男性にだって起こりうる更年期障害の実態、そして家族の関わり方

身体のこれから

男性更年期障害の特徴や、その検査法や治療法、さらにはご自身でできる対策、家族の関わりかたについてまとめました。

【監修】浅野すずか

「最近、疲れやすくなった」「ぐっすり眠れない」
このような症状は、もしかしたら男性更年期障害かもしれません。

更年期障害と聞くと、女性にのみに起こるものと思っている方が多いと思いますが、男性にも起こります。働き盛りで更年期障害が発症すると、日常生活に影響をおよぼすだけでなく、男性としての自尊心まで傷ついてしまいます。また、「もしも夫が更年期障害になったらわたしはどう関わればいいのだろう」と気がかりな方が多いのではないでしょうか。

そこで今回は、男性更年期障害の特徴や、その検査法や治療法、さらにはご自身でできる対策、家族の関わりかたについてまとめました。男性更年期障害は、本人のみならず、夫婦の問題です。ひとりで抱え込まず、みんなで一緒に考えていきましょう。

女性だけじゃない!男性に起こる更年期障害とは?

男性更年期障害とは、年齢とともに男性ホルモンが低下することで、さまざまな症状が現れる状態をいいます。「LOH(ロー)症候群」と呼ばれることもあります。原因は男性ホルモンの低下ですが、その他にも人間関係や職場でのプレッシャーなどストレスも関係します。

男性ホルモンが作られるのは精巣です。男性ホルモンには、性欲を高める、筋力をアップさせる、バイタリティを維持するなどの役割があります。男性ホルモンが年齢とともに減少するのは自然なことです。35歳頃から低下が目立ち、60歳は40歳に比べてホルモン量が平均25%低下するというデータがあります。
以下のグラフを見ても分かるとおり、男性ホルモンは女性ホルモンと比べて低下がゆるやかです。

女性の更年期障害は、女性ホルモンが急激に低下するため、症状が出る時期がはっきりしています。一方、男性の場合は症状が出るタイミングがあいまいで、更年期障害に気づきにくいという特徴があります。

内閣府 「男女共同参画白書(概要版)平成30年度」<第2節 男女の健康支援 男性・女性ホルモンの推移>を基に作図

男性更年期障害の症状とは? 女性とはどう違う?

男性更年期障害の症状は、大きく分けて3つあります。

  • 精神心理症状:うつ、いらだち、不安、疲労感など
  • 身体症状:発汗、ほてり、睡眠障害、集中力低下など
  • 性機能関連症状:性欲低下、勃起障害(ED)など

このように、「性機能関連症状」以外は女性の更年期障害と同じような症状が現れます。その特徴として、糖尿病やメタボリックシンドロームを発症しやすいといわれています。男性ホルモンであるテストステロンには、糖代謝や脂質代謝を促進する作用があり、これが低下すると作用がうまく働かなくなることが原因のひとつとされています。また、うつに似た症状が出たり、不安感が強くなったりするので、うつ病を疑われることもあります。
他の病気だと思って受診したら、実は男性更年期障害だったということもあり、男性更年期障害は全身に影響をおよぼします。

男性更年期障害で病院へ行く目安と、かかる診療科は?

では、どのような症状が現れたら、病院に行けばよいのでしょうか?
男性更年期障害は、その人によって症状の現れ方に違いがあり、決定的な症状がほとんどないため、判断に迷うかもしれません。「いつもと違う」「つらい」と感じたら、男性更年期障害を疑って1度病院を受診することをおすすめします。
受診科は、泌尿器科です。最近では、男性更年期障害の専門外来を開設している病院もありますので、通いやすい場所にある病院を検索してみてください。

男性更年期障害の検査と治療法は?

男性更年期障害の検査と治療法を、それぞれまとめました。

〇検査

男性更年期障害には決定的な症状がありません。病院では、まず血液検査や心電図など一般的な検査を行い、男性更年期障害以外に考えられる疾患がないかをチェックします。その他に以下の検査を行い男性更年期障害の診断を行います。

・質問紙を使って現在の状態を把握する

睡眠状況や不安感などについて書かれた質問紙に回答し、合計点数がいくらかによって重症度を判断します。一般的に、「AMSスコア」という質問紙が使われています。

・血液検査で、遊離型テストステロンの値をチェックする

遊離型テストステロンとは、男性ホルモンのひとつです。血液検査の値は、治療法を決めるうえでの指標になります。

・前立腺の硬さや大きさをチェックする

詳しくは次の項目で説明しますが、前立腺の病気があると治療法が制限されます。直腸診で硬さや大きさを調べ、異常がないかをチェックします。

〇治療

主に男性ホルモン補充療法が行われますが、血液検査の結果や症状によって方法が異なります。まず男性ホルモン補充療法が行われるのは、40歳以上で男性更年期の兆候がある人です。次に遊離型テストステロンの値によって、以下の3段階で実施するかどうかを決めます。

遊離型テストステロンの値

男性ホルモン補充療法実施の有無

8.5pg/mL未満

男性ホルモン補充療法が第一選択。

8.5pg/mL以上11.8pg/mL未満

その人の状況に応じて行う。

症状の程度を把握し、男性ホルモン補充療法のリスクを理解したうえで、治療するかどうか決める

11.8pg/mL以上

男性ホルモン補充療法は行わない。

症状に合わせて、専門の医師と相談しながら薬で治療。筋力低下には、生活習慣改善を促す。

男性ホルモン補充療法は筋肉注射が一般的ですが、軟膏もあります。筋肉注射は2~4週間に1回、軟膏は1日1~2回陰嚢に塗ります。
副作用には、睡眠時無呼吸症候群や多血症などが考えられます。3カ月ごとに副作用がないかをチェックし、効果があれば継続して治療を行います。ただし、重度の肝機能障害・腎機能障害、前立腺がんなどがあると、男性ホルモン補充療法はできません。特に前立腺がんのケースは、表面化していない潜在がんが臨床がんになったという報告があるため、注意が必要です。その他、カウンセリングや漢方などの治療法もあり、その人の状況や症状の程度に合わせて取り入れます。

男性更年期障害を悪化させない自分でできる対策

男性更年期障害は、治療をすれば症状の改善が見込めますが、自分自身でできることもあります。できそうなものから取り入れて、いきいきと毎日を過ごしましょう。

〇男性ホルモンの低下を防ぐような生活習慣

男性更年期障害を悪化させないためには、男性ホルモンの低下をゆるやかにすることが大切です。そのためには、十分な睡眠、バランスのよい食生活、定期的な運動が欠かせません。これらは、男性更年期障害のみではなく、その他の病気を防ぐために必要なことでもあります。自分自身の生活習慣を振り返り、改善の余地があると思うところは少しずつ正していきましょう。
なかでも定期的に運動する習慣がない方、どれくらいの運動をすればいいのか分からないという方もいると思います。そのようなときは、以下の表を参考にしてみてください。
厚生労働省が推進するスマート・ライフ・プロジェクトでは、50代の場合、歩行以上の強度の身体活動は毎日60分、息が弾み汗をかく程度の運動は毎週60分を目安としています。また、今の身体活動より時間を10分延ばすこともすすめています。運動する時間がないという方は、まずは歩く時間を10分でも多くしてみましょう。

スマート・ライフ・プロジェクト 「日頃から予防する身体活動・運動」を基に作図

〇ストレスを溜めない

男性ホルモンは、副交感神経が優位のときに分泌されやすいという特徴があります。つまり、ストレスを溜めこまず、リラックスする時間を持つことが重要です。
日々慌ただしく過ごしていると、一定の時間を持つことはなかなか難しいのかもしれませんが、仕事の休憩時間に深呼吸をしたり、ゆっくりお風呂に浸かったりすることも副交感神経を優位にします。1日のなかで少しでもいいので、自分を労わる時間をもちましょう。

「男性更年期障害かも?」と思ったときに家族ができること

もし夫に男性更年期障害のような症状がみられた場合、どのように対応したらいいでしょうか? まず、男性にも更年期障害があることを理解し、つらさに共感しましょう。「頑張って」「気のせいよ」という言葉は、夫を追い詰めてしまいます。
大切なのは、男性としての自尊心を保てるように配慮することです。「男性ホルモンの低下」や「更年期」という言葉は、老いを連想させるので傷つく人もいます。年齢とともに不調が出やすいことをやんわりと伝え、病院の受診をすすめましょう。
また、規則正しい生活が送れるように協力したり、ストレスが解消できるように気を配ったりすることは、家族だからこそできることです。バランスのいい食事を作る、一緒に趣味を楽しむなど、無理のない範囲で取り入れてみてください。

まとめ

うつや集中力低下は、一見すると男性更年期障害と分からず見過ごしやすい症状です。そのまま放置せずに、気になる症状があれば病院で検査や治療を受けましょう。

男性更年期障害は恥ずかしいことではなく、年齢とともに誰にでも起こりうるものです。特に、性欲低下やEDは男性としての尊厳に関わりますが、受け入れてできることを始めることで、これからの人生をよりよくすることができます。
前向きに受け止めて生活の質を高め、よりよい人生を送りましょう。

監修

浅野すずか

フリーライター

看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。