30〜40代で気にしなければならない健康と予防対策

40代以降に急増! 糖尿病の原因と今からできる予防法

身体のこれから

糖尿病の発症には、普段の生活習慣が大きく影響します。若いうちから糖尿病の怖さを正しく理解し、予防するための生活習慣を身につけることが大切です。

【ライタープロフィール】遠藤愛

厚生労働省の統計(※1)によると、「糖尿病」もしくは「糖尿病予備群」とされる患者数は約2,000万人、そのうち20〜64歳の現役世代は、約720万人いると推計されています。

糖尿病は普段の生活習慣が大きく影響する病気であり、働き盛りで生活が不規則になりがちな30代を経て、40代になると一気に患者数が増加する傾向にあります。

この記事では、「糖尿病ってどんな病気?」「予防のためにはどんなことに注意すればいい?」といった疑問にお答えするため、糖尿病の原因と症状、合併症、予防策について解説します。

糖尿病の原因と症状

糖尿病はひんぱんに耳にする病気のひとつです。「なんとなく知っている」という方も多いのではないでしょうか。糖尿病について、厚生労働省のウェブサイトでは下記のように解説されています。

インスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で、血糖値の上昇を抑える働き(耐糖能)が低下してしまうため、高血糖が慢性的に続く病気です。

糖尿病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

糖尿病になる仕組み

私たちのからだは、膵臓から分泌されるインスリンによって血糖値を一定に保っています。ところが、何らかの原因でインスリンの分泌が減ったり、十分に働かなかったりすると、血液中のブドウ糖が増え、血糖値が高くなります。

糖尿病はいくつかのタイプに分けられ、インスリンを分泌する細胞が破壊されてインスリン量が不足する「1型糖尿病」、遺伝や生活習慣などが原因で発症する「2型糖尿病」が代表的です。日本では糖尿病患者の9割以上が「2型糖尿病」と言われており、この記事でも2型糖尿病(以下、糖尿病)について解説していきます。

糖尿病の原因

糖尿病の原因には次のようなものがあります。

  • 遺伝的要因(親・きょうだいに糖尿病患者がいる)
  • 食生活の乱れ(食べる時間が不規則、栄養バランスが偏っている、過食など)
  • 運動不足
  • 肥満
  • アルコールの過剰摂取
  • 喫煙

このような生活習慣に心当たりのある方は、糖尿病になるリスクが高いと言えます。
特に多忙な現役世代は、朝食を抜く、夜遅くに帰宅して食事をする、付き合いによる飲酒が多いなど、食生活が乱れがちです。また、忙しくて運動する時間がない、たばこや甘いお菓子でストレスを解消するという方もいるでしょう。

このような生活習慣は、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病につながります。「まだ若いから大丈夫」と油断するのは禁物で、予備軍を含む糖尿病患者は40代以降に急増することがわかっています。

厚生労働省「平成30年版厚生労働白書|第1章 障害や病気を有する者などの現状と取り組み 図表1-2‐8 糖尿病患者の状況」を基に作図

糖尿病の症状

初期の糖尿病は無症状のことが多く、健康診断で血糖値の異常を指摘されて初めて気づく方が少なくありません。症状を自覚したときには病状が進行していることもあり、悪化するほど治療が難しくなります。次のような症状に気づいたら、なるべく早めに受診をしましょう。

  • のどが渇き、水分をたくさんとる
  • 尿の回数・量が増えた
  • 空腹感が強く、たくさん食べる
  • たくさん食べるわりに、体重が減っていく
  • 疲れやすい

写真①

糖とインスリンの関係

糖尿病と聞くと、「糖=からだにとって良くない」と考えてしまいがちですが、必ずしもそうではありません。糖は飲食によって摂取するほか、肝臓でも作られており、活動のエネルギー源となる重要な栄養素です。糖がエネルギーに変換され、血糖値が一定に保たれていれば問題ありません。問題になるのは、「糖が活用されず、血液中に溢れすぎた状態」です。糖が活用されない原因は、インスリンの作用不足にあります。

インスリンは血液中の糖を細胞に取り込み、エネルギー源として活用するのを助けます。食事をすると血糖値が上がりますが、健康な方であればインスリンの作用で糖が細胞に取り込まれ、エネルギーに変換されることで血糖値が下がります。ところが、糖尿病の方はインスリンが十分に作用せず、細胞に取り込めなかった糖が血液中に溢れるため、血糖値の高い状態が続いてしまうのです。

糖のとりすぎが良くないのは言うまでもありませんが、「インスリンの作用不足」は、主に遺伝や生活習慣によって引き起こされます。

糖尿病の診断基準

糖尿病の検査で重要視されている指標が、「血糖値」と「HbA1c」です。
血糖値とは、体内を流れる血液中のグルコース(ブドウ糖)の量を指します。また、HbA1cは「糖化ヘモグロビン」とも言い、糖と結合したヘモグロビンの量を表します。なお、HbA1cは測定時の食事・運動の影響を受けず、過去1〜3カ月間の平均的な血糖値を反映するため、普段の日常生活や血糖値の管理状況を示す重要なデータとなります。

糖尿病の診断には血液検査を行いますが、必ずしも1度の検査で診断されるわけではありません。

この図は糖尿病診断の流れを示したものですが、簡単に説明すると次のようになります。

  • 血糖値とHbA1cの両方が異常値 → 糖尿病
  • 血糖値の異常と、明らかな糖尿病症状or網膜症 → 糖尿病
  • それ以外の場合は1カ月以内の期間をおいて再検査

すでにお伝えしたように、糖尿病は静かに進行する病気です。なるべく早い段階で異常に気づくことが重要で、「糖尿病の疑い」もしくは「糖尿病」と診断されたら、自覚症状がなくてもすぐに対策を始めることが、その後の病状を左右します。

糖尿病によるさまざまな合併症

糖尿病は、「血糖値が高い」だけで済まされる病気ではありません。ここからは、糖尿病によって生じるさまざまな合併症について解説します。

糖尿病の合併症には、急激な血糖値の上昇による「急性合併症」と、高血糖が長く続くことで生じる「慢性合併症」があります。

急性合併症は、暴飲暴食、清涼飲料水の過剰摂取などで血糖値が急上昇することによって起こります。重症の場合は昏睡状態に陥り、命に関わることもある合併症です。
対して慢性合併症は、長期にわたって高血糖が続くことによって血管が傷つけられて生じるものです。特に微小な血管が傷つけられることによる、網膜症、腎症、神経障害は、糖尿病の3大合併症と呼ばれています。さらに大きな血管がダメージを受けると、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞など重篤な病気になるリスクが高まります。

網膜症

網膜症は、糖尿病によって生じる視力障害です。網膜は目から入ってくる視覚情報を脳に伝える働きがあり、そこにある豊富な毛細血管は神経細胞に酸素や栄養を供給しています。しかし、高血糖状態が続くと毛細血管がダメージを受け、酸素や栄養が十分に行き届かなくなり視力障害をきたします。
網膜症が悪化すれば、眼底出血や網膜剥離による視力低下が進み、最悪の場合、失明することもある重大な合併症です。

腎症

糖尿病によって生じる腎機能の低下が「腎症」です。腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の集まりがあり、からだにとって必要な成分とそうでない成分を分別するフィルターのような役割を担っています。
私たちのからだは大量の血液を糸球体で濾過することで体液バランスを保っていますが、糸球体が傷つき老廃物がからだに溜まると、「尿毒症」と呼ばれるさまざまな有害症状が現れます。

神経障害

感覚神経・運動神経・自律神経などに栄養を与える血管が傷つき、血流が悪くなると「神経障害」を引き起こします。
手足のしびれや痛みなどの感覚異常、便秘・下痢などの胃腸障害のほか、痛みや刺激に鈍感になると体調の変化やケガ気づきにくく、無痛性心筋梗塞や足病変(壊疽:えそ)につながることもあります。

このように、糖尿病は全身のあらゆる部分に支障をきたす病気です。命に関わる危険な合併症のリスクも高いため、何よりもまず予防に努めることが大切です。

生活習慣を見直して糖尿病を予防しよう

糖尿病の発症には、普段の生活習慣が大きく影響します。過食や多量のアルコール摂取、運動不足、喫煙といった不摂生は、糖尿病だけでなくあらゆる生活習慣病の原因となり、病気によって生活の質を低下させる恐れがあります。若いうちから糖尿病の怖さを正しく理解し、予防するための生活習慣を身につけることが大切です。

食生活

食事は5大栄養素(たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル)をバランスよくとり、3食を規則的に食べるよう心がけましょう。また、食物繊維は糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぐため積極的に取り入れたい栄養素です。野菜や海藻類のほか、普段の主食を玄米・雑穀米・全粒粉パンに変えることで効率よく摂取することができます。
食べ過ぎを予防するためにもひと口ずつよく噛み、早食いをしないように注意しましょう。

写真②

運動習慣

運動をすることで糖尿病の原因である肥満を改善し、インスリンの働きを高める効果が期待できます。
1度に多くの運動をこなすよりも、適度な運動を継続的に行うことが重要です。ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を1週間のうち3日以上行うことを目標に、無理のない範囲で行ってください。
運動は食生活と同様に大切な習慣であり、糖尿病予防では「車の両輪」のようにセットで考える必要があります。

写真③

禁煙

喫煙習慣のある人は、そうでない人と比べて血糖値が上昇しやすく、インスリンの働きも妨げられるため糖尿病になりやすいと言われています。
禁煙による口寂しさから間食が増え、体重が増加する人もいますので、禁煙とともに食事の管理や運動を行うことが大切です。万が一、体重が増えても、禁煙することで「インスリン抵抗性(インスリンが分泌されているにも関わらず、正常に働かないこと)が改善する」「動脈硬化のリスクが減る」といったメリットがあります。

糖尿病予防は早めの対策&定期検診がカギ

糖尿病は静かに進行し、さまざまな合併症を引き起こします。予防のためには生活習慣の見直しが必須であり、特に食生活の改善と継続的な運動習慣が重要です。

若いうちに糖尿病予防を意識した生活習慣にシフトすることは、あらゆる生活習慣病のリスクに備え、健康寿命を延ばすことにつながります。そのためにも、30代40代からの早めの対策と、定期的な健康診断を心がけましょう。

【出典元】

※1 厚生労働省「平成30年版厚生労働白書| 第1章 障害や病気を有する者などの現状と取組み p.79」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/18/dl/1-01.pdf

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。