親のトラブル:高齢者 恋愛

どう考える? 高齢者向け施設で暮らすお義父さんの恋愛―家族への影響と選択

夫婦のこれから

家族としてお義父さんの恋愛や再婚をどう捉え、どう関わっていくのか、あるいは関わらないでおくのか判断をしましょう

【監修】横内美保子

恋愛は本来、極めて個人的なものです。
誰と誰が恋に落ちようと、それは純粋にその2人の問題。
恋愛に口を差し挟むのは野暮というものでしょう。

でも、何ごとも一般論として考えるのと、身内の立場でその問題に対峙するのとでは様相が違ってきます。たとえば、高齢者向け施設で暮らすお義父さんに恋人ができたら?

「いいんじゃないの? 人生の終盤で恋愛ができるなんて、祝福モノだわ」
「あら、そうかしら。私はなんか嫌だなあ」
「だけど、それはお義父さんの問題でしょ? お義父さんから相談があるまでは、静観すべきよ」
「いやいや、お義父さんひとりの問題とも言えないわよ。もし、お義父さんが再婚したらどうするの? 身内として、いろいろ面倒なことになるんじゃないかしら」

この問題について女同士でおしゃべりしたら、こんな感じになるでしょうか。何が正しくて何が間違っているといえるほど単純な問題ではなさそうですね。

シニア世代の恋愛・結婚とその効用

人生相談は、時代を映す鏡です。新聞の人生相談への投稿には、最近、高齢者の恋愛相談が増加しているという話があります。まず、シニアの恋愛動向と結婚に関する意識をみてみましょう。

シニアの恋愛動向と結婚に関する意識

以下は、60~69才の独身者のうち、現在、「恋愛をしている」と答えた人の割合を表しています。60代のうち、「恋愛をしている」人は、おおよそ5人にひとりであることがわかります。

パートナーエージェント「QOM総研 シニアの4人に1人が『恋愛中』」を基に作図

続いて、「恋愛の先に結婚はある」と考えている人の割合を見てみましょう。こちらは、50~69才の方を対象に調査した結果です。

パートナーエージェント「QOM総研 シニアの4人に1人が『恋愛中』」を基に作図

この図をみると、約3人にひとりが恋愛と結婚を結び付けて考えていることがわかります。この人たちが恋愛をしたら、結婚に移行する可能性が高いといえるでしょう。

現在は再婚に対しても積極的な意見が増えています。シニア世代に限らず、「充実した人生のためには何度結婚してもいいと思う」という人の割合が、2割以上に上るという調査結果もあります。

これらを考え合わせると、現在は、お義父さんが恋愛しても、またその先に再婚を見据えていたとしても、それは別段、特別なこととはいえない時代であることがわかります。

恋愛・結婚の効用:快楽と長生き

では、恋愛や結婚にはどのような効用があるのでしょうか。
恋愛感情やときめきを感じる時、脳内には「快楽物質」と呼ばれるドーパミン(Dopamine)が分泌されている。そんな話を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。また、恋人の顔をみるとき、脳の中の判断能力と社会性を司っている部分(全頭連合野)の活動は低下し、客観的・社会的な判断は飛んでしまうという実験結果もあります。

これらから、恋愛中は快楽を感じ、恋人に対する客観的な判断能力を失っている状態だといえるでしょう。これは、誰でも思い当たることではないでしょうか。

次に、アメリカで行われた「Longevity Project(長寿研究)」の研究結果を紹介します。
この研究は、1500人以上の被験者の10才~死を迎えるまでの約80年間にわたって行われた追跡調査です。この結果によると、男性は既婚者のほうが長生き率が高く、離婚して独りになった男性や妻に先立たれてしまった男性は、早死にしてしまう傾向にあることがわかりました。

以上から、お義父さんの恋愛は本来なら祝福すべきことでしょう。でも、現実はそう単純なものはない、という考える人がいても、おかしくはありません。人はそれぞれの事情の中で生きているのですから。

お義父さんの恋愛と再婚への影響

これまでみてきたように、現在はシニア世代の恋愛や結婚は、決して特別なものではなくなってきています。ここからは、お義父さんの恋愛・再婚に関連して、家族として判断が必要なことを現実的に考えていきましょう。ただ、お義父さんの認知能力や人間性、家族のありようや家族間の関係、価値観はさまざまですから、ここではどうすべきかについてはあまり立ち入らず、どのような問題が起こりうるのかに注目して、要点を整理していきたいと思います。

お義父さんが恋愛状態にある場合

まず、お義父さんが恋愛中の場合を考えてみましょう。この問題は以下の4点に集約されるのではないでしょうか。

  1. お義父さんの恋愛相手はどのような人か
    ⇒ お義父さんの恋愛相手とコンタクトをとる? コンタクトをとる場合には、その人とどのような関係でいる?
  2. お義父さんの恋愛相手には家族がいるかどうか
    ⇒ 家族がいる場合には、その人たちとコンタクトをとる? 家族とコンタクトをとる場合には、その人たちとどのような関係でいる?
  3. お義父さんは恋愛相手と結婚したいと考えているかどうか
    ⇒ お義父さんの意向を確かめる? お義父さんの返答に対してどのような態度を示す?
  4. お義父さんの恋愛に対してどのような態度をとるか
    ⇒ 見守る? 無視する? 介入する?

1と2に関しては、まず情報を集めるかどうか、集めるとしたら誰がどうやって集めるのかという判断が必要です。また、情報を集めた場合、その信頼性を吟味したうえで家族としてどのような態度や行動をとるかの判断が必要になりますね。

3は、お義父さんの意向を確かめるかどうか、確かめるとしたら誰がどのタイミングで確かめるのか、確かめた場合はその返答に対し、家族としてどのような態度を示すのか、を考えておくべきでしょう。

最後に、4は価値観によって最も判断が分かれるところですね。しかも、これはお義父さんと他の家族との今後の関係を決定するかもしれない大切な選択です。そもそも恋愛は当人同士の問題ですから、介入が許されるとしたら、それはお義父さんのためにやむを得ず、という場合に限られるのではないでしょうか。ただ、そのような場合であっても、先ほどお話ししたように恋愛中は客観的・社会的な判断を失っている状態であることを忘れてはなりません。仲を裂こうとして介入する場合には、それが逆効果になる恐れもあります。

お義父さんの再婚

次に、お義父さんが恋愛相手と再婚に踏み切る場合について考えていきましょう。「家族としての利害」に注目したら、これは重大な問題ですね。

まず、お義父さんが再婚する場合の家族構成には以下のようなものが考えられます。

  1. 相手の女性は初婚、義父は再婚で子どもがいる
  2. 義父も相手も再婚、義父のみに子どもがいる
  3. 義父も相手も再婚、それぞれに子どもがいる
  4. 上記のすべての場合において、新しい子どもが生まれる(生まれている)

こうした家族構成に付随して、1~3の場合、子どもはその結婚に賛成なのか、反対なのかで話の方向性が変わってきます。

また、3の場合、お義父さんとお相手の女性は、前の結婚相手と離婚したのか、死別したのかという問題もあります。お相手が離婚していたら、お相手のお子さんと実の父親との関係も考慮する必要があります。また、死別の場合には、将来、どのお墓に入るのか(入れるのか)という問題も生じるでしょう。

さらには、お義父さんがお相手のお子さんと養子縁組をするかどうかという問題もあります。日本は成人養子を認めているため、再婚相手の子どもが何才であっても養子縁組が可能です。もしも養子縁組をすれば、法律上の親子となりますから扶養や相続において義務と権利が生じます。

お義父さんと再婚相手の介護には誰があたるのかも考えておく必要がありますね。また、非常に現実的な問題ですが、再婚後、お義父さんとそのお相手のどちらを先に見送ることになるのか、それぞれの場合、どのような問題が生じるのかということも考えざるをえません。もし再婚したとしても、果たして添い遂げることになるのかどうかも流動的です。

折しも2019年1月から相続に関する新しい法律が順次、施行されています。こうした複雑で切実な問題に関しては、法律の専門家の力を借り、お義父さんの再婚をめぐる法律的な問題を洗い出してみるのもひとつの方法でしょう。そして、当事者であるお義父さんを交えて、家族間でしっかりと話し合い、できたら再婚に先だって結論を出しておくことが、その後のトラブル回避につながるのではないでしょうか。

ただし、再婚にしろ財産管理にしろ、決定権はあくまでお義父さん自身にあり、その問題に家族がどのように関わっていくかは非常にデリケートな問題です。もしかしたら、こうした話し合い自体がトラブルに発展する可能性もあることを念頭に置いておいた方がよさそうです。

そう考えると、利害ばかりに目を向けるのではなく、家族としてお義父さんの恋愛や再婚をどう捉え、どう関わっていくのか、あるいは関わらないでおくのか、それらの判断をするところから始めた方がいいかもしれませんね。

さまざまな価値観のはざまで

ここでは、お義父さんの恋愛や再婚を家族としてどう捉えるのか、また、家族としてどのように関わっていくのかを判断する際の視点や価値観について考えてみたいと思います。

日曜日の午後に

お義父さんの結婚。これは、どの家庭に起こってもおかしくない状況です。うちの家庭に同じことが起こったら、子どもたちはどうするだろうか。そんなことがふと頭に浮かびました。

まずは息子の反応です。
私「ねえ、あなたなら、どうする?」
息子「オヤジが恋愛? それって、究極の'タラ・レバ'じゃん」
私「でも、わかんないわよ、人生、何が起こるか」
息子「ゼッタイに起こってほしくないことのひとつだね、それは」

だったら娘はどうかしら? 気を取り直して話を振ってみます。
私「ねえ、あなたなら、どうする?」
娘「いいんじゃないの、それでパパが幸せなら。どうもしないで見守るわ」
私「結婚するって言い出しても?」
娘「う~ん、ちょっと複雑だけど、お相手がいい方だったら、祝福するしかないんじゃないの?」
私「もし、お義父さんだったら?」
娘「お義父さん? だったら、パパよりずっと冷静になれるわ。これからもう一花咲かせるなんて、いい人生じゃない。お義父さんが幸せになれるんなら、私も嬉しいわ」
私「財産のこととか、平気なの?」
娘「人間、自分の稼ぎでやっていくのが基本だって、ママが教えてくれたんだよ!」

「家族」とは?

そもそも家族とはどのようなものなのでしょうか。残念ながら、その答えは用意されていません。
近年、家族が変化し多様化した結果、学術的にも「家族」の定義はもはや存在し得ない状況なのです。したがって、主観的に「これが家族だ」と思えば、それが家族だということになります。

そのうえで、もう一度、考えてみましょう。家族とは何なのでしょうか。そして、お義父さんの人生とは、あなたにとってどのような意味をもつものなのでしょうか。まず、そのことから考えてみるのは、遠回りのようでいて、一番確かな答えにたどり着ける方法かもしれません。

監修

横内美保子

博士(文学)。元大学教授。

この30年間、日本語教育や日本語教師養成、地域の日本語学習支援に取り組んできました。「日本語ゼロ初級の外国人と日本人が楽しくおしゃべりするための本」の開発にも携わりました。パートナーとの関係は「山あり谷あり」です。