人生100年時代の快適生活術~セカンドライフのためのバリアフリー準備~

"終の住処(すみか)"はやっぱり"我が家"

夫婦のこれから

第3回 “終の住処(すみか)”はやっぱり“我が家”

【監修】太田知子

将来、介護が必要になったとき、あなたはどこで介護を受けたいですか。やがて訪れる人生の最期。その時を、あなたはどこで迎えたいですか。
内閣府の調査では、介護を受けたい場所も最期を迎えたい場所も、どちらも最も多かったのは「自宅」でした。
自宅を終(つい)の住処(すみか)にしたい、というのは多くの人の願いです。そのために、今からどんな準備をしたらよいのでしょう。

60歳以上の35%は「自宅で介護を受けたい」と希望

内閣府の調査によると、将来、介護が必要な状態になるのではないかと不安に思う60歳以上の男女の約35%が、「自宅で介護してほしい」と答えており、男性(42.2%)のほうが、女性(30.2%)よりも、その志向が強いことが分かります。

内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版) > 3 高齢者の健康・福祉」図1-2-3-16を基に作図

「自宅で最期を迎えたい」が過半数

また、最期を迎えたい場所でも、「自宅」を挙げる人の割合が最も多く、55~59歳、60~75歳、75歳以上のどの年代でも、過半数を占めました。
現在の日本では、病院などの医療機関で亡くなる人が8割以上を占めていますが、介護生活も最期を迎えるときも、住み慣れた自宅がいいという思いを多くの人が持っていることが分かります。

内閣府 「平成29年版高齢社会白書(全体版) > 3 高齢者の健康・福祉」図1-2-3-17を基に作図

多くの人は住み慣れた自宅にできるだけ長く住み続け、自宅を終の住処にしたいと望んでいます。自宅であれば、誰に気兼ねすることなく自由に暮らせるからでしょう。お気に入りの庭を眺めることも、趣味の作品も自由に飾ることもできますし、ペットを飼うことも可能です。地域の顔なじみの人が訪ねてきて、おしゃべりを楽しむなど、自宅ならではの暮らしを楽しみたいと願う人は多いのです。

経済的なメリットも多い自宅暮らし

自宅に住み続けることは、経済的にも大きなメリットがあります。介護が必要になっても自宅で介護を受ければ、介護保険の居宅サービスをめいっぱい利用しても月3万円台(1割負担の場合)で済みますが、介護施設に入所すると、利用料が安い特別養護老人ホームの多床室の場合でも月7万円以上がかかります。介護付き有料老人ホームの場合は、月15~35万円くらい見ておく必要があります。自宅に住み続ければ、施設の場合に必要な施設居住費がないので、ずっとリーズナブルに暮らせるのです。

月々に必要な費用

介護施設

自宅

特別養護
老人ホーム

介護付き有料
老人ホーム

入居一時金

なし

なし

0~数千万円

 月額費用

介護保険サービスの自己負担分
5,003円(要支援1)~36,065円(要介護5)
※1割負担の場合

7~15万円

15~35万円

近年、国や自治体は、「介護度が重くなってもできるだけ住み慣れた地域で生活できるように」と地域密着型サービスの推進に力を入れています。
ホームヘルパーが夜間も定期的に訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護をしてくれる夜間対応型訪問介護や、ホームヘルパーと訪問看護師が密接に連携しながら定期的に訪問したり、必要に応じて24時間の随時対応をしてくれたりするサービスも始まっています。
自宅を終の住処にすることのハードルは下がってきているといえます。

自宅を「終の住処」にするには

介護が必要になっても自宅で最期まで快適に暮らすには、元気なうちにどんな準備をしておけばよいのでしょうか。それには、トイレや洗面所、浴室にできるだけ自力で行けるよう移動のしやすい住宅にしておくこと、介護する側の負担が軽くなるようなリフォームを行うことが大事です。

介護リフォームのポイント

  • トイレや洗面所は、できるだけ居室の近くに設置する
  • トイレの便器を和式から洋式に取り替える
  • 居室、廊下、トイレ、浴室、玄関など、部屋間の段差をなくす
  • 廊下、トイレ、浴室、玄関などに手すりを取り付けて、安全に移動できるようにする
  • 室内ドアやトイレのドアを、少しの力で開け閉めしやすい引き戸にする
  • 床材を滑りにくい材質のものにする
  • 浴槽を浅めのものにしてまたぎやすくする

また、要介護になって入浴介助が必要になったら、自宅のお風呂は使わず、通所介護(デイサービス)を利用して、デイサービス施設で入浴サービスを利用するという手もあります。

二世帯住宅の場合に注意したいこと

親の世帯と子の世帯が一緒に住む二世帯住宅。高齢になって、からだのあちこちに不調が出てきたり、夫婦のどちらかが亡くなってひとりになったりした場合など、子ども世帯と一緒に暮らしていれば、何かと心強く、安心です。子の世帯も孫の面倒を見てもらえるなど、お互いにメリットは数多くあります。また、税制上のメリットも大きく、一定の要件を満たすと不動産取得税や固定資産税が軽減されます。
しかし、親世帯に介護が必要になると子世帯が介護を背負わざるを得なくなり、どうしても子世帯に負担がかかってきます。ですから、二世帯住宅にする場合は、将来の介護問題をしっかり視野に入れ、外部からの介護サービスを受け入れやすくして、できるだけ子世帯に介護の負担がかからないようにすることが大切です。
それには、以下のような方法が考えられます。

できるだけ子世帯に介護の負担がかからないためのポイント

  • 親世帯と子世帯の生活空間を分けて、お互いのプライバシーを保ちながら、外部からのサービスを受け入れやすくする
  • 将来、介護室になる親の居室は玄関の近くにして、デイサービスに行く際の移動をスムーズにしておく
  • 玄関の外階段はスロープにして、車イスで移動しやすくする
  • トイレや浴室は、本人とヘルパーさんの2人が入れるように十分な広さを確保する

こうした工夫で、親世帯も子世帯も介護ストレスの溜まらない、笑顔で暮らせる"終の住処"にしたいものです。
そのためには、リフォームの計画の段階から、将来介護が必要になることを視野に入れることが大事です。元気なうちにこうした準備をしておきましょう。

監修

太田知子

健康医療ライター、介護予防インストラクター、終活カウンセラー上級、ひとりの老後を応援する団体・リリアンネット代表

地域新聞記者、編集長を経て、フリーランスの健康医療ライター。
著書に母親の介護体験を記した「老親介護は突然やってきた!」(ユック舎)、おひとりさまの介護、終の住処、終活についてまとめた「老楽支度(おいらくじたく)」(G.B.)他。共著に「変わる主婦・変わらない主婦」(グループわいふ)、「西多摩ぐらし女のキ・モ・チ」(筑波書房)、「いま問う、男の老い」(日本評論社法学セミナー増刊)他。趣味は旅行、ウォーキング、シャンソン。