糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

若い時と同じではダメ!50代から食事を変えよう

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体重が気になるからと、カロリーを減らすことよりも栄養素をどう取るか、食事内容のバランスは取れているか、ということの方が重要です。50歳からは積極的にタンパク質をとり、健康的なカロリー摂取を心がけましょう。

この記事の監修

鈴木吉彦医学博士

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。

毎日の食事が健康につながることは、多くの方が理解していることだと思います。太ってきたから痩せるために食事を減らしたり、病気にならないように栄養バランスを整えたりと、普段から食事に気をつかっている方も多いのではないでしょうか。

今回は、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生に、50歳以上の方が気をつけるべき、食事についての考え方について伺いました。

健康的なカロリーの考え方

体重が気になるからと、食事制限によるダイエットを経験したことがある方は多いのではないでしょうか。摂取するカロリーを減らせば痩せるからと、低カロリーのものばかりを食べている方もいるかもしれません。

たしかに、摂取するカロリーを減らして、消費するカロリーの方が多くなれば、理論的に痩せることは可能でしょう。ただし、健康的に痩せられるかというと、そうとは限りません。

カロリーよりも大事なのは栄養バランス

健康な人が普通に食べていれば、1日1200kcal以上のエネルギーを摂取していると言われています。

この食事がバランスのとれた内容であれば、栄養学的に見て、ビタミンやミネラルなどが不足することはないと考えて良いでしょう。ダイエットのために食事量を減らしたとしても、1200kcal以上あれば少なくとも栄養が不足することはないと考えられます。

カロリーを制限したうえ、食事内容が偏ったものであれば、必要な栄養素が取れなくなってしまう可能性があります。つまり、体重は減るかもしれないけれど、栄養素が偏って不健康になってしまうかもしれないのです。

カロリーを減らすことよりも、栄養素をどう取るか、食事内容のバランスは取れているか、ということの方が重要なのです。

50歳以上が最低限摂取すべきエネルギー

カロリーよりも栄養バランスが重要とはいえ、50歳以上になると、食事の量がなかなか取れないという方も増えてきます。一見すると健康的な食事でも、必要なカロリーには足りていないこともしばしば見受けられます。

厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」によると、1日に必要なカロリーは以下のように示されています。

 

男性

女性

身体活動
レベル


(低い)


(普通)


(高い)


(低い)


(普通)


(高い)

50〜69歳

2100

2450

2800

1650

1900

2200

70歳以上

1850

2200

2500

1500

1750

2000

身体活動レベルは、普段の活動がどれくらい多いかの目安となるものです。これがどのくらいかによって、必要なカロリー量は変わります。

  • レベルⅠ...生活の多くを座って過ごす状態
  • レベルⅡ...買い物や家事、軽い運動をする程度
  • レベルⅢ...立って過ごすことが多い人や活発に運動をする人

上記を目安に、ご自身がどのくらい活動しているかを振り返ってみると、おおよその必要カロリー量が見えてきます。これをあまり上回ると肥満になってしまいますし、逆に少なすぎても栄養不足になってしまうおそれがあります。

気にしすぎる必要はありませんが、ときどき意識してみると良いでしょう。外食時などにメニュー表でチェックしてみると、どのくらいのカロリーをとっているかがわかります。

最近では、食事の写真からカロリーを計算できるスマートフォンのアプリもあります。普段の食事の傾向を知るために、利用してみても良いでしょう。

50歳から積極的にタンパク質をとりましょう

栄養素の観点から見ると、タンパク質を摂取することは大切です。年齢を重ねると、筋肉量が徐々に減ってきます。できる限り筋肉量を減らさないためにも、タンパク質の量を意識するようにしましょう。

肥満体重の状態で筋肉が衰えている、サルコペニア肥満というものも増えています。筋肉が減ったために重たい体を支えきれず、腰痛や膝の痛みを引き起こしやすくなると言われています。痩せている人であっても、太っている人であっても、タンパク質をとることは重要なのです。

50歳以上は糖質制限をすべきではない?

近年、ダイエット法として「糖質制限食」が話題になっています。糖分の取りすぎは良くないと言われますから、糖質制限食は健康そうに見えるかもしれません。
しかし糖質制限食は、一時的な減量には適しているものの、リバウンドしやすいダイエット方法です。そのため、長続きはしないものとされています。

減量することだけを目的に、一時的に糖質を減らすという方法は、完全に間違っているとはいえません。短期間であれば、油よりも糖質を減らす方が減量しやすいということは知られています。

けれど、糖質制限は健康に良いからと過度に行って、肉類などの食材を大量に摂取してしまった結果、高血糖や高コレステロールになるケースが目立っています。

海外では、糖質制限によって死亡率が悪化するという報告もあります。50歳以上の方の場合、肉類などがあまり多く食べられない方も多いです。そのような方が糖質制限を行うと、食事量や摂取カロリーが減ってしまい、かえって健康に悪影響となってしまうかもしれません。

油を制限することは間違い?

油をまったくとらないという食事療法は、以前流行したことがありました。その頃は、日本食が西洋食に切り替わって、食卓に油分の多いおかずが増えた時期です。そのことによって、生活習慣病などの増加が指摘され始めていました。油抜きダイエットは、食の欧米化を断ち切るという意味でも、注目された食事療法でした。

しかし、油は体にとって必要な栄養素のひとつです。油をまったく取らずにいると、脂溶性ビタミンも不足しがちになります。皮膚表面の油も少なくなり、肌もカサカサになるでしょう。とくに40歳以上の男性は、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)を起こしやすいので、皮膚表面には適度の油分が必要です。

過度な油分は良くありませんが、まったくとらないというのも健康には良くないのです。

果物は食べても良い?

50歳以上の方の食事を伺っていると、食後に果物をたくさん食べる方が多いです。糖質を気にされる方がいるかもしれませんが、生活習慣病がなければ食べても大丈夫です。

しかし、生活習慣病がある場合には注意が必要です。果物は一般的に果糖を多く含んでおり、過剰に摂取すると中性脂肪が増えたり、肥満になったりするおそれがあります。肥満がある方や脂肪肝がある方は、果物の摂取を控えた方が良いでしょう。

50歳からの食事はバランスを大切に

年齢を重ねると、若い頃とは基礎代謝量など体の状態が変わってきます。むやみに減らしたりするのではなく、必要な栄養をとることに気を配りながら、食事管理をしていきましょう。