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放っておくと大病の原因に! 意外と怖い「脂質異常症」とは?

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脂質異常症とは、血液中の脂肪分が増えすぎた状態で、動脈硬化を引き起こす最大の要因とも言われています。健康診断で「脂質異常症」と指摘された方は、その日から対策を始めましょう。

この記事の監修

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。

「脂質異常症」をご存知でしょうか?
かつて高脂血症と呼ばれていた脂質異常症は、血液中の脂肪分が増えすぎた状態です。動脈硬化を引き起こす最大の要因とも言われており、脂質異常症と診断された方はもちろん、コレステロール値が若干高い"予備軍"の方も早めの対策を取ることが重要です。

今回は、脂質異常症とは何か、脂質異常症と動脈硬化の関係、今からできる対策について解説します。

脂質異常症は「動脈硬化」の最大の危険因子

「脂質異常症」とは、どのような病気でしょうか? 以下は、厚生労働省ウェブサイトからの引用です。

中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常をきたし、血液中の値が正常域をはずれた状態をいいます。動脈硬化の主要な危険因子であり、放置すれば脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患をまねく原因となります。

脂質異常症 / 高脂血症  e-ヘルスネット(厚生労働省)より引用

高脂血症から脂質異常症に名称が変更された背景には、診断基準が関係しています。
現在の診断基準については後ほど紹介しますが、従来は血液中の総コレステロール値がひとつの指標でした。しかし、総コレステロール値が高い人のなかには善玉コレステロール(からだにとって良いコレステロール)だけ高い人がいます。善玉コレステロールは、数値が低いほうが問題なので、善玉コレステロールの高い人を高脂血症と呼ぶことには矛盾がありました。また、善玉コレステロールが低い人を高脂血症と呼ぶのも適当ではないなどの理由もあり、2007年に名称が変更されたのです。

厚生労働省によると、現在、脂質異常症の診断基準は以下のようになっています。

LDLコレステロールが140mg/dl以上

高LDLコレステロール血症

HDLコレステロールが40mg/dl未満

低HDLコレステロール血症

中性脂肪が150mg/dl以上

高トリグリセライド血症 (高中性脂肪血症)

※総コレステロールは、診断基準ではなく、あくまでも参考値として記載

この表からもわかるように、現在は診断基準から総コレステロール値が除外されており、「LDL(悪玉)コレステロールが140mg/dl以上」「HDL(善玉)コレステロールが40mg/dl未満」「中性脂肪(TG:トリグリセライド)が150mg/dl以上」のいずれかで脂質異常症と診断されます。

ここで、コレステロールについて少し説明します。
コレステロールは血液中でたんぱく質と結合し、「リポたんぱく質」と呼ばれる物質に変わります。リポたんぱく質にはいくつか種類があり、その中でも特に重要なのがLDL・HDLコレステロールです。

「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールの役割は、肝臓で合成されたコレステロールを血管内に運ぶことです。一方、「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールは、血管内の余分なコレステロールを回収し、肝臓に持ち帰る役割を担っています。お互いが適度なバランスを保っているうちは良いのですが、悪玉コレステロールが多すぎたり、善玉コレステロールが少なすぎたりしてバランスが崩れると、血管内の脂肪分が増加して「脂質異常症」となります。

俗に血管内の脂肪分が増えすぎた状態を、"血液がドロドロ"と表現しますが、脂質異常症になっても自覚症状はまったくありません。そのため、普通に生活しているだけでは脂質異常症に気づかず、血液検査で異常を指摘されても「特に症状がないから」と放置する方がいます。

脂質異常症を放置するとどうなるのでしょうか? 余分な脂肪が血管内に溜まっていくと、やがて「プラーク」と呼ばれる塊になります。プラークは血液の流れを悪くするだけでなく、何かの拍子で破裂すれば血栓を作る原因にもなる非常に厄介な存在です。

日本臨床内科医会「わかりやすい病気のはなしシリーズ20 脂質異常症(高脂血症) P6」の情報を基に作図

血栓によって血液の流れが途絶えると、その先にある組織や臓器は壊死します。それが心臓で起こると「心筋梗塞」、脳で起こると「脳梗塞」となり、重い後遺症が残ったり命を落としたりすることもあるのです。
ご存じの方も多いでしょうが、心疾患や脳血管疾患は日本人の死因上位を占める病気で、決して他人事ではありません。

このように、適切に対処しなければ確実に動脈硬化を進行させ、「急死」という最悪のケースもあり得るのが脂質異常症の怖いところです。脂質異常症を決して軽く見てはいけない理由が、これでおわかりいただけたと思います。

脂質異常症になりやすい人の特徴とは?

脂質異常症になりやすい人には、以下のようにいくつか特徴があります。

  • 食習慣の乱れがある
  • 多量の飲酒を好む
  • 運動不足
  • ストレス過多

特に普段の食習慣や運動習慣は重要で、脂肪分のとり過ぎや運動不足による肥満は、脂質異常症の主な要因となります。また、強いストレスを感じると副腎皮質ホルモンの分泌が増え、それによってコレステロール値が上昇することもわかっています。
脂質異常症は生活習慣病の一種であるため、まずは普段の生活を見直すことが重要です。

さらに、厚生労働省の統計(※)によると脂質異常症の総患者数は220万5,000人で、そのうち男性が63万9,000人、女性が156万5,000人という結果が出ています。

脂質異常症と聞くと男性をイメージする方もいると思いますが、実際には女性が男性の2倍以上と多く、明らかな性差があるのも特徴です。
これには理由があり、女性は閉経を境に女性ホルモンが減少し、それによって悪玉コレステロールや中性脂肪が急激に上昇するためと言われています。
健康診断でコレステロール値を指摘された方、生活習慣が乱れやすい方、そして女性は特に、若いうちから脂質異常症を意識した生活を心がけたいものです。

いまから始める脂質異常症の予防と対策

繰り返しになりますが、脂質異常症は、動脈硬化になる一番の危険因子です。健康を維持するためには早い段階で脂質異常症に気づき、適切に対処することが重要です。
動脈硬化を原因とする心筋梗塞や脳梗塞は一度発症すると再発しやすく、命の危険はもちろん、後遺症によって生活の質を著しく低下させます。すでに脂質異常症と診断された方だけでなく、早めの予防に取り組みたいという方にとってまず基本となるのは生活習慣の改善です。

食事

食事療法は、脂質異常症の予防・治療の基本となります。単に摂取カロリーを抑えることが目的ではなく、必要な栄養素をバランスよく摂取し、脂肪分をとりすぎないことが大切です。
肉や卵などの動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを上昇させ動脈硬化を促す原因になるため、とりすぎに注意しましょう。逆に、サバ・イワシなどの青魚や、オリーブ油・菜種油などの植物性脂肪に含まれる不飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを減らす作用があります。中性脂肪は、甘いお菓子・炭酸飲料・アルコールを多量に摂取すると増加します。

脂質異常症にとって理想的な食事は、ずばり「和食」です。悪玉コレステロールを低下させる青魚(サバ・イワシ)や大豆食品(豆腐・納豆)、脂肪の吸収を抑える食物繊維(野菜・海藻・きのこ類)が中心の和食は、脂肪分が少なくヘルシーで、理想的な食事の代表格です。

運動

有酸素運動を継続的に行うと、中性脂肪の低下や善玉コレステロールの上昇につながることがわかっています。「ちょっときついかな」と感じるくらいの運動強度(心拍数110〜120回/分)を目安に、1日30分の運動を習慣化しましょう。
運動を続けることでコレステロール値が改善するのはもちろん、精神面にも良い影響をもたらします。ただし、もともと心臓や肺に持病のある方は無理をせず、医師の指示のもと行うようにしてください。このほか、多量の飲酒やタバコなど、動脈効果のリスクを高めるような生活習慣もぜひ見直すようにしましょう。

薬物療法

生活習慣の改善を続けてもコレステロールや中性脂肪の数値が改善しない場合は、薬物療法の対象となります。
また、すでに動脈硬化が進んでいる方や動脈硬化になるリスクが高い方(糖尿病や高血圧、喫煙習慣のある方など)は、早い段階で薬物療法が開始されます。
脂質異常症の薬には、コレステロール・中性脂肪の合成を抑えるものや、悪玉コレステロールの排出を促すものなど良い薬が多くありますが、薬だけに頼らず食事療法・運動療法も同時に続けることが大前提です。

このように、脂質異常症の予防・治療は「食事療法」「運動療法」を中心に、必要に応じて「薬物療法」を組み合わせるのが基本です。さらに、節酒や禁煙を心がけることも重要となります。

脂質異常症から動脈硬化へ、動脈硬化から心筋梗塞・脳梗塞へと進行させないためには、血液中の脂肪分をしっかりとコントロールし、その状態を長く維持することが肝心です。脂質異常症と診断されて落ち込んだり、逆に症状がないからと放置したりせず、「うまくコントロールすれば健康的な生活が続けられる」と前向きに考え、治療に取り組んでほしいと思います。

脂質異常症と言われたら早めの対策を

脂質異常症や動脈硬化は、早めの予防と長期的な治療が必要です。
健康診断で「脂質異常症」と指摘された方は、その日から対策を始めましょう。

また、すでに治療中の方も規則的な生活習慣を維持するとともに、「血液検査の数値が改善したから」と自分の判断で服薬を中止せず、根気よく治療を続けることが大切です。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

【出典元】

※厚生労働省「平成29年(2017年)患者調査の概況|5.主な疾病の総患者数」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/05.pdf