人生100年時代の快適生活術~セカンドライフのためのバリアフリー準備~

夫婦のこれから

第1回 セカンドライフを快適に生きるには 

【監修】太田知子

日本人の寿命は年々長くなり、100歳を超えて生きることも夢ではない時代になってきました。リタイア後のセカンドライフを快適に生きるためのカギとなるのは、「住まい」です。できるだけ早いうちから、高齢期の生活を考えた住まいづくりに取り組みたいものです。

リタイア後の20~30年間を快適に過ごす

厚生労働省によると、日本人の平均寿命は2018年の時点で男性が81.25歳、女性が87.32歳と、いずれも過去最高を更新しています(※1)。
しかも、日本人の寿命はさらにのびることが予想されています。

内閣府「高齢社会白書(平成30年版)」を基に作図

内閣府の「高齢社会白書(平成30年版)」によると、日本人の平均寿命は、2065年には男性が84.95歳、女性が91.35歳になると予想されています。ということは、65歳で定年を迎えた場合、まだ20~30年近い余命があるということです。
リタイア後は、現役時代と違って自宅で過ごす時間が長くなります。いかに自宅を快適な空間にするかが、セカンドライフを快適に過ごすカギになるといえましょう。

要介護期間は男性が約9年、女性は約12年

では、リタイア後のセカンドライフのうち、健康でいられる期間はどれくらいでしょうか。

内閣府「高齢社会白書(平成30年版)」を基に作図

上のグラフでわかるように、日本人の平均寿命と健康寿命は年々のびています。健康寿命とは、日常的に医療や介護を必要とせずに、自立した生活が送れる期間をいいます。
この2つの寿命は平行線をたどっており、健康寿命が平均寿命とイコールになることは通常ありません。人間は加齢とともに体のあちらこちらが衰えていき、最後に死を迎えます。元気で長生きして、寝付くことなく、最後は苦しまずにコロリと死を迎える「ピンピンコロリ」を多くの人は願っていますが、なかなかそうはいかないのが現実です。グラフが示すように、介護などのケアが必要な健康ではない期間が男性は約9年、女性にいたっては12年以上もあります。

セカンドライフを快適に過ごす家づくりを考える場合、大事なことは高齢期になると身体機能が低下するということを認識し、体の衰えをカバーできる住まいを考えることではないでしょうか。

安全に過ごすための住まいとは

建築士兼インテリアコーディネーターのYさんは49歳の時、夫婦と娘3人が住む自宅を自分で設計して建て替えました。その5年後、夫が他界し、現在は娘夫婦と住んでいます。
南西の角地で隣が公園という立地ですが、敷地が30坪しかないので、耐震性に優れたツーバイフォー工法を採用し、3階建ての家にしました。1階に夫婦の寝室と浴室、2階が14畳のリビングとキッチン、客間(和室)、3階に娘の部屋を設けました。リビングを2階にしたのは、日当たりや窓から見える景色が1階よりもいいこと、3階に住む娘と1階に住む夫婦の間にあって家族が集まりやすいと考えたからだそうです。できる限り段差をなくし、床材は滑りにくいものを使うなど、安全な家づくりを目指しました。トイレは1階と2階につけ、1階のトイレは将来、車イス生活になることも考えて、十分な広さを取りました。
このほかにも、老後のことを考えて工夫した所があります。それは階段です。幅を広くとり、途中に踊り場を入れてゆったりとした造りにしました。もし踏み外しても、下まで一気に転げ落ちないようにと考えたからです。幅を広くとったのは、階段の上り下りがきつくなった時に備え、昇降機を付けることを視野に入れたからです。

「階段は家の要。まっすぐの階段はとても危険です。リビングの広さを少し削ってでも、階段をゆったりした造りにすることをおすすめします」と、Yさんは話します。

趣味を楽しめる家づくり

リタイア後、余命が20年あるということは、1日24時間×365日×20年で、17万5200時間。余命が30年なら、24時間×365日×30年で26万2800時間もあることになります。そのうちの多くの時間を過ごすのが自宅になるわけですから、住まいを快適な空間にするか否かで、人生の満足度はかなり違ってきます。
安全面を考えて、バリアフリー住宅にするのはもちろん大切ですが、セカンドライフを充実させるため、趣味を楽しめる家づくりということも考えたいものです。

サラリーマンのSさん(64)は、2人の子どもが独立して家を出た5年前、築32年の家をリフォームしました。キッチン、浴室、トイレなど水まわりを新しくするのが一番の目的でしたが、趣味でジャズピアノを習い始めたSさんは、1階のリビングルームを防音ルームにする大改造も行いました。6畳の和室2部屋をひとつにつなげ、押し入れもなくして、13畳の広いリビングルームにし、キッチンと一体化させました。壁の内側に吸音材と防音シートを入れ、ドアも防音ドアにして、音が外に漏れないようにしました。
Sさんの妻も音楽が大好きで、シャンソンを習っています。そこで、リビングルームに音響設備を設置し、天井にはスポットライトを付けて、ミニコンサートができるようにしました。すると、歌や楽器の練習に使わせてほしいと音楽の好きな友人たちが集まってくるようになりました。

「周りを気にせず、のびのびとピアノが弾けたらと思ってリフォームしたのですが、いつしか音楽好きの仲間が集う空間になり、サロンコンサートも開けるようになりました。リタイア後が楽しみです」と笑顔で語るSさん。 Sさんのように趣味を活かした家づくりをすることで、充実したセカンドライフが過ごせることは間違いありません。

出典

※1 厚生労働省「簡易生命表(2018年)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf

監修

太田知子

健康医療ライター、介護予防インストラクター、終活カウンセラー上級、ひとりの老後を応援する団体・リリアンネット代表。
地域新聞記者、編集長を経て、フリーランスの健康医療ライター。
著書に母親の介護体験を記した「老親介護は突然やってきた!」(ユック舎)、おひとりさまの介護、終の住処、終活についてまとめた「老楽支度(おいらくじたく)」(G.B.)他。共著に「変わる主婦・変わらない主婦」(グループわいふ)、「西多摩ぐらし女のキ・モ・チ」(筑波書房)、「いま問う、男の老い」(日本評論社法学セミナー増刊)他。趣味は旅行、ウォーキング、シャンソン。