糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

50代からの肥満は病気の原因!注意すべきことは?

身体のこれから

肥満による健康へのリスクは年齢を問わず気をつけるべきです。しかし、老後は体の機能や体力などが人によって差が大きいため、同じ肥満であっても一概に痩せるべきとは言えません。ただし、比較的まだ若い年齢層であれば、減量による健康効果はあるかもしれないので、ご自身の状態を見て判断することが大事です。

【監修】鈴木吉彦医学博士

「肥満は体に良くない」というのはほとんどの人が認識していることではないでしょうか。仕事がひと段落して時間があるから、健康のためにダイエットに励もうかという方もいるかもしれません。

「肥満はさまざまな病気のリスクとなります」と話すのは、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生です。今回は、50代以降の肥満は何に注意したら良いのかについて伺いました。

50歳を過ぎると太りやすい?

肥満がさまざまな病気を引き起こすリスクになることは、多くの方がご存知ではないかと思います。しかし、成人には多いものの、年齢を重ねると食べる量が減ってくるから痩せているイメージがあるかもしれません。

厚生労働省が行った調査の結果によると、男性は50代がもっとも肥満の割合が高く、60代以降は徐々に少なくなっていくことがわかりました。60代で約34%、70代以降では約28%となっています。女性は年齢を重ねるごとに肥満の割合は増えていき、60代以降は27%前後です。

引用:「平成30年国民健康・栄養調査結果」(厚生労働省)

この数字から、50歳をすぎると食が細くなり痩せる人ばかりでなく、肥満のまま歳をとった人が一定数いることがわかります。食事量も一般的に減る傾向にあるとは言われているものの、消化機能など体の状態には個人差がありますので、必要以上に食べるという人もいるでしょう。ただ、基礎代謝は加齢とともに減っていきますので、若い頃と同じように食べていると太ってしまいます。

「歳をとれば自然に痩せる」とは思わずに、普段から食事に注意した方が良さそうですね。

肥満気味の方が注意すべき症状

肥満による健康へのリスクは年齢を問わず気をつけるべきです。膝や腰に過剰な負担がかかることで痛みを生じたり、がんなどの病気を発症するリスク因子になったりします。特に多くみられるのが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病です。

はじめは自覚症状がないケースも多いので、病院で定期的に健康診断などを受けていなければ、気がつかないこともあります。しかし、放置していると重症化してしまうこともあるので、気をつけなければなりません。生活習慣病はどんな病気なのか。その具体的な症状やリスクについて確認しておきましょう。

糖尿病

糖尿病は、糖分を分解するのに必要なインスリンの作られ方や働き方に問題が生じ、食べたものを正常に代謝することができなくなる病気です。1型と2型の2種類がありますが、生活習慣病と呼ばれているのは2型糖尿病で、日本の糖尿病患者の約95%を占めています。

日本において、糖尿病を患う人やその疑いがある人は1000万人を超えています。このうち、60歳以上の約3分の2、70歳以上の約半数と考えられます。この数字から、年齢を重ねると糖尿病は関係がない病気とは言えないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。

糖尿病になると、以下のような症状が現れます。

  • 疲れを感じやすくなる
  • トイレに頻繁にいくようになる
  • ひどくお腹が空いたり、のどが渇いたりする
  • 傷が治りにくい
  • 皮膚が乾燥する
  • 感染症にかかりやすくなる
  • 目がかすむ
  • 手足の感覚が鈍くなる、チクチクした痛みがある

これらは代表的な症状ですが、年を重ねると体の機能の低下によって食後の高血糖や、低血糖を起こしやすくなります。自覚症状も出現しにくくなるので、発見が遅れて重症になる場合もあります。

低血糖による転倒で骨折したり、薬のコントロールが難しかったりと、糖尿病と付き合うことはなかなか難しく、生活の質を落とす原因となっています。

高血圧

年齢が上がるほど、高血圧を患う人数も増えていきます。75歳以上では、約80%が高血圧であると言われるほどです。ただ、すべてが治療すべき病的なものというわけではなく、加齢によって血管が硬くなってしまうため、ある程度は仕方がないのも事実です。しかし、肥満や運動不足などはさらに血圧を高めることになってしまうので、注意が必要です。

高血圧は自覚症状がほとんどないのですが、年を重ねていくと立ち上がり時に起きる起立性低血圧や食後の低血圧が起こりやすくなります。転倒してけがをするリスクが高まりますので、気をつけなくてはなりません。

高血圧を放置していると、脳出血や脳梗塞を起こしてしまうかもしれません。軽度であれば食事などの改善で下がることもありますが、あまりに高い数値の場合は降圧剤を服用することになります。勝手に服用をやめたり多く飲んだりすると、血圧が乱高下して体によくありません。医師と相談しながら、服用する量を決めるようにしましょう。

脂肪肝

脂肪肝は、肥満などが原因で肝臓に中性脂肪がたまった状態をいいます。自覚症状はほとんどなく、採血などで指摘されたり、たまたまほかの不調で超音波検査やCT検査をしたら見つかったり、というパターンが多いです。

多くは症状がないまま経過しますが、約10%の人は肝臓が炎症を起こして慢性肝炎(非アルコール性脂肪肝炎)となり、さらにその20%ほどが肝硬変を起こすと言われています。人によっては、肝臓がんを発症することも。脂肪肝に加え、高脂血症や糖尿病などを合併していると、肝炎になるリスクは高いと言われています。

脂肪肝の基本的な治療は、その原因を取り除くことです。生活習慣に原因があるのであれば、それを改善することがもっとも効果的な治療方法になります。

睡眠時無呼吸障害に注意

肥満の方の中には、睡眠時無呼吸障害を起こしている人が少なくありません。睡眠時無呼吸障害とは、寝ている間に呼吸が止まって、苦しくなって目が覚めるけれど、眠りだすとまた呼吸が止まってしまうことを繰り返している状態のことを言います。大きないびきをかいたあとに呼吸が止まることが多く、日中に眠気が出て仕事などに支障をきたすことも少なくありません。

肥満の人は体脂肪によってのどが狭くなり、仰向けになったときに気道が塞がれてしまうため、無呼吸状態を引き起こします。さらに、血液中の酸素が少なくなることで、心臓が頑張って血液を送り出そうとするので、高血圧になってしまいます。そのほか、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなったり、生活習慣病のリスクになったりすることも指摘されています。

日中の眠気は事故にもつながりかねませんので、早めの治療が必要です。また、年齢を重ねると肥満でなくても無呼吸を起こすことがあります。もし、家族にいびきを指摘されていたり、日中に疲れや眠気を感じたりすることが多いのであれば、一度かかりつけ医に相談してみましょう。

60歳以降は痩せない方が良い?

肥満は健康にさまざまな弊害をもたらすことがわかりました。では、とにかく痩せれば良いのかというと、70代以降の場合はそうとも限りません。

食事療法や運動療法による減量は、膝などの痛みや日常生活動作(ADL)のレベルの改善につながるとされています。40代〜60代の方は同様の効果があるものの、70代〜80代では運動による効果がやや減少したという報告があります。さらに、80歳以上の減量効果に関しては報告が少なく、判断ができません。体重が減少すると、骨密度も下がるという報告もあります。

BMI(註1)で見ると、20〜29.9の人がもっとも死亡リスクが低かったという調査結果もあり、必ずしも肥満が死亡リスクにはならないようです。痩せるべきかどうか、どのくらいの減量を行うと良いのかは、人によって違います。かかりつけ医などに相談して、適切な体重管理を心がけましょう。
(註1)BMIとはBody Mass Indexの略で 体重(kg)÷身長(m)の2乗の数値。肥満や痩せの判定として用いる。

老後の肥満は個別に対応を

老後は、体の機能や体力などが人によって差が大きいです。そのため、同じ肥満であっても一概に痩せるべきとは言えません。ただし、比較的まだ若い年齢層であれば、減量による健康効果はあるかもしれないので、ご自身の状態を見て判断することが大事です。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。