コラム【特集】50代から気をつける病気。予防・対策

だれにも相談できない尿もれの悩み 年齢のせいだと諦めていませんか?

身体のこれから

尿もれの種類や原因、治療法についてお話しします。

【執筆者】中西 真理

「くしゃみをしたときに尿がもれる」「笑うと尿がもれる」といった尿もれ(尿失禁)の悩みは、女性に多いというイメージをもっている方が多いのではないでしょうか。しかし、尿もれは男女を問わず生じるものと言われています。

尿もれは、膀胱のまわりにある臓器や、ホルモンバランスなどの影響を受けて生じることがあります。しかし、運動や生活習慣の改善などで症状が軽くなることもあります。また、薬を飲むことで日常生活を快適に過ごしやすくなるとも言われています。

そこで今回は、尿もれの種類や原因、治療法についてお話しします。

起こりやすい尿もれは男女で異なります

尿もれは、原因や症状によっていくつかの種類に分けることができます。

・腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁は、腹圧がかかったときに反射的に尿道を閉める働きをもつ「骨盤底筋群(骨盤の底の方にある筋肉や靭帯。膀胱や子宮、尿道、直腸などを支えている)」のゆるみなどが原因で生じます。重い物を持ち上げたときやくしゃみや咳をしたとき、大笑いしたときなど、お腹に力が入ったときに生じる尿もれで、女性の尿もれ原因として最も多いといわれています。

骨盤底筋群は妊娠や出産(経膣分娩)時に大きな負担がかかるので、妊娠・出産回数の多い人は腹圧性尿失禁のリスクが高くなります。また、閉経にともない女性ホルモンの分泌が少なくなると、骨盤底筋群がゆるみやすくなることも知られています。

腹圧性尿失禁の危険因子

危険因子

リスクの詳細

出産回数(経膣分娩)

2回以上経膣分娩経験があると発症リスクが高まる。

年齢

加齢による筋肉の衰え、女性ホルモンの量の低下が影響。

便秘

いきむことで骨盤底筋群に負担がかかる。

肥満

減量したら症状が軽くなった、という報告がある。

職業歴

重いものを運んだり、踏ん張ったりなど腹圧のかかる職業に就いた経歴がある人は、発症リスクが高くなる。

なお、男性の場合、前立腺肥大症や前立腺がんなどの手術時に尿道を締める筋肉が傷ついてしまうと、腹圧性尿失禁が生じることがあります。

・切迫性尿失禁

急に強い尿意を感じ、トイレに行くまでこらえきれず、もれてしまうタイプのものです。脳からの「尿を出してはいけない」という命令がうまく伝わらず、膀胱が勝手に収縮して尿道を閉める筋肉が緩んでしまうために生じます。冷たい水に触れたり、水の流れる音を聞いたりすることなどがきっかけで強い尿意を感じる人もいます。

切迫性尿失禁は、脳卒中や脳梗塞などの脳血管疾患、パーキンソン病、脊髄の障害など、脳や神経にかかわる病気が原因で生じることがあります。また、男性では前立腺肥大症、女性では骨盤臓器脱=骨盤底筋群がゆるんで子宮や膀胱、直腸などの位置が下がり、膣から出てきてしまう病気などが原因になることもあります。しかし、これといった原因が見つからない場合も多くなっています。

・溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

男性によくみられる尿もれです。何らかの理由で尿を出しきれず、膀胱に常に尿がたまっている状態となり、あふれた尿がもれ出てきます。尿を出しきれない排尿障害が背景にあるため、排尿に時間がかかったり、強い残尿感を感じたりすることが多くなっています。

溢流性尿失禁は、前立腺肥大症や前立腺がんなどで尿路が狭くなると生じることがあります。女性の場合、骨盤臓器脱で尿道が圧迫されることが原因になることも。そのほか、糖尿病で神経が障害されると排尿コントロールがうまくできなくなり、溢流性尿失禁を起こすことがあります。

・機能性尿失禁

排尿機能には問題がないものの、身体機能の低下や認知症などが原因で生じる尿もれです。たとえば、「からだが不自由で移動に時間がかかり、トイレに行くまでにもれてしまった」「認知症で『トイレで排泄する』という判断ができず、尿をもらしてしまった」といった場合などが該当します。

尿もれの治療 生活習慣の見直しで症状が軽くなることも

続いて、尿失禁のタイプごとに治療方法を解説します。手術や薬物療法だけではなく、骨盤底筋を鍛える体操や尿意をコントロールする訓練方法、日常生活で気をつけることについてご紹介します。

・腹圧性尿失禁

症状が軽い場合は、骨盤底筋体操で筋肉のゆるみを解消すると、腹圧がかかっても尿道が開きにくくなります。また、肥満の人や急に体重が増えた人は、減量によって症状が治まることもあります。運動や減量をしても効果が十分でない場合には、特殊なテープで膀胱の下部部分と尿道を支える手術を検討することもあります。

女性の場合、女性ホルモンを補う治療で症状が改善することもあります。そのほか、膀胱の緊張をやわらげる働きや尿道を閉める筋肉の働きを助ける薬や、膀胱が縮むのをおさえる薬などの処方による投薬治療が多くなっています。

ここで簡単にできる骨盤底筋を鍛える体操をご紹介します。
通勤電車の中や入浴中、家事をしながらなど、スキマ時間やながら時間を活用すれば、簡単に日常生活に取り入れることができます。

骨盤底筋体操
  1. 肛門や尿道、膣をゆっくり締め、ゆっくりゆるめる動作を2~3回繰り返す。
  2. 慣れてきたら、締める時間を少しずつ延ばしていく。
  3. 上記を5分繰り返す。慣れてきたら、10~20分続ける。

・切迫性尿失禁

切迫性尿失禁では、薬物療法が中心となります。膀胱が縮むのをおさえる薬や、尿をしっかりためて一度に排泄する尿量を増やす作用のある薬などを使い、急な尿意や尿もれを減らします。
薬物療法とあわせて、骨盤底筋体操や尿意をコントロールする「膀胱訓練」を実施すると、より良い効果が期待できます。また、大量の飲料を一度に摂取しない、利尿効果のあるカフェインやアルコールを避ける、といった工夫も有効です。
ここでは、膀胱を鍛えるトレーニングを紹介します。

膀胱を鍛えるトレーニング
  1. トイレに行くのを1回だけ我慢する。可能ならば5分程度。ただし、無理はしない。
  2. 我慢することを1週間続ける。
  3. 我慢する時間を少しずつ増やす。

このトレーニングは、毎回尿意を感じるたびに行う必要はありません。1日のうちストレスを感じにくいタイミングで、回数を決めてチャレンジしてください。最終的に2~3時間我慢できるようになれば、尿意のコントロールはほぼできるようになるでしょう。

また、訓練とあわせて、「排尿日誌」をつけると、排尿傾向がわかり、対策が立てやすくなります。具体的には、排尿時間や排尿量を記録していきます。排尿量を正確に記録したい方は、目盛り付きの紙コップを使うとよいでしょう。もちろん、「多かった」「少なかった」という感覚的なメモでもよいでしょう。

・溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

溢流性尿失禁では、尿が出にくくなっている原因を取り除く治療が必要です。
前立腺がんが溢流性尿失禁の原因となっている場合は、がんの治療を優先します。前立腺肥大症が原因の場合は、前立腺の緊張をゆるめる薬や前立腺を小さくする働きのある薬で前立腺肥大症の治療をして、尿をしっかり出しきれるようにします。ただし、前立腺が非常に大きくなっている場合には、手術が検討されることもあります。
骨盤臓器脱がある場合は、骨盤底筋運動で症状が軽くなることもあります。しかし、症状が重く、日常生活に支障がある場合には手術を検討します。

そして糖尿病が原因となっている場合は、糖尿病の治療と並行して膀胱の収縮を助ける薬が処方されることがあります。そのほか、細い管を使って尿を定期的に排出する「間欠導尿」という方法を使えば、尿のたまり過ぎを防ぐことができます。
なお、「尿が出にくいから」といって排尿時に腹圧をかけたり、排便時にいきんだりすると、尿道や膀胱に負担がかかり症状が悪化することがあるので注意しましょう。

・機能性尿失禁

機能性尿失禁の場合、膀胱の機能には問題がないので「時間を決めて排尿する」など規則正しい排尿習慣をつけることで尿もれの回数を減らすことができます。また、からだが不自由でトイレが間に合わない、という場合には「トイレの近くに居室を移す」などの工夫も有効です。

尿もれを解消してアクティブに過ごそう

尿もれをはじめとした尿トラブルは、男女を問わず年齢を重ねれば誰にでも生じる可能性があります。しかし、その背景には、治療が必要な病気が隠れていることも少なくありません。また、尿もれのタイプによっては、使用に注意が必要な薬もあります。気になる症状がある場合は医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。

尿もれの治療は、恥ずかしいことではありません。治療で症状が解消されれば気兼ねなく外出できるようになりますし、からだを動かすことは生活習慣病や肥満の予防にも役立つので尿もれの解消につながります。楽しく健康な毎日を送るために、尿もれに気がついたら積極的に医療機関を受診しましょう。

執筆者

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬学修士。

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。