糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

できることなら長生きしたい!100歳まで生きる秘訣とは?

身体のこれから

長寿の方を見てみると、生活習慣病にならないことや、筋力を低下させないことなどが大切であることがわかります。毎日の生活を大切にして、元気な100歳を目指しましょう。

【監修】鈴木吉彦医学博士

人生100年と言われる現代、長生きする人は珍しくなくなりました。仕事を退職しても、20年30年と時間が残されていることになります。せっかく老後の時間があるのだから、元気に過ごしていきたいですよね。

「100歳以上の長寿の方には、特徴があるのです」と話すのは、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生です。今回は、100歳を超える高齢者の健康の秘訣について伺いました。

100歳以上の人には糖尿病が少ない

100歳以上の高齢者の方の特徴に、糖尿病が少ないことが特徴としてあります。これは、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターが行った「東京百寿者研究」によって明らかになったことです。

一方、糖尿病が疑われる人の割合は、年齢が上がるにつれて増えていきます。厚生労働省が行った「国民健康・栄養調査報告」によると、70代以上の男性で約26%、女性で約20%の人に糖尿病が疑われるとのことでした。日本の糖尿病の患者の半数は、70歳以上ではないかとも言われています。

高齢者の糖尿病では、食後に高血糖になりやすかったり、低血糖になっても症状が出にくかったりします。気がついたときには重度の低血糖になる可能性があり、危険です。動脈硬化などの合併症が多く、認知機能の低下やサルコペニアなども起こしやすいという特徴もあります。

糖尿病を患っている場合、ほかの病気を引き起こすリスクが高く、それゆえに長生きするのが難しいのです。

軽い貧血は良い証拠?

貧血というと、立ちくらみがしてしまうとか、体のどこかで出血しているとか、良くないイメージを持っている人は多いかもしれません。

実は、軽度の貧血なら、90代前後の元気な長寿の方にとって必ずしも悪いことではありません。むしろ、そうなって当たり前のことと言えるでしょう。

50代以降の方を対象にした血液検査の結果を見てみると、貧血を見る指標であるヘモグロビン値は、徐々に低下する傾向にあります。これについては、血液を作り出す機能が低下するなど、老化に伴って起こる生理的現象が一つの要因ではないかと考えられています。

もちろん、貧血は病気が原因で起こっているものもありますので、きちんと体の状態を見ておくことは必要です。高齢者の方は特に個人差も大きいので、それぞれで体の状態の傾向を知った上で判断しなければなりません。

貧血を起こすような原因が見当たらず、検査結果に大きな変化もなく元気に過ごせているのならば、軽い貧血は「年相応に元気な証拠」と思っても良いのかもしれません。

ご長寿は握力が強い!?

高齢者の健康と握力には関連があるということが、多くの研究によって指摘されてきました。平成25年から2年にわたって、高齢者を対象に行われた調査でも、握力の低さと死亡リスクの関係について述べられています。

測定が簡単にできる握力は、筋力がどれくらいあるかの指標としても用いられることが多いです。スポーツジムやデイサービス、病院のリハビリテーション室などで測定する機会があるかもしれません。もし測定できたら、以下に示してある年齢別の平均値を参考に、ご自身の筋力がどれくらいなのか把握してみましょう。

年齢

60~64

42.85kg

26.31kg

65~69

39.98kg

25.20kg

70~74

37.36kg

23.82kg

75~79

35.07kg

22.49kg

参考:健康長寿ネット「高齢者の握力測定

あくまで平均値ですので、この値に近い状態でなければならないというわけではありません。定期的に測定して、自分の値がどのくらいなのかを知ることと、どのように変化していくのかを把握することが大切です。

筋力の低下は加齢によって起きる生理的現象なので、緩やかに握力が低下する分には問題ありません。しかし、急激に変化したり、あまりに低かったりする場合は、全身の筋力が低下していることが考えられますので、リハビリテーションなどによる筋力の向上が必要です。病気や怪我の影響で握力が低下していることも考えられますので、握力の低下を感じたらかかりつけ医や整形外科医に相談してみると良いでしょう。

握力が低下すると、食事がしにくくなったり、ドアが開けられなくなったりと、日常生活にも大きな支障が出てきます。ここから考えると、100歳以上の元気で長生きしている方、身の回りのことをある程度自分でできている方は、握力が平均よりも強めの傾向があると言えるのかもしれません。

沖縄長寿説が崩壊

長い間、長寿県として知られてきた沖縄県ですが、近年その傾向に陰りが見られています。2017年の平均寿命ランキングでその順位は大きく後退し、女性は7位、男性はなんと36位だったのです。この結果は、沖縄県民だけでなく、国民全体でも驚きのできごとでした。沖縄県は65歳未満の現役世代の死亡率が高く、このことが平均余命※が延びなかった原因と考えられています。
※平均余命とは、「その時点での年齢で残り何年生きるか」の期待値、平均寿命は「その年に生まれた赤ちゃんがおよそ何歳まで生きるか」を示すものです。
以前の沖縄県は、煮たイモを中心とした低カロリーで低糖質・低脂肪の食事が主で、いわゆる伝統的な沖縄料理は特別なときだけのものでした。これがアメリカの食習慣が流入することで徐々に変化し、糖質と脂質の摂取が大幅に増えたのです。さらに自動車の普及による運動不足なども重なり、肥満や糖尿病が増えていきました。そのことが、平均余命の延びの鈍化につながっていると考えられています。

実際に、沖縄県における糖尿病や肝疾患といった生活習慣病による死亡率は、他の都道府県と比べて高めです。

この変化を見ると、元気に長生きするためにはいかに生活習慣が大事かということが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

100歳を目指して元気でいるために

長寿の方を見てみると、生活習慣病にならないことや、筋力を低下させないことなどが大切であることがわかります。食事も運動も地道な取り組みですが、健康でいるためにはもっとも近道で確実な方法です。毎日の生活を大切にして、元気な100歳を目指しましょう。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。