早く治したい!高齢者の骨折の回復を高めるには?

身体のこれから

大腿骨骨折の治療法や回復に必要なポイントをご紹介します。

【監修】niko

「病院で骨折の手術をしたけれど、元のように治るのかしら......」
多くの患者さんが、退院後に不安を感じるのではないでしょうか。

高齢者の骨折は若年者より回復するのに時間がかかり、さらには筋力の低下によって日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)に影響を及ぼすことがあります。特に高齢者の「大腿骨頚部骨折」では、ベッドで安静にすることにより、肺炎や認知症などの合併症を引き起こす可能性が高く、寝たきりの原因にもなります。短期間の安静によって急速に筋力・精神力が衰え、一度この状態になると悪循環となって回復が難しくなるのです。

この記事では、大腿骨骨折の治療法や回復に必要なポイントをご紹介します。

危険な高齢者の「大腿骨骨折」とその治療について

「大腿骨骨折」では、人間の骨格の中でいちばん長い大腿骨の付け根部分が骨折します。その原因のほとんどは、転倒によって起こります。
高齢者は筋力・バランス機能が低下して転倒しやすく、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)によって骨量が低下していることから、骨折しやすくなっています。

大腿骨骨折の治療では、基本的に手術を行います。患者さんの全身の状態や骨折の程度によって骨折部分をネジなどで固定する方法か、セラミックでできた骨を設置する「人工骨頭置換術」のいずれかを選択します。
手術後はなるべく早く日常生活が送れるように治療計画が立てられます。リハビリを早期にスタートさせ、ベッドから離れて歩行訓練を行うことで、寝たきりを防止し合併症を予防することができます。

ところで、骨折はどのように治癒していくのでしょうか? その過程と、回復のために必要なポイントを解説していきます。

骨折はどうやって治るの?

骨折は主に3つのステップを経て回復していきます。

①炎症期:骨折部が出血し血腫ができるため、免疫細胞が集まり炎症が起こります。
②修復期:軟骨細胞が弱い組織である仮骨を作り、骨折部分が連結されます。
③リモデリング期:連結された仮骨部分が石灰化→吸収を繰り返し、丈夫な骨に置き換わります。

骨折が回復するのに大切なことや回復力を高める方法とは

上述の骨折治癒の過程では、新しい血管ができて血流が回復することが必要となります。そのために大切なことは「免疫力」「血液の循環」「骨を作る細胞の活性化」です。では、回復力をアップするにはどうすればよいのでしょう。次の項目をチェックしてみましょう。

1.禁煙

日本禁煙推進医師歯科医師連盟のウェブサイト(※)によると、喫煙は次の理由から骨折の回復に悪影響を与えることがわかっています。

  • タバコの煙が直接骨を作る細胞に作用して、骨を作るのを抑制する。
  • 喫煙によって血液が循環しにくくなり、手術後の創傷が治りにくくなる。
  • 喫煙者は手術後に感染症に罹(かか)りやすく、骨粗鬆症にもなりやすい。

手術直後の問題だけでなく、長期的に見ても喫煙はからだに多くのデメリットをもたらします。喫煙の習慣を見直してみましょう。

2.糖尿病の治療

持病で糖尿病があるのでしたら、その治療も同時に進めていきましょう。糖尿病の影響で、骨を作る細胞がうまく働かなくなり、骨折の治癒が著しく遅れる可能性があります。血糖の値が気になるようでしたら、ぜひかかりつけの医師に相談してみてください。

3.低栄養の改善

普段の栄養は食べ物から十分に摂取できていますか? 低栄養状態(栄養状態が不良)が続くと、筋力や体力・免疫力の低下が起こります。これは、手術後に筋が萎縮しやすく、治癒する期間が長期化しやすいためです。
厚生労働省の調査によると、65歳以上の低栄養傾向の方(BMI≦20kg/m²)の割合は、男性12.5%、女性19.6%です。加齢とともにその割合は増加しています。

厚生労働省「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要」図5を基に作図

栄養状態を判定するには「簡易栄養状態評価(MNA®)」が簡単かつ便利です。次の質問項目に答えて点数を合計することで栄養不足かどうかスクリーニングすることができます。自分では栄養不良になっていることに気付きにくいため、ぜひチェックしてみることをお勧めします。

簡易栄養状態評価表(MNA®)

低栄養状態が進行してからでは回復するのに時間がかかってしまいます。毎日の食事をバランスよくしっかりと食べることが大切です。

4.筋力トレーニング

大腿骨の手術後は、太ももの筋肉が萎縮して筋力が低下し、受傷前よりもADLが低下する傾向があります。大腿四頭筋の筋力トレーニングを積極的に行うことで血行が良くなり、膝伸展筋力とADLの改善に効果がありますので、ご家庭でもやってみましょう。簡単にできるメニューをご紹介します。

<大腿四頭筋のトレーニング1>
あお向けに寝て片方の足を立て、反対の足の膝を伸ばしたままゆっくりと上げ下ろしします。

<大腿四頭筋のトレーニング2>
イスに深く座り、片足ずつゆっくり膝を伸ばして下ろします。

骨折後は心のケアも必要。家族で骨折の回復をサポートしよう

高齢者が骨折してしまうと、健康の喪失体験から精神的に落ち込み、ご本人のリハビリする意欲が無くなることがあります。そうなってしまうと、「痛いこと、疲れることはしたくない」と自ら進んで訓練に取り組むことが少なくなってしまいます。やはり家族の温かいサポートは、患者さんの心を支えるうえでとても大切です。
担当の医師や理学療法士とも連携して、患者さんが不安に感じることはその都度解消し、ご家庭でできることを継続していきましょう。
再び元気になって、元の生活に戻れるよう家族も一緒になって見守っていきたいですね。

【参考文献】

※整形外科疾患に対する喫煙の影響
http://www.nosmoke-med.org/ronbun_seikeigeka_shikkan_eikyou

監修

niko

秋田大学医学部卒業。内科医。

患者さんの身体と心をトータルに診ることを心がけている。「予防医療」が重要と考え、日々診療にあたっている。ストレスマネジメント、認知行動療法を取り入れたメンタルヘルスにも力を入れている。