コラム【特集】50代から気をつける病気。予防・対策

「最近どうもモノがゆがんで見える......」50代から発症率が高くなる、加齢黄斑変性とは?

身体のこれから

加齢黄斑変性の症状や自宅で簡単にできる自己チェック方法をご紹介

【執筆者】中西 真理

年齢とともに、目の機能が低下して物が見えにくくなるということは、だれにでも少なからずあることです。しかし「物がゆがんで見える」「見たい部分がよく見えない」といった症状がある場合、それは「加齢黄斑変性」という病気かもしれません。

加齢黄斑変性は、先進国で主な失明原因のひとつとなっている疾患です。日本においても、厚生労働省の2007年の調査で失明原因の第4位となっています。
高齢化の進む日本では、今後も加齢黄斑変性の患者数増加が予測されています。その一方で、加齢黄斑変性を早期発見すれば、生活への影響をできるだけ小さく抑えることも不可能ではありません。

そこで今回は、加齢黄斑変性の症状や自宅で簡単にできる自己チェック方法をまずご紹介し、治療方法や病院選びのポイントについても解説します。

「一番見たい視野の中心」が見えにくくなる加齢黄斑変性

加齢黄斑変性で病変が起こる「黄斑」とは、網膜の中心にある直径1.5mmの範囲のことです。黄斑には、物の形や色などを識別する視細胞が集中しています。そのため、黄斑が障害されると視力が落ちたり、視野の中心がゆがんで見えたりはっきり見えなくなったりします。
しかし、加齢黄斑変性になっても痛みなどが生じることはほとんどありません。また、片目のみに加齢黄斑変性が生じた場合、病気になっていない方の目で見えにくさをフォローしてしまうので、視力の低下や見え方の変化になかなか気づくことができません。とはいえ、加齢黄斑変性に気づかず放置してしまうと、1~2年で視力が一気に落ち込んでしまう、というデータもあります。

加齢黄斑変性の危険因子としては、「加齢」のほか「喫煙」や「遺伝」などが指摘されているため、「40歳以上」「喫煙歴あり」「家族に加齢黄斑変性の人がいる」のうち、ひとつでも該当する項目がある場合には、定期的に眼科検診を受けるようにしましょう。

なお、見え方の変化を自宅で簡単に調べることができる「アムスラー検査」という方法があります。アムスラー検査では、碁盤の目のような図(下図「アムスラーグリッド」参照)を使って、左右の目の見え方をチェックします。

検査は、以下の手順で行います。

  1. 読み物などをする距離にアムスラーグリッドを置く(必要な場合は眼鏡をかける)。
  2. 片目を隠して中心部の黒点をよく見て見え方を確認する。
  3. 反対側の目を隠して同様の確認をおこなう。

中心付近の格子がゆがんで見えたり、暗くぼやけて見えたりする場合には加齢黄斑変性が疑われるので(下図「加齢黄斑変性患者の見え方の例」参照)、早めに眼科を受診しましょう。

アムスラーグリッド

加齢黄斑変性のタイプにより異なる治療方法

加齢黄斑変性には、進行がゆるやかな「萎縮型」と、急激に進行して視力低下を招きやすい「滲出型」があります。
萎縮型の加齢黄斑変性では、網膜の細胞と網膜などに栄養を補給する脈絡膜という組織が徐々に障害されていきます。進行はゆっくりですが、有効な治療法は今のところありません。萎縮型と診断された場合には、生活習慣の改善などで進行をおさえるようにしましょう。

生活習慣でまず気をつけなければならないことは、喫煙習慣です。喫煙は、加齢黄斑変性だけではなくほかのさまざまな病気の危険因子でもあります。禁煙が難しい場合は禁煙外来なども利用して、禁煙を目指しましょう。また、紫外線にも気をつけましょう。紫外線は網膜にダメージを与えるため、加齢黄斑変性の進行を早める可能性があります。外出時にはサングラスを利用するなどして対策することをおすすめします。

食事は、抗酸化作用を持つビタミンE、ビタミンC、ベータカロチンなどを含む食品や、亜鉛などを含む食品、オメガ3脂肪酸を含む食品を積極的にとるのが良いとされています。

各種栄養素を多く含む食品

ビタミンEを多く含む食品

ナッツ類、植物油、魚介類、アボカドなど

ビタミンCを多く含む食品

かんきつ類、イチゴ、野菜、イモなど

ベータカロチンを多く含む食品

緑黄色野菜、かんきつ類、スイカなど

亜鉛を多く含む食品

牡蠣、ウナギなど

オメガ3脂肪酸を多く含む食品

アマニ油、ナタネ油、青魚(サバ、イワシ)など

一方で滲出型は、脈絡膜から網膜に向かって新しい血管(新生血管)ができるために生じます。

加齢により、網膜と脈絡膜の間にある細胞(網膜色素上皮細胞)の機能が低下したり、損傷が生じたりすると、脈絡膜から新生血管がつくられますが、これは非常にもろいため出血しやすく、血管から漏れ出てきた血液成分が黄斑にダメージを与えて、視力低下や視覚障害を招きます。滲出型の加齢黄斑変性は進行が早いため、すみやかに治療を行う必要があります。
以下に治療方法を紹介します。

  • 抗血管新生療法
  • 光線力学的療法
  • レーザー光凝固術

これらはいずれも新生血管の発育をおさえて、症状の悪化を食い止める治療法です。

抗血管新生薬療法と光線力学的療法では、病変が黄斑の中心部分にあっても治療することができます。しかし数カ月~1年程度の間、定期的に治療を継続しなければなりません。また光線力学的療法では、初回治療時に薬による副作用を防ぐために2泊3日程度の入院が必要となります。一方でレーザー光凝固術では、レーザーで新生血管を焼きつぶします。この治療では、レーザーを照射した部分は正常組織も含めて損傷されるため、黄斑の中心から離れた部分しか治療できません。また、治療後1年間は新生血管が再生しやすいことが知られています。
なお、治療方針は、病変のある位置や進行具合、視力などさまざまな要因に配慮したうえで決定されます。医師にしっかり相談し、手遅れになる前に治療を受けるようにしましょう。

病院選びは通いやすさも考慮

加齢黄斑変性が疑われる症状がある場合はすみやかに眼科を受診して、詳しい検査を受けるようにしましょう。ただし、いきなり大病院を受診することはおすすめできません。まず、近隣の眼科クリニックで診察を受けるようにしましょう。

眼科クリニックは、加齢黄斑変性の診断に役立つ検査機器(眼底造影カメラや光干渉断層計など)を備えているところを選ぶのがおすすめです。最近は、インターネット上で情報を公開している医療機関も多いので、参考にしてみましょう。
また、多くの眼科クリニックは大病院と連携しているので、必要に応じて紹介状を書いてもらうことができます。紹介状があれば、大病院を受診しても高額な初診料を払う必要がありません。すでに実施した検査は省略されることもあるので、医療費の削減にもつながります。
なお、加齢黄斑変性の治療は長期間に及ぶことも少なくありません。治療を中断してしまうと症状が再発することもあるので、通える範囲にある医療機関を選ぶようにしましょう。

執筆者

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬学修士。

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。