歯科医直伝! 50代から身につけたい正しい歯みがき方法と5つのポイント

身体のこれから

歯みがきが十分できていないと、虫歯や歯周病、口臭の原因になるおそれがあります。何気ない歯みがきですが、日々の積み重ねでこれからの健康が変わってきます。50代以降のお口と歯の健康、そしてお口から全身の健康もいっそう良くしていきましょう。

【執筆者】柴田 育

皆さんは、1日に何回歯みがきをしていますか? 何を使って、何分くらいの時間をかけて、どのように磨いていますか? 口臭も問題ないでしょうか?
毎日の何気ない歯みがきですが、専門家の目から見るとチェックするポイントがたくさんあります。

歯みがきが十分できていないと、虫歯や歯周病、口臭の原因になるおそれがあります。口臭は自分の健康面に関わるだけでなく、周囲にも不快感を与えてしまうこともあります。特に高齢者では、十分にお口や歯の清掃ができていないと、口腔内の細菌が原因で「誤嚥性肺炎」など命に関わる疾患になるおそれもあるのです。

毎日の何気ない歯みがきですが、日々の積み重ねがお口と歯の健康に関わってきます。正しい知識を持っているか、日々実践するかどうかで、将来が変わってくるかもしれません。
今からでも、日々の歯みがきをよりよくすることで、お口と歯の健康状態をもっとよい状態にできます。

今回は、50代以降の方に、今日から実践していただきたい歯みがきの基本と、50代だからこそ知っておきたい歯みがきのポイントを5つ、歯科医がご紹介します。

歯みがきが上手くできていないと起こること

歯みがきは、食べ物や歯についた汚れを取るために行います。また、歯ブラシのブラッシング効果で歯ぐきの血行を促進する効果も期待できます。
歯みがきによって細菌の塊であるプラークがしっかりと除去できないと、虫歯や歯周病、歯の喪失などの病気だけでなく、口臭の発生で対人関係に支障をきたしたり、誤嚥性肺炎等の全身に関わる病気の原因にもなってしまったりするおそれがあります。
逆に言えば、歯科医院に1カ月に1回くらい真面目に通っていたとしても、毎日の歯みがきをするのは自分自身なのです。
この毎日のセルフケアである歯みがきを、「適切な方法」で、「適切な道具」を使って、「適切な頻度」で行わないことには、お口や歯の健康を保つのが難しくなってしまいます。

厚生労働省「e-ヘルスネット|「8020」達成のために必要な予防対策」の情報を基に作図

50代から知っておきたい歯みがきの基本

ここからは、皆さんに50代から知っておきたい歯みがきの基本と5つのポイントをご紹介します。あなたの現在の歯みがきをチェックしましょう。

  1. 歯みがきの時間はどのくらいですか?
  2. いつ、何回歯を磨いていますか?
  3. 歯みがきの順番は決めていますか?
  4. 歯ブラシの毛先は開いていませんか?
  5. 歯間ブラシやフロスは使っていますか?

チェックポイントを確認したら、現在の歯みがきを思い返し、できている部分とできていない部分を確認して、良い歯みがきを心がけましょう。

ポイント1.歯みがきの時間

歯みがきにはどのくらいの時間をかけていますか? 実は、「毎日歯をちゃんと磨いています」とおっしゃる方でも、その時間はバラバラ。30秒で終わる方もいれば、10分くらいしっかりと時間をかけて磨く方もいらっしゃいます。おそらく30秒程度で歯みがきを終えている方は、磨き残しがあると思われます。
歯は、立体的な形をしています。奥歯なら上の面、裏側、歯と歯の間、と立方体のような面を持っていることをイメージしましょう。

大人の歯の本数は、親知らずがあれば全部で32本、親知らずがなければ28本です。すべての歯の、すべての面の汚れを落としきるためには、ひとつの歯を磨くのに10秒はかかります。しっかりと磨くには、少なくとも5分から10分のまとまった時間が必要です。
一概に時間をかけたからといって磨き残しが完全になくなるわけではありませんが、ひとつひとつの歯をしっかり磨くイメージを持って時間をかければ、磨き残しをしにくくなるでしょう。

ポイント2 歯みがきのタイミング

歯を磨く回数、タイミングはどのくらいがベストでしょうか。正解はありませんが、食べ物のカスなどが残りやすい食後に毎回磨くのが良いとよく言われます。唾液の分泌量が減る就寝時は、虫歯になるリスクが高いとされていますので、食後の毎回の歯みがきに十分に時間を取れない場合は、せめて夜寝る前にしっかりと時間をかけて磨き、すべての歯の汚れをしっかりと落としきることを心がけましょう。

ポイント3 歯みがきの方法

歯は、磨く順番を決めておくと磨き残しの無い状態に近づきます。たとえば、右上の外側から磨いて左上まで行ったら裏側に移り、左上から右上まで磨く。その後、右下の歯に移って外側を磨き、左下まで磨き終わったら、そのまま左下の裏側を磨いて、右側に戻る、という具合です。これは、歯科医師も使っているプロのコツです。

次に、歯ブラシの動かし方です。大きく動かすのではなく、小刻みに震わせるように歯面に90度にあてて使いましょう。動かし方が大きすぎたり歯ブラシを持つ力が強すぎたりするとしっかりと汚れが落ちないだけではなく、歯ぐきが傷ついてしまうこともあります。
歯と歯ぐきの間の汚れは、歯ぐきの方に毛先を45度向けて磨くと効果的です。

50代以降の方ではインプラントや入れ歯等、補綴(ほてつ)物を入れている方も多いと思います。入れ歯などは、必ず取り外してから歯みがきをしてください。インプラントをしている方は、インプラントの周囲を歯ブラシで優しくブラッシングしましょう。「タフトブラシ」と呼ばれる小指の先位の毛先の小さな歯ブラシがあります。細かい部分を磨くにはそのような歯ブラシを用意するのもオススメです。
インプラントは、直接骨に埋入されていますので、炎症を起こすと顎骨炎など重篤な症状が出てしまいます。そうならないためにも必ず定期的に歯科医院を受診して必ずメンテナンスを受けましょう。

50代からの歯ブラシ・歯みがき粉の選び方

次に50代の方の目線での歯ブラシ、歯みがき粉の選び方をご紹介します。

ポイント4 歯ブラシの選び方

いまお使いの歯ブラシをチェックしましょう。毛先が開いているようなら交換の時期です。歯ブラシの毛先が開いていると汚れを落とす効率も悪くなり、また歯ぐきを傷つける原因にもなります。交換の目安は、1カ月に1回が標準的です。

次に本題の歯ブラシの選び方ですが、基本的にご自身が持ちやすく磨きやすいものを使って問題ありません。とはいえ、磨きぐせによって歯ブラシのタイプにも向き不向きがあります。歯を磨く力が強すぎると、歯が削れて知覚過敏のようにしみやすくなったり、歯ぐきが下がったりするおそれがあります。磨きすぎてしまう方、磨く力の強い方には、毛先の柔らかい歯ブラシがおすすめです。

ポイント5 歯みがき粉・歯みがきの補助器具について

まず、歯みがき粉ですが、しっかりと歯みがきができれば、使う必要はありません。歯みがき粉は爽快感を得たくて使われている方が大多数でしょう。しかしながら、歯みがき粉の爽快感や泡立ちが、しっかり磨けていないのに、磨けているように感じてしまうこともあるのです。
そのため、歯科医院で清掃指導をする場合は、最初は歯みがき粉を使わずに歯みがき指導をします。すっきりと磨ききった気持ちの良い感じを身体で覚えて実感するまで、歯みがき粉を使わずに磨いてみる経験をしてみることも大切です。

歯みがき粉は、薬効成分が配合されていない化粧品と、薬効成分などが配合されている医薬部外品があります。日本で販売されている多くは、後者です。基本的には、歯ブラシだけを使って汚れを落とすことが主であり、歯みがき粉は補助程度にとらえましょう。なお、薬効成分は商品により異なりますが、効能として記載できるものは、むし歯の発生および進行の予防、歯肉炎予防、歯がしみるのを防ぐ、口臭の防止など規則で決まっています。50代の方の歯の悩みの多くは、歯周病や、歯ぐきが下がることによる知覚過敏ではないでしょうか。冷たいものがしみる自覚のある方は、歯がしみるのを防ぐ「知覚過敏用」と書いてある歯みがき粉、歯周病が心配な方は「歯周炎予防用」を使うと良いでしょう。

最後に普通の歯ブラシでは磨ききれない汚れを落とすのに適した補助道具を2つご紹介します。ひとつは「フロス」です。フロスは歯と歯の間の歯についた汚れを落とす目的で使います。虫歯予防に効果的です。
もうひとつは、「歯間ブラシ」です。歯間ブラシは歯と歯ぐきの隙間の汚れを落とすために使用します。ただし、フロスを使って落とす場所にある汚れは取れません。歯間ブラシは、フロスでは届かない歯と歯ぐきの間の汚れを取る効果と、歯ぐきへのマッサージ効果があります。

歯間ブラシにはさまざまなサイズがあり、隙間がないところに無理矢理差し込んでしまうと歯ぐきが下がってしまうこともあります。一度、歯科医院で適切なサイズの歯間ブラシを教えてもらうことをおすすめします。

まとめ

何気ない歯みがきですが、日々の積み重ねでこれからの健康が変わってきます。この記事をお読みの皆さんは、読む前と比べて歯みがきに対する意識が少し高まったことと思います。記事でご紹介したポイントを意識しつつ、定期的な歯科受診を心がけることで、50代以降のお口と歯の健康、そしてお口から全身の健康もいっそう良くしていきましょう。

「8020」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動と目標です。(※) 実はこの目標は、年々達成する人が増えています。30年先の80代になったとき"8020の達成者"になれるよう、今日から努力をしていきたいですね。

※ 厚生労働省 e-ヘルスネット  8020運動とは
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-003.html

執筆者

柴田 育

歯科医師・歯学博士。株式会社SPARKLINKS.代表。

2児の母。
東京医科歯科大学大学院卒業、北海道大学歯学部卒業。東京医科歯科大学矯正外来(非常勤)を経て、フリーランス歯科医師(矯正)として歯科に携わる。