介護疲れによる"共倒れ"を避けるには? ひとりで背負わず専門家へ相談しよう!

夫婦のこれから

介護の悩みや問題を自分ひとりで抱え込まないことが大切です。

【監修】渡辺 有美

家族を介護していると、疲れやストレスが限界に達し、精神的・肉体的に追い詰められてしまう人も少なくありません。大切な家族とはいえ、毎日休みなく続く介護を徐々に負担と感じはじめ、介護者自身が「介護うつ」などの深刻な状況に陥る可能性もあります。
こうしたトラブルを防ぐには、介護の悩みや問題を自分ひとりで抱え込まないことが大切です。

「そうはいっても、具体的にどうすればいいのかわからない......」という方に向けて、この記事では、介護疲れによる"共倒れ"を防ぐための具体的な方法をご紹介します。
今まさに介護疲れの状態にある人、これから迎える親の介護に不安を感じている人は、ぜひ参考にしてください。

介護疲れの原因と介護者のストレス度合い

介護疲れによるダメージは、同居で介護をしている場合に、より深刻になります。
特に在宅介護で、要介護者と1日中同じ家で過ごすような人の場合、逃げ場がなく悩みやストレスも肥大しがちです。

介護者のストレスの原因とは?

まずは、介護者の抱えているストレスの中身をみていきましょう。
厚生労働省のデータによると、男女ともに、介護の悩みやストレスが「ある」と答えた人は、「ない」と答えた人の3倍近くいることがわかっています。特に女性では、7割以上の人が介護に悩みやストレスを抱えていることがわかります。

厚生労働省「平成 28 年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」図 40 性別にみた同居の主な介護者の悩みやストレスの有無の構成割合を基に作図

では、どのようなことに介護の負担を感じているのでしょうか。
家族介護者の負担度のデータをみると、「精神的負担」「身体的負担」「経済的負担」ともに「とても感じている」「まあ感じている」と答えた人の割合が、それぞれ4〜6割と最も多くなっています。
なかでも注目は、「精神的負担を感じている」と答えた人が6割を超えている点でしょう。肉体面、経済面の負担以上に、精神面のダメージを被っている人が多い、というのが特徴です。

厚生労働省「家族介護者支援マニュアル 平成30年3月」図表 3 【家族介護者】介護による精神的・身体的・経済的な負担度合を基に作図

「精神的負担」には、家族が要介護状態になったことへのショック、介護が始まったことによる生活の変化、認知症などで思うように意思の疎通がはかれないいらだち、24時間気の抜けない緊張感などがあります。これまで出来ていたことが出来なくなってくる家族に対し、つい声を荒げてしまって後悔したり、ほかの家族の協力が得られないことにストレスを感じたりと、介護者にはさまざまな精神的負担がのしかかってきます。

「身体的負担」は、たとえばベッドから車イスへの移乗、トイレや浴室での介助、オムツ交換や着替えなど、日に何度も相手のからだを抱えたり支えたりするため、介護者は腰やヒザを痛めてしまうこともしばしば。相手は高齢者とはいえ体格のいい人もいますし、介護者自身が高齢なことも多いため、介護期間が長引けば介護者がからだを壊してしまうリスクもそれだけ高まります。
また、夜間に何度も起こされて、まとまった睡眠がとれないことも健康を害す原因のひとつ。要介護者は日中に昼寝ができても、介護者は昼間もあれこれとやることがあり、休んでいられない人も多いのです。

「経済的負担」は、親に十分な預貯金や年金がない場合、やむを得ず子どもが費用を負担するというようなケースです。介護サービスの利用料、紙オムツなどの消耗品代、施設の入居料など、介護にはさまざまな費用がかかります。先の見えない介護生活に、経済面で不安を抱えている介護者も少なくありません。

要介護度が上がるほど事態は深刻に

「介護」とひと口にいっても、その内容は要介護度によって幅があります。たとえば「要介護1」の場合は、部分的に介護が必要になるものの、日常生活はほぼ自力で送ることができます。一方、「要介護3」以上になると、日常生活のほとんどにサポートが必要になり、「要介護4」「要介護5」では、介護の手がないとまともな日常生活を送ることができません。食事、入浴、着替え、排泄などのほぼすべてに介助が必要になり、さらに認知症が加われば介護者にかかる負担ははかり知れません。つまり、介護者の負担度は、介護を受ける人の要介護度によって大きく左右されるということです。

下の表は、介護にかかる時間を「要介護度別」にまとめたものです。これを見てもわかるように、要介護度が上がるにつれて介護に費やす時間も増していき、要介護5では介護時間が「ほとんど終日」という人が半数を超えています。

厚生労働省「平成 28 年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」を基に作図

介護疲れが引き起こす深刻な問題

このようにして家族介護の負担が増えていくと、介護者自身の疲れも日に日に蓄積していき、最悪の場合は、介護者の「介護うつ」や「自殺」、要介護者への「虐待」といった問題に発展してしまうことも。
これらは、終わりの見えない介護生活の中で介護者に精神的余裕がなくなり、不安感や孤独感に苛(さいな)まれる状況で起こりやすくなります。

たとえば、一般社団法人JA共済総合研究所のデータによれば、「介護・看病疲れ」が原因で自殺した人は、50代から70代の世代で増えていることがわかります。

一般社団法人JA共済総合研究所「介護・看病疲れによる自殺」を基に作図

50代は、ちょうど仕事と介護の両立に悩み、介護離職を考える人が増える世代。介護離職は、これまでのキャリアや社会的地位の喪失、収入の減少など、多くの問題をはらんでおり、介護者にかかるストレスは甚大です。
さらに、60代70代になると今度は「老老介護」の問題が浮上してきます。老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく高齢の親や配偶者などを介護することをいいます。老老介護の問題は、介護者自身にからだの衰えが見られ、介護による肉体的負担が深刻である点です。 どの世代であっても人の介護をするのは大変な苦労がともないますが、特に50代以降の世代ではこうしたもろもろの背景が加わり、ストレスにさらに拍車がかかることが考えられます。

次に、「虐待問題」について考えてみましょう。
厚生労働省の資料を基に、「高齢者虐待の相談・通報件数」と「虐待判断件数」の推移を見ていきます。上のグラフが「介護施設従事者」によるもの、下のグラフが「養護者(介護者)」によるものですが、相談・通報件数も、虐待判断件数も、施設従事者より養護者(介護者)の数字の方が圧倒的に多いことがわかります。

いずれも厚生労働省「平成 29 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 に基づく対応状況等に関する調査結果」を基に作図

たとえば、平成29年度の数値を比較すると、「虐待判断件数」は、施設従事者が510件に対し、介護者が17,078件と約34倍の数字になっています。ここからは、「いかに介護者による虐待が多いか」が見て取れます。
とはいえ、施設は人の目があるため抑止力が働くこともあり、単純にストレス度合いのみの比較とはいえません。それでも、この数字の開きからは、家族介護者の切羽詰まった状況がリアルに伝わってくるのではないでしょうか。
要介護者だけでなく、家族介護者に対しても手厚いサポートが必要であることは間違いないといえるでしょう。

介護疲れによる"共倒れ"を防ぐ方法

介護疲れが引き起こす、このようなトラブルは、いまや社会問題になっており、自治体では家族介護者を支援する取り組みがすでに始まっています。
ここでは、具体的な「介護による共倒れを防ぐ方法」をご紹介します。

まずは自分のストレスに気づく

ストレスの渦中にあるとき、意外にも本人は自分の受けている精神的ダメージに気づかないことが少なくありません。以下のような症状があったら、危険信号です。

  • 食欲低下
  • イライラ
  • 不安感
  • 不眠
  • 集中力の低下
  • 家に閉じこもりがち

自分のストレスを自覚することで、取り返しのつかない事態になる前に対策をとることができます。
介護が始まると、どうしても介護する相手ばかりを優先して、自分のことは後回しにしてしまう人が多く、無理をしてしまいがちです。でも、介護を担う側が心身ともに健康であるからこそ、介護を受ける側もよいサポートを受けることができるのです。
介護者自身が休養時間をしっかり確保し、相手のことばかりでなく自分の体調やこころの状態にも意識を向けていきましょう。

ソーシャルワーカーへ相談する

介護生活のストレスを減らし、トラブルを予防するには、「ひとりで抱え込まないこと」が重要です。
幸い介護に関する国のサポート体制はとても充実しています。早い段階から利用できる支援やサービスを受けて、介護の負担を減らしていきましょう。

介護に関するあらゆる相談は、「地域包括支援センター」が窓口となって受け付けています。地域包括支援センターには、ケアマネジャー、保健師、社会福祉士などのソーシャルワーカーが常駐しており、介護が必要な人への適切なサポートはもちろん、まだ要介護ではない人に対しても「介護予防プログラム」などのサービスを提供しています。
介護認定が下りれば、介護保険を使ってさまざまなサービスを1~3割の自己負担で利用できます。訪問介護などで他人を家にいれることに抵抗を感じる高齢者もいるかもしれませんが、入浴や排泄などは、経験豊富なヘルパーに手際よく介助してもらったほうが安全ですし、からだも疲れません。
このような訪問介護や、デイサービス・ショートステイなどの施設利用によって、介護者が介護から離れる時間を持てれば、心身のストレス軽減に大いに役立つでしょう。
介護保険以外でも、自治体独自の高齢者向けサービスや、ボランティアによるサービスなど、格安で利用できるサービスが充実しています。

さらに、介護者向けサービスとして、「家族介護者支援事業」を行っている自治体もあります。高齢者を在宅で介護している人に対し、相談に乗ってくれたり、ヘルパーが自宅へ訪問して食事介助や排泄介助の実技レッスンをしてくれたりします。
家族介護者の心身の健康を守るためにも、こうしたサービスをぜひ積極的に利用していきましょう。

介護施設への入居を検討する

在宅で十分なケアができない場合は、介護施設への入居を検討する必要があります。
施設入居のメリットは、専門スタッフによる手厚いケアが受けられること、24時間体制で見守りをしてくれること、いざというときに素早い対応をしてくれることが挙げられます。一方、要介護者が住み慣れた家を離れなくてはいけなかったり、他人との集団生活に慣れなかったりと、デメリットもないわけではありません。とはいえ、いざ施設入居が必要になったときにスムーズに行動できるよう、事前に情報収集だけでも進めておくのがおすすめです。施設の場所や入居費用、施設のタイプなどをできるだけ詳しくリサーチし、もしもの時に備えておきましょう。

まとめ

介護はゴールが見えないため、いつまで続くか分からない介護生活に心身ともに疲弊してしまう人も多いのが実情です。

「介護にかかりきりで、自分の時間がない」
「介護のために仕事を辞めてしまい、自分の将来が不安」

家族介護者のこうした悩みを解決するには、周囲の支援を積極的に受けて介護の専門家たちに関わってもらい、社会から孤立しないことが大切です。要介護者と介護者がお互いに健全な介護生活を送っていくためにも、地域包括支援センターへの相談、施設入居の検討など、自ら行動を起こしていきましょう。

監修

渡辺 有美

介護やマネー関連が専門のフリーライター。

独身時代は都市銀行に勤務し、その後、結婚と子育てを経て介護の道へ。介護福祉士としてデイサービス・特養・訪問介護の現場で10年以上働いた経験を活かし、高齢者の方々の役に立つ記事を多数執筆しています。