50代から考える、怪我のこと

将来の寝たきり防止に! 高齢者にも簡単なおすすめ運動&トレーニング

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まずは「今より10分多くからだを動かす」ことからはじめ、ウォーキングや簡単な筋トレなどの適度な運動を習慣にして筋力をアップさせましょう。

この記事の監修

渡辺 有美

独身時代は都市銀行に勤務し、その後、結婚と子育てを経て介護の道へ。介護福祉士としてデイサービス・特養・訪問介護の現場で10年以上働いた経験を活かし、高齢者の方々の役に立つ記事を多数執筆しています。

年を取るにつれ、体力が落ちたり疲れがなかなか取れなかったりと、からだの衰えを実感する機会が増えてくるものです。腰や膝の痛み、腕が上がりにくいなど、からだの節々に不調が出てくる人もいるでしょう。

加齢によってからだが徐々に衰えてくるのは自然な現象であり、どんなに体力に自信のある人でも老化は避けられません。とはいえ、同じ年齢でもすっかり老け込んでしまう人もいれば、周囲がびっくりするくらいエネルギッシュな人もいます。
つまり、「年をとること」と「老化」は、イコールではないということです。

そこで今回は、老化予防のひとつのカギとなる「運動」に注目し、どうすれば寝たきりを防げるのか、その対策についてお話ししていきます。

高齢者の事故は「ころぶ」が最多

東京消防庁によると、平成25年から平成29年までで救急搬送された高齢者のうち、もっとも多いのが「ころぶ事故」によるものでした。

東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」図1-4を基に作図

高齢者は転倒した時にとっさに身をかばうことが難しく、ケガの程度も重くなる恐れがあります。そのうえ、骨折をして長期間動けなくなれば、そのまま認知症や寝たきりになってしまうこともめずらしくありません。

寝たきりをまねく「転ぶ事故」を防ぐには?

高齢者の事故は意外にも「屋内」で発生するケースが多いものです。不慮の事故を防ぐには、床の段差をなくす、つまずきやすいカーペット類を撤去するなど、まずは事故の原因を取り除くことが先決でしょう。それと同時に取り組んでいきたいのが、「筋力の維持・向上」です。

寝たきり防止は「筋力の維持」がポイント

東京大学大学院教授で理学博士の石井直方氏は、著書のなかで以下のように述べています。

一般的に筋肉(または筋肉が発揮する力である筋力)のピークは22~30歳で、それを過ぎると下降線をたどっていきます。(中略)とくに顕著なのが足や腰といった体を支える筋肉で、30歳から80歳の間に約半分になってしまいます。
石井直方「一生動けるからだのつくり方」(池田書店,2014.)p.20.

また、運動部に所属するなど若いころは積極的にからだを動かしてきたという人でも、何もしないまま10年が経てば、筋肉は元に戻ってしまうと言われています。

バランス機能が低下し骨も脆くなってくる高齢者にとって、からだを支えてくれる筋肉はまさに命綱といえます。何も対策をとらないでいると、筋肉量や筋力の低下は加速し、転倒の危険をいっそう高めることになってしまうでしょう。

また、足腰が弱くなると動くのが億劫になり、日ごろの活動量が減ってしまう傾向にあります。動かなくなればますます筋肉は衰え、からだの機能低下をまねくことに......。

これらの悪循環を防ぐには、日常的にからだをよく動かしたり運動をしたりして体を鍛えることが欠かせません。運動によって筋肉量を維持または向上させて、しっかり体を支えられる強い足腰をつくっていくことが肝心です。

70才でも「貯筋」できる

早稲田大学スポーツ医科学科教授の福永哲夫氏は、「筋肉量や筋力の低下を防ぐのに日常的な運動が効果的であること」を研究によって明らかにしています。

この研究は、70才以上の高齢者30名に対し、行われました。その内容は、イスの座り立ちや大腿やかかとの上げ下ろし、イスに座っての腰の曲げ伸ばしといった動作を歌に合わせて実際に歌いながら毎日行うというもの。すると、3カ月後には、「イスの座り立ちの速度が2倍になった」「5回しかできなかった腹筋が15回できるようになった」など、驚きの変化が出ていたのです。

これらの結果から、日常動作のような軽い負荷の運動でも、日々継続することによって筋力の増加が明らかになりました。さらに、このテストを行ったほとんどの高齢者が「毎日元気に気持ちよく生活できるようになった」と述べていた点にも注目です。

この研究結果は、これから老後を迎える世代にとっても明るいニュースではないでしょうか。高齢になってからでも運動によって筋量を増やし下半身の筋肉を強化していくことは十分可能であり、自分次第で転倒や寝たきりのリスクを遠ざけていくことができるのです。

高齢者にもおすすめ! 若さを維持する運動はこれ

ここからは、高齢者でも着実に筋力アップできるおすすめの運動を紹介していきます。 ポイントは「決して無理をしないこと」。人によって適切な運動法や運動量はことなるため、からだに負担にならない範囲で少しずつ運動に慣れていくことが重要です。

まずは「今より10分多くからだを動かす」ことから

これまで運動習慣のなかった人は、はじめに厚生労働省の運動施策として打ち出している「+10(プラステン)」を参考にするのがおすすめです。
+10(プラステン)とは、"今より10分多く体を動かして健康寿命を伸ばしていく"という取り組みのこと。
18才から64才までの人は1日60分を目標に、65才以上の人は1日40分を目標にしてからだを積極的に動かし、さらにこのなかに筋力トレーニングやスポーツを組み入れていくという内容です。

厚生労働省「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針-」を基に作図

エレベーターではなく階段を利用したり、歩いて買い物に行ったり、ラジオ体操を日課にしたりと日常生活のなかでなるべくからだを動かす機会を作って活動量を増やし、筋肉を刺激していきましょう。そのうえで、筋トレやスポーツといったアクティブな運動をプラスしてさらに健康に働きかけていくのが、将来の寝たきりや転倒事故の予防に効果的です。

厚生労働省「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針-」を基に作図

気軽にはじめられる「ウォーキング」のすすめ

年齢に関係なく誰でもかんたんに始められる「ウォーキング」は、筋力アップ、心肺機能の強化、血行促進、肥満解消など、さまざまな効果が期待できるすぐれた運動です。ぜひ日ごろからたくさん歩くことを心がけましょう。

よく「1日8000歩を目安に」といわれますが、厚生労働省ではもう少し細かい数字を示して、歩数を増やすことが生活習慣病の発症を数パーセント減らすことが期待できるとしています。

 

男性

女性

成人の目標

9,200歩

8,300歩

高齢者の目標

6,700歩

5,900歩

厚生労働省「健康日本21 身体活動・運動」を基に作図

一度にまとめて歩く必要はなく、1日トータルでこの歩数に達していれば問題ありません。 歩数計やスマートフォンの歩数計アプリを利用すれば、かんたんに1日の歩数をはかれます。

筋力トレーニングを取り入れましょう

寝たきりの原因になる転倒を防ぐには、とくに下半身を中心に鍛えることが重要です。 ここでは、高齢者にもできるかんたんな「筋トレ」をご紹介します。

【スクワット】

スクワットは、下半身や体幹を効率的に鍛えることができる非常におすすめの筋トレ。足腰を強くしていくには、スクワットは一押しの運動といえます。
はじめは5回からスタートし、慣れてきたら10回×3セットを行いましょう。

  1. 足を肩幅に開いて背筋を伸ばし、両手を前に出す
  2. 息を吸いながらゆっくり膝を曲げ、おしりを後ろに突き出すように腰を下ろしていく
  3. 太ももと床が平行になるくらいまで腰を落としたら、息を吐きながらゆっくり膝を伸ばして元の姿勢に戻る

※注意点

  • 膝とつま先の向きをそろえる
  • 膝を曲げたとき、膝頭がつま先より前に出ないように気をつける
  • 慣れないうちは、いすの背もたれなどにつかまって行う(安定感のあるイスを使用するとよいでしょう)

【ランジ】

足腰の踏ん張るパワーがつく「ランジ」は、転倒防止として高齢者に特におすすめの運動です。バランス力が上がり、転びにくい体づくりが可能です。
はじめは5回からスタートし、慣れてきたら10回×3セットを行いましょう。

  1. まっすぐ立って背筋を伸ばし、腰に手を当てる
  2. 息を吸いながら片方の足をグッと大きく前に踏み出し、膝をまげて腰を落とす
  3. 息を吐きながら元の姿勢にもどり、反対側も同じように行う

※注意点

  • 膝とつま先の向きをそろえる
  • 膝を曲げたとき、膝頭がつま先より前に出ないように気をつける
  • 腰の落とし方は浅くてもOK。慣れてきたら前に出した足の太ももと床が平行になるまで腰を落とすとなお効果的

筋トレの効果を高めるコツ

筋トレは、同じ動作でもやり方次第で効果が大きく変わってきます。
以下は、筋トレ効果がアップする重要ポイントです。

  • ひとつひとつの動作はできるだけゆっくり行う
  • 動作中は呼吸を止めない
  • 筋トレの頻度は週に2~3日
  • 筋肉の元となるたんぱく質を摂取する

筋トレは筋肉に少なからずダメージを与える行為です。回復時に、次は同じ負荷に耐えられるよう、強い筋肉に作り変えられていきます。これを「超回復」といい、回復のあいだは筋肉をしっかり休めてあげなくてはなりません。

そのため、筋トレは、週に2~3回程度行うのが最適です。毎日行うとケガのリスクが高まるので注意しましょう。また、筋肉をつくる元となるたんぱく質をしっかり食べると、筋肉量の増加に繋がります。肉・魚・大豆製品などのたんぱく質を積極的に食べましょう。

まとめ

運動は、高齢者の生活に多くのメリットをもたらします。年を重ねても生き生きと元気に暮らしていくために、適度な運動を習慣にして筋力をアップさせ、健康寿命を1年でも長くのばしていきましょう。