老後のひとり暮らしの費用は1カ月いくら? 高齢者の生活を支えるお金の話

夫婦のこれから

「老後のひとり暮らしに必要な生活費」と「安定した家計を維持するポイント」をお伝えします。

【監修】渡辺 有美

自分の老後を考えたとき、金銭面に不安を感じる人は多いでしょう。
内閣府の調査(※1)によると、「高齢社会での暮らしにおいて、社会としてどんな点に重点をおくべきか?」という質問に対し、もっとも多かったのが「老後を安心して生活できる収入の保証」(72.3%)という回答でした。
人の暮らしはお金によって支えられており、日常生活で生じるさまざまな困難も、お金があればスムーズに解決できることが多いです。老後の不安を少しでも減らすには、金銭的な備えが不可欠だといえるでしょう。
そこで今回は、老後をひとりで迎える方に向けて、「老後のひとり暮らしに必要な生活費」と「安定した家計を維持するポイント」をお伝えします。

老後のひとり暮らしにかかる生活費

まずは、老後のひとり暮らしにはどのくらいのお金がかかるのか具体的な数字をみていきましょう。
総務省の「家計調査報告(2018年)」によると、無職の高齢単身者の月々の収入は12万3,325円、支出は14万9,603円。健康保険料や年金の社会保険料として支払っている、非消費支出の1万2,392円も合わせて考えると、毎月3万8,670円の赤字であることがわかります。

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2018年(平成30年)平均結果の概要」図2 高齢単身無職世帯の家計収支 -2018年-を基に作図

このデータを元に計算すると、年間約46万円の赤字が毎年積み重なっていくことになります。備えが無いことには、老後の生活はかなり厳しい状況になる、と言わざるを得ません。
ちなみに、2018年の日本人の平均寿命(※1)は、男性が81.25歳、女性が87.32歳ですから、平均寿命まで生きた場合、公的年金の受給開始の65歳から計算して、男性は約740万円、女性は約1,020万円が不足することになります。
老後へ向けた一番の準備は、「どのようにしてこの不足額を補うか」になるでしょう。

介護が必要になると、月々の負担はプラス4.6万円

将来、もし介護が必要になったら出費はさらに増えることになります。ここでは、施設に入所せず「在宅介護」を選択した場合の、月々の介護費用をご紹介します。

在宅介護にかかる費用の平均は?

在宅介護の場合、月々の介護費用の平均は約4.6万円(※2)といわれています。
ただ、介護にかかる費用は本人の要介護度によって異なり、介護度が上がれば上がるほど月々の負担額も増える傾向にあります。これは、要介護度が上がるほど身の回りのことにサポートが必要になり、介護保険の利用が増えるためです。

介護費用には、大きくわけて「介護サービスの利用料」と「介護サービス以外の費用」の2種類があります。介護サービスの利用料とは、介護認定を受けて介護保険サービスを利用したときの自己負担分(所得に応じて1割~3割)のことです。たとえば、以下のようなものが挙げられます。

  • デイサービスやショートステイの利用料
  • 入浴介助やオムツ交換などの訪問介護の利用料
  • 介護用ベッドや車いすなどの福祉用具のレンタル料金

一方、介護サービス以外の費用には、以下のようなものがあります。

  • 紙オムツ代
  • デイサービスやショートステイを利用した際の昼食代や菓子代
  • 介護保険の限度額をオーバーした分の介護サービス利用料

家のリフォームが必要になる場合

自宅で介護生活を送る場合、転倒などのリスクを減らすために検討したいのが、家のリフォームです。「慣れ親しんだ家で事故やケガなど起こるわけない」と思うかもしれませんが、実は高齢者の事故は約8割が自宅内で起こっています。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)」第2節 高齢期の暮らしの動向 図1-2-4-2を基に作図

以下のデータをご覧ください。高齢者にもっとも多いのは、転落や転倒による「ころぶ」事故です。高齢になって足腰が弱ってくると、階段でよろけたり、床の段差につまずいたりして足回りの事故が起こりやすくなります。骨が脆くなっているので、転倒の衝撃で骨折してしまう人も少なくありません。高齢者の骨折は認知症や寝たきりの原因にもなるため、在宅の場合は転落や転倒への対策は必須といえるでしょう。

東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」図1-4を基に作図

こうした事故のリスクを減らすには、家の中の段差をなくす、手すりを付けるといった対策が有効です。段差解消や手すりの設置は、介護保険の住宅改修制度を利用して1~3割の負担で行うことが可能です。自宅で介護生活を送る方は、検討してみるとよいでしょう。ただ、介護保険の住宅改修費の支給は20万円が上限です。これを超えた分は自費になるので注意が必要です。
介護保険の対象になるリフォーム例をご紹介します。

手すりの設置

トイレ、玄関、浴室、廊下などに設置して転倒を予防します。

段差の解消

フローリングと畳の床段差、トイレや玄関などの床段差に対し、床のかさ上げや敷居の撤去を行い、床の高さをそろえます。足のつまずき防止のほか、車イスが移動しやすくなるメリットもあります。

床材の変更

部屋、廊下、浴室などの床をすべりにくい材質やクッション性のある床材に変更し、転倒やケガを予防します。

扉の取り替え

引き戸やアコーディオン扉など、開け閉めしやすい扉へ取り替えます。

トイレ便器の取り替え

洋式便器に取り替えたり高さをかさ上げしたりして使いやすくします。

老後へ向けて今から準備しておくべきこと

ここからは、ひとり暮らしの老後に必要なお金と、老後の家計を維持するためのポイントをお話します。

ひとり暮らしの高齢者が準備しておきたいお金

自宅で老後を過ごす場合、いずれ介護を受けることも視野に入れると、どれくらいの老後資金が必要なのでしょうか。
前述の「家計調査報告」によると、月々の支出は約15万円。これに在宅介護費用の4.6万円を合わせた約20万円が目安となりますが、生活費も介護費も状況によって大きく上下するため、一概に「20万円あれば安心」というわけではありません。

たとえば、持ち家か賃貸住宅かによって住居費が大きく変わってきます。介護がほとんど必要ない人と寝たきりの人ではやはり介護費用に大幅な開きが出てきます。また、60歳で現役をリタイヤすると、年金をもらえる65歳までの5年間の生活費も考えなくてはなりません。
そこで、老後破綻を阻止するために、以下の3つを心に留めていただきたいと思います。

  1. 少ない予算で暮らす習慣を身につける
  2. 健康を心がけて医療費・介護費を節約する
  3. 高齢者向けの公的サービスを積極的に利用する

生活費の節約を心がける

月々の赤字を減らすには、「支出を把握すること」が肝心です。節約体質になるには、今のうちから家計簿をつけて支出額を視覚化するのがおすすめです。家計の全体像を具体的な数字で把握することで、無駄な出費に気づくことができます。外食が多い人、コンビニ通いをする人、衝動買いのクセがある人は、これらを改めることですぐに月々1~2万円の節約をすることも可能でしょう。
ポイントは、常に「先取り貯金」を心がけ、残りの金額で生活を送ることです。節約生活をベースに、貯蓄を少しずつ増やしていきましょう。ひとり暮らしの人は自分次第で出費をコントロールできるので、思い立ったらすぐに節約生活に切り替えられるというメリットがあります。とはいえ、毎月ギリギリの節約生活では楽しみがありません。趣味や娯楽なども積極的に取り入れるべきですが、なるべくお金のかからない方法で楽しんでみてはいかがでしょう。本や雑誌が読みたいときは図書館を利用したり、家庭菜園で野菜やハーブを育てたり、また、料理を趣味にすれば外食費を節約できるうえに毎日おいしいものが食べられます。
このような節約を習慣にしておくと、いざ年金生活が始まったときも低い予算で暮らせるのでそれだけ赤字解消に役立ちます。また、早めに将来の自分の年金額を調べて、具体的に老後の家計をシミュレーションしておくことも大切です。

健康なからだづくり

病気や要介護状態になると、医療費や介護費がかかり家計を圧迫します。健康を維持することは、生活を豊かにするだけでなくお金の節約にもなるため、年をとるほど健康なからだづくりを意識して生活するようにしましょう。
「健康寿命をのばしましょう。」をスローガンとした厚生労働省の推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」では、健康を保つために以下のような具体的な行動を呼びかけています。

  • 毎日10分の運動をプラス
  • 1日あと70gの野菜をプラス
  • 禁煙でタバコの煙をマイナス
  • 健診・検診で定期的な健康チェック

どれも健康づくりに欠かせないことですが、介護予防として特におすすめなのが「毎日10分の運動」です。
スマート・ライフ・プロジェクトでは「歩くこと」を勧めています。ウォーキングは足腰の筋力アップや心肺機能の向上が期待できるすぐれた運動といえるでしょう。足の筋力が衰えると転倒リスクが高まるうえに、転んでケガや骨折をすると安静を余儀なくされ、その間にますますからだの筋力は低下してしまいます。入院ともなれば、1日中ベッドに寝たままの生活となり、そのまま認知症を発症してしまう恐れも......。このように運動不足はからだに悪循環を生むため、高齢者の方は積極的に運動をしてからだを錆びつかせないことが大切です。

安く利用できる高齢者向けサービスを知っておく

介護費用を節約するなら、介護保険を利用するのがベストです。日常生活に困難を感じるようになったら、早めに「地域包括支援センター」に相談し、要介護認定を受けましょう。要介護認定は、介護保険サービスを受けるために必須です。
介護認定を受けると担当のケアマネジャーがつくので、まずはそこで「どのような介護を受けたいか」「介護に使えるお金はどのくらいか」を伝え、最適な介護プランを作成してもらいましょう。
在宅の高齢者向けのサービスには、以下のような種類があります。

介護保険サービス

訪問介護による身体介護・生活援助、デイサービス・ショートステイの利用、住宅改修費の支給、福祉用品のレンタル・購入など。
※要介護認定が必須

自治体の地域支援サービス

配食サービス、見守り支援、ゴミ出し支援、オムツ支給、理容サービスなど。
※利用条件は自治体により異なる

ボランティアやNPOのサービス

生活支援、見守り、話し相手など。
※利用条件なし

民間企業のサービス

家事代行、外出の付き添い、配食サービスなど。
※利用条件なし

民間企業のサービスは融通がきく反面、費用が全額自己負担になるので高額です。介護費用を低く抑えるには、介護保険を軸として自治体やボランティアなどのサービスを組み合わせて利用していくのがよいでしょう。また、今は高齢者ができるだけ住み慣れた地域で自分らしく暮らすことを目指して、「医療」「介護」「生活支援」「介護予防」などを総合的に支援していく「地域包括ケアシステム」の体制が整いつつあります。この仕組みにより、要介護の人も自宅で長くひとり暮らしを続けられる可能性が広がってきました。
ケアマネジャーは高齢者と地域をつなげる橋渡しの役割を担ってくれます。よりよい介護を受けるためにも、困っていることや「こうしたい」という要望があれば、なんでも相談するようにしましょう。

まとめ

老後のひとり暮らしは心細さや不安があるかもしれませんが、今は高齢者向けの支援やサービスが非常に充実しているので、必要以上に不安を抱くことはありません。まずは、現役のうちからなるべく節約をしてお金を貯めること、健康的な生活を心がけることが、豊かな老後生活につながります。そのうえで、高齢者向けサービスの情報を収集し、いざという時のための備えとすることが大切です。

※1 厚生労働省「平成30年簡易生命表」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf

※2 公益財団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査 2018年」P165
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/h30zenkoku/2018honshi_all.pdf

監修

渡辺 有美

介護やマネー関連が専門のフリーライター。

独身時代は都市銀行に勤務し、その後、結婚と子育てを経て介護の道へ。介護福祉士としてデイサービス・特養・訪問介護の現場で10年以上働いた経験を活かし、高齢者の方々の役に立つ記事を多数執筆しています。