基に作図

最も多いのはやはり、「健康や病気のこと」(58.9%)。次いで「寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること」(42.6%)が挙がるなど、健康や経済面での不安が多く見られます。
そして注目すべきは、「自然災害(地震・洪水など)」を不安と感じる人が3割にのぼっていることです。毎年のように、地震や豪雨、台風といった大規模な災害が相次いでいることもあり、災害が起きたときに自分で対応できるのか、という不安は高まっていると考えられます。

このほか、「新しい商品やサービスの活用方法が分からなくなること」「インターネット等の新しい情報入手方法が増え、情報収集が困難になること」を不安とする声もあります。テクノロジーの進化によって、わたしたちの生活は全般的に便利になりましたが、高齢者が必ずしもこれらを享受しているわけではないことを示唆しています。高齢化が進むにつれて、今後も不安材料として挙げる人が増えていく可能性は、大いにあるでしょう。

そして、高齢になると、「ちょっとしたこと」に不便を感じるようになります。外出がおっくうになったり、家事の中でも高い場所の作業や庭作業などが大きな負担になったりします。
このようなとき、頼りたいと思う相手は、やはり自分の子どもです。しかし、ささいな用事なら「頼らない」という選択をする人も多い傾向が見られます。下の図をご覧ください。

内閣府「平成27年版高齢社会白書 図2 ちょっとした用事を頼む人」を基に作図

子どもとしても、近くに住んでいれば、こまめな手助けをしやすいことでしょう。しかし、遠方に暮らす場合は、こうした困りごと全てに日常的に対応できなくなってしまいます。 この場合、どのような支援ができるでしょうか。

介護が必要な場合とそうでない場合

対応の仕方は、介護が必要かどうかで考えることがひとつの目安になります。
介護や支援が必要になった場合にどうしたいのか、具体的な考えを持っている人は多いと言えそうです。

内閣府「平成27年版高齢社会白書 図3 介護や支援が必要になった場合に希望する介護の場所」を基に作図

親としては、なるべく自宅で暮らし続けたいものの排泄や入浴に介助が必要な段階になってくると、やはり介護施設への入所を希望する割合が増えていきます。

このとき、子どもとしても考慮しなければならない点があります。
近隣に住んでいれば、親が施設に入所していても足を運べばコミュニケーションを取ることができます。しかし、遠方で暮らす場合は、なかなか顔を見せることができず、親としては孤独を感じることもあるでしょう。

このように、施設入所後、なかなか会いに行くことができない場合は、要介護になる前から地域のコミュニティに参加しているかを確認し、人付き合いがない場合は、趣味などのつながりで人間関係を持つように勧めておくのが良いでしょう。

親の"居場所"を、先回りで確認する、あるいは居場所を作る手助けをすることです。同時に、親本人だけでなく、関係者と子どもが直接連絡を取れるようにしておくのも良いでしょう。

実際、現在の楽しみとして、「仲間と集まったり、おしゃべりしたりすること、親しい友人、同じ趣味の人との交際」を挙げる高齢者は、半数以上に上っています。

内閣府「平成27年版高齢社会白書 現在の楽しみ」を基に作図

現在住んでいる地域の中で「仲間づくり」を心がけ、日常的に人と会話する習慣は大切です。日頃から社交性を失わないようにすることが、ひとつの重要なポイントです。

「先回りの支援」の有効性

こうした他人とのコミュニケーションは、いざ施設に入ってから身につけることは難しい場合があります。できるなら子どもや親戚に頼りたい、という気持ちがベースにあるからです。施設への入所は、高齢者にとっては、ある意味で「これまでの生活環境からの突然の断絶」とも言えます。
ここでもう一度自分の居心地の良いコミュニティを形成できるかどうかは、本人の社交性による部分が大きくなるでしょう。高齢になると特に、「新しい人間関係の構築」は難しくなっていきます。そのため、親子ともに「信頼できる」相手を早めに見つけておくことが必要です。先述のとおり、いざ自分の身の回りのことができなくなったら施設に入所する、と決めている高齢者は多い傾向にあります。

しかし、人によってはそう簡単な決断ではなく、むしろ「家族に負担をかけたくない」という気持ちから、やむを得ず入所を考える、という人も少なくありません。入所後の不安や孤独を軽いものにするためにも、介護施設を"知っている人がいる場所"と事前に認識してもらうのも良いでしょう。たとえば、本人が必要性を訴える前から施設のデイケアなどの利用を始め、必要になれば同じ施設に入所する、という一連の流れを作ることも考えておきたいところです。

介護保険の利用にこだわらず、地元の福祉公社を利用するのもひとつです。
各自治体から補助を受けて運営されている福祉公社は、その多くは65歳以上であれば誰でも利用が可能で、具体的には同一の担当者が定期的に訪問し、家事の手伝いなどのサービスを安い料金で提供しています。

介護保険の適用対象の施設となるとハードルが高くなってしまいますが、早い段階から「親戚以外の人の手助けを得る」「親戚以外の人との会話を楽しむ」習慣がつけば、心理的負担を軽減できる可能性があります。また、健康なうちにこうした場所でのボランティア活動を経験することで、お世話になりやすい気持ちが生まれることも期待できます。

「介護」だけでない「自立」の支援

高齢になると、人間関係など生活環境が急激に変わることは大きな心理的負担になります。また、家族としてもコンタクトを取らなければならない相手が事あるごとに変化してしまうと、信頼関係を築きにくくなりがちです。そのため、早い段階から地域の福祉団体などと関わりを持つようアドバイスをするとともに、家族もまた早い段階から担当者と関係を持つことは有効です。災害時についても、普段から地域の一員として関わりを持つことで孤立を防ぐこともできるでしょう。

加齢とともに、自分で周辺に何があるのかを調べるのも、おっくうになっていきます。普段から両親にどのような人付き合いがあるか、また、その地域にはどのようなコミュニティがあるのかを、家族が先回りして調べておき、いろいろな形で提案できる材料を揃えておきましょう。

早い段階から親がその地域で、「必要な支援を受けながら自立した生活を送る」ことを意識する必要があります。

監修

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、大手放送局に主に記者として勤務。2017年退職後、Webライターとして、経済を中心とした取材経験や各種統計の分析を元に、お金やライフスタイルなどについて関連企業に寄稿。
趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。