ここまでわかった片頭痛の発生メカニズム、低気圧とうまく付き合う方法

身体のこれから

代表的な治療法と痛み止めに頼らない対処法をご紹介します。

【監修】遠藤愛(えんどうあい)

天気や気圧の変化によって起きる体の不調を「気象病」と呼ぶことがあります。
低気圧にともなう片頭痛もそのひとつで、強い頭痛とともにめまいや吐き気を引き起こすなど症状は深刻です。
今回は低気圧によって生じる片頭痛をテーマに、代表的な治療法と痛み止めに頼らない対処法をご紹介します。

片頭痛発生のメカニズム、なぜ低気圧で頭痛が生じるのか?

まず頭痛の種類は、慢性的に頭痛を繰り返す「一次性頭痛」と、脳や頭の病気に関連して出現する「二次性頭痛」に大別されます。片頭痛は「一次性頭痛」に分類されます。

片頭痛には以下のような特徴があります。

  • どちらか一方のこめかみから頭部にかけてズキズキとした痛みがある(ズキズキしないこともある)
  • 片方の頭痛から始まり、次第に両方に痛みが広がることが多い
  • 1カ月のうちに頭痛発作が繰り返し起こる
  • 動くことで痛みが強くなる
  • 吐き気や、光・音に対する過敏症状をともなうことがある

なお、日本臨床内科医会の資料(※1)によると、「片頭痛は10~20歳代で始まることが多く、男性より女性に多くみられ」、「患者数は全国で約840万人と推定」されています。これは日本人の15%が片頭痛の症状を抱えていることとなり、私たちにとって身近な症状と捉えることができます。

片頭痛の要因はストレスや緊張、疲労、睡眠不足(もしくは睡眠過多)などですが、「天気の変化」もそのひとつです。
特に梅雨の時期やゲリラ豪雨、台風の上陸など急激な気圧の変化が頭痛の原因となるケースが多く、最近では天気や気圧の影響を受ける痛みのことを「天気痛」や「気象痛」と呼び、注目が集まっています。

では、なぜ低気圧で片頭痛が生じるのでしょうか?
天気と片頭痛の関係性を説明するものに「神経の興奮と脳血管の拡張説」があります。

気圧の変化を感じると、なんらかの仕組みで脳の血管が拡張し(中略)刺激されて、(中略)痛み物質が放出されます。(中略)さらに血管が拡張します。(中略)このような仕組みによって、(中略)脈打つような強い痛みが生じると考えられるのです。
・佐藤純「天気痛 つらい痛み・不安の原因と治療方法」(光文社新書,2017.)p.38.より引用。

これまでの研究で、気圧の変化で脳血管の拡張と神経の興奮が起こり、片頭痛が生じることは分かっていましたが、脳が気圧の変化を感じ取る仕組みまでは分かっていませんでした。

しかし、天気痛・気象病研究の第一人者であり、「天気痛 つらい痛み・不安の原因と治療方法」(光文社新書)の著者である佐藤医師らは、マウスを使用した研究で耳の奥にある「前庭器官」という部分に気圧の変化を感じるセンサーがあることを証明した、と2019年に発表しています(※2)。
耳にある気圧センサーを介して脳に情報が伝わると、神経細胞が興奮し痛みを感じる、というメカニズムが、マウスだけでなく人間にもあるのではないか――というのが佐藤医師らの見解です。
この研究が進めば、近い将来、天気痛に対する新たな治療法が確立するかもしれません。

片頭痛にうまく対処する方法は?

ここからは、低気圧による片頭痛にどのように対処すればよいのか、現在行われている治療法や対処法を具体的に見ていきましょう。

繰り返す頭痛は専門医に相談する

繰り返す頭痛発作や、それにともなうめまいや吐き気などで生活に支障をきたすのであれば、自分でどうにかしようと思わず専門医に相談しましょう。「脳神経内科」「頭痛外来」のある医療機関で適切な診断や治療を受けることで、片頭痛による苦痛や生活への影響を軽くすることができます。

片頭痛の治療法

片頭痛治療の目的は、頭痛発作の頻度を減らし、症状を軽くして生活の質を高めることです。
治療の中心は薬物療法です。軽~中等度の痛みにはアセトアミノフェンやアスピリンなどの消炎鎮痛剤が、中~重度の痛みや消炎鎮痛剤が効かないケースには、片頭痛に特化したトリプタン製剤が使用されます。トリプタン製剤は拡張した脳の血管を収縮させ、血管周囲の炎症を抑えるなど片頭痛の原因そのものに作用する薬です。
このほか、カルシウム拮抗薬・β遮断薬などの高血圧治療薬や、抗てんかん薬・抗うつ薬が片頭痛の予防薬として使用されることがあります。

薬物以外の対処法

片頭痛を悪化させるものに、運動・入浴・マッサージ・飲酒などがあります。 これらは片頭痛の原因である脳血管の拡張・三叉神経の興奮を促すことになるため、頭痛があるとき(もしくは起こりそうなとき)は控えるようにしましょう。また、臭いや光、音が、痛みを悪化させることもあるため、痛みを感じたら薄暗く静かな場所で安静に過ごしましょう。こめかみや頭部を冷やすのも効果的です。

痛くなる前に対処する方法は?

天気痛が原因となり、場合によっては仕事に遅れたり、約束をキャンセルしたりすることも珍しくありません。からだの不調だけでなく、対人関係に影響を及ぼすのも天気痛の怖いところです。
ここからは、気圧の変化に事前に備えることで片頭痛を予防する方法をご紹介します。

自律神経を整える生活習慣

先述した佐藤医師は、著書の中で「天気痛の根本治療には、自律神経の働きを整えることが重要」と述べています。(※3)
つまり、片頭痛は「血管の拡張と神経の興奮」によって引き起こされるため、血管や神経の働きを司る自律神経のバランスを整えることで片頭痛の症状を軽くできるのです。

まず、食事は3食しっかりとることが基本です。1日のスタートとなる朝食には、休息モード(副交感神経)から活動モード(交感神経)に切り替える役割があるため、必ずとるようにしましょう。

次に運動です。
まずはウォーキングから始めてみましょう。慣れてきたら歩く距離を延ばす、軽めのジョギングにステップアップするなど、無理のない範囲で毎日続けることがポイントです。
適度な運動は、質の良い睡眠にもつながります。

睡眠は、自律神経やホルモン分泌と深い関わりがあります。睡眠不足や睡眠過多、夜遅くまでスマホやパソコンを使う生活で体調を崩すのは、体内時計が乱れ自律神経やホルモンバランスに支障をきたすからです。
「毎日決まった時間に起きて寝る」という規則正しいリズムを保つとともに、就寝1時間前にはスマホを見ないようにして、質の良い睡眠を得る工夫をしましょう。

また、片頭痛の予防には「痛みの状況を客観的に知ること」「天気の変化を予測して痛みに備えること」が非常に重要です。

頭痛ダイアリーをつける

頭痛外来を受診すると、痛みの状況を把握するために「頭痛ダイアリー」の記入をすすめられることがあります。毎日の天気、痛みの具合、服用した薬などを記入するもので、適切な治療を行うための大切な情報となります。
「頭痛ダイアリー」は、日本頭痛学会のホームページからダウンロードできます。痛みのパターンを知りたい方や、これから頭痛外来を受診しようと考えている方は活用してみるとよいでしょう。

頭痛予測アプリの活用

天気予報をチェックする方は多いと思いますが、「頭痛予報」というものがあるのをご存知でしょうか?
たとえば、『頭痛ーる』という頭痛予測アプリでは、天気や気圧予報のデータに基づいて頭痛が起こりやすいタイミングを予測・確認することができます。また、アプリ上で頭痛発生や服薬の記録を残すことができるため、頭痛ダイアリーとしても使用できます。

片頭痛をコントロールして快適な生活を

天気や気圧といった自然の力には抵抗できない......と諦めていた方も、普段の生活習慣の見直しや気圧の変化を予測して片頭痛に備えることは可能です。さらに、適切な治療で痛みをコントロールすれば、突然の痛みに対する不安もなくなり毎日を快適に過ごすことができるでしょう。
片頭痛のある方や身近な人が片頭痛で悩んでいる方は、日常的にできるセルフケアとともに専門医に相談されることをおすすめします。

監修

遠藤愛(えんどうあい)

看護師として約13年間病院勤務。病院時代、高齢患者と家族の介護問題に直面したことをきっかけに、介護老人保健施設・訪問看護に従事、高齢者看護を学ぶ。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。