糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

50代以降のダイエットにオススメの食事法

身体のこれから

食事のバランスをとるポイントは、大きく2つあります。各栄養素のバランスをとることと、摂取するエネルギー量のバランスです。食事はむやみに減らさず、バランスと食べ方を意識し肥満や生活習慣病の予防に努めましょう。

【監修】鈴木吉彦医学博士

これからも元気で生活するために、気になっている体重を落としたいという方は少なくないのではないでしょうか。しかし、長年続けてきた食習慣をいきなり変えることは難しいですよね。毎日食事をするにあたって、まずはどのようなことに気をつけたら良いのでしょう?

今回は、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生に、50代以降の方が知っておきたい、ダイエットしたい方におすすめの食事方法について伺いました。

バランスのとれた食事って?

健康のためにはバランスのとれた食事をとることが大切だと言われますが、どんな食事が「バランスが良い」のかご存知ですか? なんとなく耳にはしていても、具体的にどのような食事にしたら良いのかわからない人も多いのではないでしょうか。

食事のバランスをとるポイントは、大きく2つあります。各栄養素のバランスをとることと、摂取するエネルギー量のバランスです。

栄養素のバランス

栄養素にもいろいろ種類がありますが、ここでは「エネルギー産生栄養素バランス」についてご説明します。

エネルギー産生栄養素バランスとは、エネルギーの元となる栄養素が摂取した総エネルギー量に占める割合のことを言います。以前は、各栄養素の英単語の頭文字(P=Protein:タンパク質、F=Fat:脂質、C= Carbohydrate:炭水化物)をとって、PFCバランスと呼ばれていました。

日本人のエネルギー産生栄養素バランスは、1960年代ごろは炭水化物に偏っていましたが、1980年ごろに理想的な形になったものの、主食である米を食べる量が減ったり、肉類の摂取が増えたりして、近年は脂質に偏りが見られるようになりました。

健康的な生活を送るためには、このバランスが以下の範囲内に収まることが理想的であるとされています。

  • タンパク質...13~20%
  • 脂質...20~30%(このうち、飽和脂肪酸は7%以下)
  • 炭水化物...50~65%

このバランスをとることは、意外と難しいものです。意識していないとパンや米などの炭水化物の比重が高くなったり、脂っこいものを取りすぎて脂質が多くなりすぎたりしてしまいます。このバランスを提唱している厚生労働省によると、タンパク質の量を最初に決めて、次に脂質、最後に炭水化物の量を考えると、バランスが取りやすいといいます。タンパク質は、シニアにとって不足しがちな栄養素なので、意識してとるようにしましょう。

ちなみにアルコールは、エネルギーは産生するものの必須栄養素ではないので、摂取はすすめないとしています。アルコールを摂取するのであれば、タンパク質と脂質の量を決めて、その残りを炭水化物とアルコールにあてることが適当だと考えられています。飲酒後のシメのラーメンなど、炭水化物をついついとってしまう方もいるかもしれませんが、栄養バランスから考えると、控えなければならないのです。

消費エネルギーと摂取エネルギーのバランス

基礎代謝や普段の活動で消費するエネルギー量よりも、食事で摂取するエネルギー量の方が多いと、当然ながら太ってしまいます。エネルギーを必要以上にとっていないか、注意しなければなりません。

50代以降の方が気をつけたいのは、昔よりも基礎代謝量が落ちてきているということです。そのため、若い頃と同じように食べていたら、あっという間に太ってしまいます。毎回カロリーをチェックする必要はありませんが、普段とっているカロリー量をときどきチェックして、消費エネルギーとのバランスが取れているかを確認するようにしましょう。

1日あたりの摂取カロリー1200kcal以上はサプリを摂る必要がない

不足していると思われる栄養素を補うために、サプリメントをとっている方もいるかもしれません。ダイエットのために食事を制限していると、何かが足りなくなるのではないかという気がしてしまいますよね。

しかし実は、栄養学的には1日1200kcal以上のカロリーを摂取していれば、ビタミンやミネラルなどの栄養素が不足することはほとんどないのです。現代の日本人の食事においては、健康な人であれば1200kcalは超えていると考えられます。つまり、多くの人は栄養素が不足していないと考えられ、サプリメントをとる必要はないのです。

食べる順番で何が変わる?野菜から食べるメリット

以前「食べる順番ダイエット」というダイエット方法が流行ったのを覚えているでしょうか。食べる順番ダイエットとは、先に野菜を食べてから、タンパク質や炭水化物を順番にとるというものです。食べるものは大きく変えずに、順番を変えるだけで痩せられるということで、話題になりました。

野菜を先に食べると良いと言われているのは、食物繊維を多く含んでいるからです。食物繊維には血糖値の上昇を抑える効果があります。これによって、体重を適正に保ったり、生活習慣病を予防したりという効果があると言われています。栄養バランスが取れた食事を準備し、さらに順番を意識して食べることで、体型維持にも効果が期待できます。
この効果を活用するものとして、食物繊維を含んだ飲み物や健康食品などが多く販売されているのです。

普段の食事で食物繊維の力を発揮させるために、野菜や食物繊維を含んだ食材(きのこ類や海藻類、こんにゃくなど)を最初に食べると良いでしょう。

デザートがやめられない? 別腹の正体とは

おなかいっぱい食べたはずなのに、ついついデザートを食べてしまう......。そんな経験をしたことがある人が多いのではないでしょうか。「デザートは別腹」という言葉も、よく聞きますよね。この別腹、ただ食べ過ぎの言い訳に使われるフレーズではなく、科学的に根拠があるのです。

十分な量を食べたのだから、物理的には満腹になっているはずです。しかし、脳で感じる「満腹感」は、物理的なものだけで認知されるわけではありません。そこに関わっているのは、血糖値です。胃が広がったことと血糖値が上がったことを、大脳の中枢神経が認識することで、満腹感として認知されるようになります。

しかし、デザートを見ると「食べたい」という気持ちが湧いてしまいます。すると、大脳がそれに反応して、オレキシンというホルモンを出すのです。このホルモンが分泌されると、胃は頑張って働いて、どうにかして胃の中に空間を作ろうとするのです。これが、別腹の正体なのです。

ついつい食後のデザートを食べてしまうという方は、食後は目の前に食べ物を置かないことを心がけ、食事で得られた満足感を大事にするようにしましょう。

食事はむやみに減らさず、バランスと食べ方を意識しよう

食事量を無理やり減らすことは、年齢を重ねた方たちにとって必要な栄養素の不足になりかねません。特にエネルギー産生に関わる栄養素のバランスは偏りやすく、意識して整えることが大事です。それに加えて、食事の取り方にも気をつけることで、肥満の防止や生活習慣病の予防につながります。急に意識することは難しいかもしれませんが、できるところからやってみてはいかがでしょうか。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。