糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

「一日3食」は歳を取っても食べなくてはいけないの?

身体のこれから

体に良い食事やバランスのとれた食事など、いろいろなところで言われていますが、万人におすすめの食事があるわけではありません。それぞれの体の状態を考慮して体に合わせた食事をとるように心がけましょう。

【監修】鈴木吉彦医学博士

「食事は3食きちんと食べた方が良い」、「朝食は抜いてはいけない」と言われたことはありませんか? 健康のためには、朝食が大事だという話もよく聞きますよね。でも、本当に3食きちんと食べなくてはいけないのでしょうか? 2食に減らしたとしても、しっかり食べられれば良いということにはならないのでしょうか。

今回は、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生に、気になる食事の回数について伺いました。

フランス人の食事は意外と質素

豪華で準備に手の込んだイメージのあるフランス料理ですが、実際のフランス人の食事を見てみると、意外と質素なものです。3食食べてはいるものの、朝食やパンやシリアルにコーヒーといった軽食で済ませ、昼食はお肉やお魚、野菜、炭水化物をしっかりと食べる習慣があります。夕食はやや軽めで、キッシュにスープ、少しの野菜で済ませるということも多いようです。

食事は3食きちんと食べなければいけないもの、と思われている方もたくさんいるかもしれません。毎食バランスを考えないと、と気をつかっている方もいるかと思います。それができることは素晴らしいですし、苦にならず続けられているのはとても良いことです。

ただ、毎食きちんと考えて準備するのは負担とか、料理はあまり得意ではないという方もいるでしょう。そんな場合は、1食ですべてのバランスを整えようとせずに、1日トータルで判断するようにしても大丈夫です。フランス人の食事のように、生活スタイルに合わせてメニューを考えてみると良いでしょう。朝はさほど食べられないのでパンとコーヒーだけ。お昼と夜でタンパク質や野菜を多めにするなど、工夫してみてください。

食事回数を減らさない方が良い?

加齢によって量を食べられなくなってきた人は、1食あたりのエネルギー量や栄養素が減ってしまいやすいので注意が必要です。2食で必要な量を補えれば良いのですが、食事量が減っているのに食事回数も減らしてしまうと、栄養不足になってしまうかもしれません。

食事回数を検討するのであれば、ご自身の体の状態、食べられる量や体重、運動量などを考慮するようにしましょう。もし食が細くなってきていて十分に食べられないのであれば、3食しっかり食べることをお勧めします。

朝食抜きは本当に健康に悪いのか

朝食を抜くことは健康に良くないと言われているのを聞いたことがある方も多いかと思います。きちんと食べないと、ぼんやりしたりイライラしたりして、日中の活動に影響を及ぼすということも言われます。実際に子どもや働き盛りの人が朝食を抜くことは問題視され、朝ごはんを食べるよう働きかけたり、朝食を提供する企業が出てきたりしています。

しかし、仕事を引退したあとは、現役世代よりも活動量も必要エネルギーも少ないのだから、朝食くらい抜いてもいいのでは、と思われるのではないでしょうか。集中して仕事をしなければならないわけでもないし、1食で十分な量を食べられればそれでOKと考えることもあるでしょう。

しかし、朝ごはんは健康管理において非常に重要であることを示唆する調査や研究が多くあります。その中には、朝食を抜くと心臓病のリスクである肥満度や血圧、血液中のコレステロール量が増えたり、脳卒中のリスクが高まるという結果を伝えるものなどがありました。朝食を抜くと昼食後や夕食後の血糖値が上がりやすくなると言えるでしょう。摂取エネルギー量や栄養バランスにかかわらず、病気の予防のためにも朝食はとったほうが良いですね。

最近流行りのGLP1ダイエット

高齢者の食事の悩みといえば、食事量が減ってしまった人や、痩せている人ばかりではないと思います。中には、間食やお酒がやめられない人や、食事を必要以上にとってしまう人もいるかもしれません。油っこいものなど、高カロリーなものが好きで、肥満気味という人もいるでしょう。

なかなか食欲を抑えられないという人には、最近話題のGLP-1ダイエットがおすすめです。脳の食欲中枢に働きかけることで食欲を抑え、痩せることが可能です。肥満の悪化を防ぎ、糖尿病などの病気にならないようにすることも期待できるでしょう。GLP-1は糖尿病薬として正式に認可されている薬で、糖尿病を扱うクリニックで使われるほか、美容クリニックなどでも取り扱いが開始されていますが、健康面をしっかり診ながら処方できる糖尿病専門医から指示を受けることをおすすめしています。

※グルカゴン様ペプチド-1の略

アメリカドクトカゲは食事を何ヶ月も食べない?

このGLP1製剤は、使われている成分がアメリカドクトカゲの唾液から見つかったことで研究が始まったものです。

アメリカドクトカゲの食事回数は非常に少なく、数ヶ月に1回しか食べなくても生きていけるのだとか。その理由は、1回の食事で多量に食べた食物から得た脂肪分を、尾の部分に蓄えられるからだそうです。1回の食事量が多いと、一般的に血糖値が上がりやすいと言われています。しかし、アメリカドクトカゲは、食事の前後で血糖値がほとんど変わりません。そのことが、発見に至ったきっかけのようです。

そうして成分が発見され、できたのがGLP1製剤です。もちろん薬なので合う人と合わない人、効果が出やすい人とそうでない人がいますが、うまく活用すれば、食事の回数にこだわる必要はないのかもしれません。

体に合わせた食事をとろう

体に良い食事やバランスのとれた食事など、いろいろなところで言われていますが、万人におすすめの食事があるわけではありません。食事回数についても、健康的に3食食べられれば理想的ではありますが、それが難しい人もいるでしょう。

痩せているか肥満気味か、量はきちんと食べられるのかなど、それぞれの体の状態を考慮して判断することが大切です。もし太っている人や糖尿病の人で、なかなか食事量を抑えられないという方は、薬の力を頼ってもいいのかもしれません。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。