糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

50歳を過ぎたら糖尿病に注意!おすすめの食材は?

身体のこれから

糖尿病にならないためには、必要以上のカロリーを取りすぎない、バランスのとれた食事をとる、規則正しく3食食べることに加えて早食いにならないようにゆっくり食べたり、腹八分を心がけたりすることも大切です。日頃から意識しておきましょう。

【監修】鈴木吉彦医学博士

仕事をリタイアしたり、子どもが自立したりして、自由な時間が多くなると、家のことや趣味など、充実した生活を楽しみたいという方はたくさんいるのではないでしょうか。元気に生活するためには健康管理が大切。その中でも、食事は毎日のことなので、日頃から意識しておかなければなりません。しかし、「この食材は体に良い」などのたくさんの情報に翻弄されてしまうことはありませんか?
「食べるべき食材は、その人の身体の状態によって変わります」と話すのは、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦です。今回は鈴木先生に、老後を元気に暮らしたい方におすすめの食材について伺いました。

肥満かどうかでおすすめ食材が違う?

その方の健康状態によって摂るべき栄養は変わってきます。その代表的なものが、肥満の有無です。肥満気味の方は、それ以上太らないように気をつけなくてはなりません。逆に痩せ気味の人は、できるだけ体重を維持するか、少し増やす必要があります。

厚生労働省が行った調査によると、女性の場合は年齢が上がるにつれて、肥満の人の割合が増えていきます。60歳以上では、全体の24%前後が肥満という結果でした。男性の場合は、50歳代をピークに減少していき、60歳代で約32%、70歳以上で約24%となっていました。

逆に、痩せていて低栄養状態にある人の割合は、男性は70歳代以降で徐々に増加し、85歳以上は約24%でした。女性は、70歳代〜84歳以下では20%前後で推移していますが、85歳以上になると約34%まで上昇しています。

肥満は糖尿病や脂肪肝など、さまざまな疾患を引き起こるリスク因子として、多くの人が認識しているのではないでしょうか。しかし歳を重ねて行くと、痩せについても注意が必要です。痩せすぎは、もともと持っている病気を悪化させたり、感染症に弱くなったりする原因になると言われています。太りすぎ、痩せすぎにならないために、食習慣は大切なものなのです。

肥満がある場合

肥満がある方は、これ以上太らないように注意しなくてはなりません。だからと言って、単純に食事量を減らせばいいのかというと、そういうわけでもありません。

50歳以降になると、ただ食事量や摂取カロリーを減らすだけでは必要な栄養素が足りずに、筋肉量が低下してしまいます。そこまで肥満は改善されていないのに、筋肉量だけは減っていってしまう「サルコペニア肥満」と呼ばれる状態になる可能性があるのです。そうなると、転倒しやすくなったり病気を発症したりしやすくなってしまうので、そうならないための注意が必要になります。

その注意点を頭に置いておいたうえで、まずは栄養素のバランスを気にすることが大切です。全体のうち、50〜60%を糖質(穀類やイモ類、砂糖、果物などに多く含まれる栄養素)、15〜20%をタンパク質(肉や魚、卵など)、20〜25%を脂質となるように、食事のバランスを整えるのが理想です。

摂取エネルギーの目安を簡単に把握する方法として、お弁当箱を活用してみましょう。NPO法人食生態学実践フォーラムの3・1・2弁当箱法を参考にしながらご説明します。

まずは、ご自身の標準的な摂取エネルギーに合うサイズのお弁当箱を用意します。1日の標準摂取エネルギーは、各年齢・性別で以下のようになります。

1日の標準摂取エネルギー

年齢

男性

女性

50~69歳

2400kcal

1950kcal

70歳以上

1850kcal

1550kcal

※標準的な体型、一般的な活動量(家事や軽い運動をする程度)の場合

たとえば、60歳の男性であれば、2400kcalが目安です。これを3で割れば、1食当たりのエネルギー量の目安は800kcalです。お弁当箱は、この数字に合わせて800mlのものを用意しましょう。

お弁当箱が用意できたら、食事を詰めてみましょう。

例えば、炭水化物(ごはんなど)を3分の1に詰めます。残り半分のスペースの3分の1はタンパク質(肉や魚、卵など)、3分の2は野菜のおかずを詰めたら完成です。これで、1食あたりの量と食材の割合の目安が簡単に把握できます。

お弁当箱を活用する場合、ご飯やおかずをぎゅうぎゅうに詰めるのはNGです。また、調理法によってもカロリーや塩分が多くなってしまう危険性があるため気をつけましょう。油や塩分が多いおかずは1品のみとし、他のおかずはヘルシーなものを詰めていきます。

栄養バランスに気をつけるという前提で、おすすめできる食材は、低カロリーで食物繊維が多いきのこ類や海藻類、ビタミンやミネラルの多い野菜類です。摂取カロリーを抑えながらも、満腹感のある食事になります。

それだけではなく、メカブなどの一部の海藻類に含まれる水溶性食物繊維は、血糖値が上がるのを緩やかにしてくれる効果があると言われています。野菜類に含まれるビタミンなどは、糖質や脂質の代謝を高める作用があります。

肥満がある場合におすすめの食材

きのこ類

低カロリー、食物繊維が豊富

海藻類

低カロリー、食物繊維が豊富、血糖値の上昇を緩やかにする(メカブ、もずくなどの水溶性食物繊維を含むもの)

野菜類

ビタミン・ミネラル類が糖質や脂質の代謝を高める、食物繊維が豊富

肥満がない場合

肥満がない50歳以上の方の場合は、痩せないように注意することが必要です。加齢に伴い、だんだんと食事量が減ってくる方も多いので、気がつかないうちにエネルギー不足や栄養不足になってしまいます。しっかりと摂取エネルギーを確保しながら、栄養が偏らないように意識しましょう。

年齢を重ねた方の食事で少なくなりがちなのが、タンパク質(主に肉類や魚類などの動物性タンパク質)や油分です。胃もたれするから、動かないのに食べ過ぎだから、と避ける人も少なくありません。しかし、元気な状態を維持するためには、どちらも必要な栄養素です。多量にとる必要はありませんが、敬遠せずに食事に取り入れていきましょう。

食事の量をあまり多く食べられない、という人は、食べ方も工夫してみると良いでしょう。ご飯の上に少しシラスや納豆を乗せると、タンパク質の摂取量が増えます。肉類も、焼いたり揚げたりすると食べにくいのであれば、煮物でさっぱりと食べても良いかもしれません。根菜類も一緒に調理すれば、ほかの栄養素も一緒にとることができますね。

その他の栄養素で不足しやすいのが、カルシウムです。カルシウムが不足は骨粗しょう症の原因になりますので、意識してとりましょう。ヨーグルトなどの乳製品は、タンパク質だけでなくカルシウムもとれるのでおすすめです。

食が細い方におすすめの食材

シラスや納豆

タンパク質が摂りやすい

ヨーグルトなどの乳製品

タンパク質とカルシウムが摂れる

肉類や魚類

動物性タンパク質が摂れる。油分が苦手な人は茹でたり煮物にしたりすると食べやすい

豆腐や豆乳などの大豆製品

タンパク質やカルシウムが摂れる。

ほうれん草や春菊、カツオ、牡蠣、あさりなど

鉄分が摂れる(貧血対策)

ゴボウやレンコンなど

食物繊維豊富(便秘対策)

糖尿病にならない食事とは

50歳をすぎると、糖尿病を持つ人や予備軍の人の割合が増えてきます。膵臓からのインスリンの分泌量など身体機能が低下してくるので、その傾向は仕方ないことかもしれません。けれど、糖尿病になるとさまざまな弊害をもたらしますので、できるだけ避けたいものです。

糖尿病にならないためには、食事が重要です。食事において基本となることは、以下の3つです。

  • 必要以上のカロリーを取りすぎないこと
  • バランスのとれた食事をとること
  • 規則正しく3食食べること

加えて、早食いにならないようにゆっくり食べたり、腹八分を心がけたりすることも大切です。特定の食材をとって糖尿病を予防するという方法は、今のところありません。毎日の食事を見直すことが、元気な生活につながるでしょう。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。