高齢になってから始める病気予防と生活習慣

身体のこれから

シニア世代がかかりやすい病気とその予防法について、今日から実践できる具体策をお伝えします。

【監修】遠藤愛(えんどうあい)

日本は男女ともに平均寿命が80歳を超える長寿大国です。女性にいたっては87.26歳(平成29年度)と世界第2位(※1)を誇ります。
一方で、寿命までに病気や介護で生活上の制限を要する期間は男女ともに10年前後あり、健康寿命を延ばすことが充実したシニアライフを送るカギといえます。
年を重ねて体力の衰えを感じやすくなると、病気や介護への不安はより一層強くなります。さらに、これらの問題は本人だけでなく家族にも影響を与えるため、できることならリスクを最小限に抑えたいというのが切実な思いではないでしょうか。
この記事では、シニア世代がかかりやすい病気とその予防法について、今日から実践できる具体策をお伝えします。

生涯健康でいるためには「健康寿命」を延ばすのがカギ

日本人の最新の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳(平成29年)と、男女ともに過去最高を更新しています。(※1)。さらに近年は、健康志向の高まりもあり、健康寿命も延びています。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)」図1-2-2-4のデータを基に作図

気になるのが、平均寿命と健康寿命の差です。上記は2016年のデータになりますが、その差は男性が8.84年、女性は12.35年となっています。つまり、男女ともに寿命までの10年前後は、寝たきりや認知症など何らかの健康上の問題を抱えながら生活する可能性があるということです。約10年もの間、自由な外出や好きなものを食べるといった楽しみが制限されるとしたら......。多くの方が、そのような状況を回避したいと願うのではないでしょうか。
老後の生活の質(QOL)を高めるには、健康寿命を延ばし、平均寿命との差を縮めることがカギといえるでしょう。

シニア世代の病気と介護の現状

では実際に、健康寿命に影響を及ぼす可能性のある病気にはどのようなものがあるのでしょうか? 高齢者の受療率が高い病気には、次のようなものがあります(※2)。

入院治療

通院治療

がん
脳血管疾患(脳卒中)
心疾患

がん
高血圧
心疾患
脳血管疾患
脊柱障害

「がん」「心疾患」「脳血管疾患」は、いずれも高齢者の死因上位を占める病気です。年を重ねてから特に気をつけたいこれらの病気は、生活習慣との関連が深いことがわかっています。特に心筋梗塞や狭心症、脳梗塞といった大病の背景には、生活習慣病である「糖尿病」が潜んでいることが少なくありません。血糖値の高い状態が続くと血管はダメージを受けてもろくなり、動脈硬化や血流障害を引き起こして心筋梗塞や狭心症のリスクを高めます。 ほかにも、シニア世代にとって「認知症」や「骨折」などが身近なリスクとしてあげられます。これらの病気やケガは、場合によっては寝たきりや介護に直結するため、シニア世代にとっては非常に気がかりな問題といえるでしょう。実際に、介護が必要になった原因には以下のようなものがあります(※2)。

  • 認知症
  • 脳血管疾患
  • 高齢による衰弱
  • 骨折、転倒

さらに介護が必要となった場合、介護の担い手は「半数以上が同居家族」という調査結果(※2)があり、本人だけでなく家族に与える影響の大きさが伺えます。

シニア世代の病気と生活習慣の深い関係

ここからは、高齢者の受療率と死因の上位を占める「がん」「心疾患」「脳血管疾患」、要介護となるリスクの高い「骨折」「認知症」について、ポイントをしぼって説明します。

がん

国立がん研究センターの「最新がん統計」(※3)からは、がんには性別や年代によってかかりやすいがんの特徴があることがうかがえます。

男性では、40歳以上で消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)の死亡が多くを占めるが、70歳代以上ではその割合はやや減少し、肺がんと前立腺がんの割合が増加する。
女性では、40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多くを占めるが、高齢になるほどその割合は減少し、消化器系(胃、大腸、肝臓)と肺がんの割合が増加する。

今や日本人の2人にひとりが「生涯で一度はがんになる」といわれる時代です。がんの発生には体質や遺伝も影響しますが、その多くは生活習慣をはじめとする環境要因が関係しています。(※4)

がんのリスク要因

  • タバコ
  • 過度の飲酒
  • 欧米化した食事
  • 塩分の摂りすぎ
  • 運動不足
  • 肥満
  • 感染
  • 発がん性物質
  • 生殖ホルモン

心疾患

高齢者の心疾患として多く見られるのが「心不全」です。先天性の心疾患や弁膜症のほか、生活習慣と関連の深い高血圧・狭心症・心筋梗塞などが原因で発症します。
持病や加齢の影響を受けて心臓が正常に働かなくなると、息切れや呼吸困難などの症状が現れて寝たきりとなることもあります。

脳血管疾患(脳卒中)

脳卒中は、大きく2つに分けられます。
脳梗塞:脳の血管が詰まることで、酸素や栄養の供給ができなくなり脳細胞がダメージを受ける。
脳出血:脳の血管がもろくなり破れて出血することで、脳細胞がダメージを受ける。

脳がダメージを受けた部位によって症状は異なりますが、代表的なものに運動麻痺(片麻痺)、構音障害(ろれつが回らない)、失語(言葉が出ない)、手足のふらつきなどがあります。幸いにして一命を取りとめた後も、これらの後遺症によってQOLが著しく低下する病気です。心疾患と同様、高血圧や動脈硬化は脳卒中を起こすリスクを高め、喫煙・過度の飲酒・偏った食生活・運動不足などが深く関係しています。

骨折

加齢によってバランス力や敏捷性が低下すると、ふらつきやすく体勢を立て直すことも困難になるため、「年を取るとよく転ぶ」という状況を招きます。
さらに高齢者は骨がもろくなっており、わずかな衝撃でも骨折するリスクがあります。女性の場合、閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると骨粗鬆症になりやすいため、とくに注意が必要です。

認知症

認知症は加齢による脳の機能低下や、何らかの原因によって脳細胞がダメージを受けることで記憶力・判断力が低下し、日常生活に支障が出る状態をいいます。日本では65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症(※5)ともいわれ、近年はニュースや新聞で認知症高齢者による事故や介護問題を目にすることが多くなりました。
認知症にはいくつかのタイプがありますが、その中でもとくに多いのが「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」です。それぞれ特徴を見てみましょう。

アルツハイマー型認知症

物忘れをはじめ、時間や季節感があいまいになる、薬や金銭の管理が難しくなるといった症状が現れます。一番のリスク要因は加齢ですが、喫煙・食生活・運動などの生活習慣も影響します。認知症の中でもっとも多いタイプです。

脳血管性認知症

物忘れや歩行障害が見られるものの、しっかりしている部分と忘れっぽい部分が混在した「まだら認知症」が特徴です。病気の発症には、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの持病や生活習慣が大きく影響します。脳卒中発症後に見られることが大半となっています。

病気を予防するために今日からできること

シニア世代がかかりやすい病気をいくつか見てきましたが、いずれの病気も「生活習慣」が深く関係しています。このことから、病気の予防・健康増進のためには生活習慣の改善が一番の近道といえるでしょう。
ここからは、普段の生活の中で取り組みたい病気の予防法について説明します。

タバコを吸わない

タバコは百害あって一利なし。禁煙はもちろん、他人のタバコの煙を吸い込まないように注意しましょう。

節度ある飲酒

ほどよい飲酒は、血流改善やリラックス効果があります。お酒を飲む際は、日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ワインならボトル1/3程度に抑え、休肝日を設けるなどして「ほどほど」を心がけましょう。

栄養バランスの整った食事

塩分・脂肪分・糖分の摂りすぎに注意し、タンパク質・ビタミン・ミネラル・食物繊維をバランス良く摂りましょう。

適度な運動

運動習慣のない方は、まずはウォーキングから始めてみましょう。毎日の運動が難しい方は、週に2〜3回でもかまいません。また、エレベータではなく階段を使う、少し遠回りをして帰宅するなど意識してからだを動かすことが大切です。

適正体重を保つ

肥満と生活習慣病は密接に関係していますが、痩せすぎも体力や免疫力の低下につながるため注意が必要です。 肥満度の目安となるBMI値は、「22前後が一番病気にかかりにくい」といわれています。25以上は肥満、18.5以下で痩せすぎとなります。

BMI=体重(kg)/(身長(m)×身長(m))

健康診断を受ける

どんなに健康に気を遣っていても、加齢によるからだの機能低下やダメージは避けられません。症状がなくても検査で異常が見つかることがありますので、定期的に健康診断を受けることが大切です。また、がんの原因となる肝炎ウイルスやピロリ菌の検査を受けて感染が見つかった場合、適切な措置を受けることでがん対策にもなります。

長年の習慣を改めるのは容易なことではないかもしれません。しかし、生活習慣の改善はもっとも始めやすく、コストパフォーマンスの良い健康法なのです。
ここで紹介した生活習慣は、病気を予防したり発症を遅らせたりする効果が期待できますが、それでも病気になってしまうことはあります。体調の変化に早く気づくためにも、普段の体の状態を把握する、健康診断を受ける、何でも相談できる、かかりつけ医を持つなど、普段から対策を取っておくことが大切です。

出典

※1 厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/dl/life17-14.pdf

※2 内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体版)2 健康・福祉」より
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/01pdf_index.html

※3 国立がん研究センター「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

※4 国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん予防」
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html

※5 政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html#section1

監修

遠藤愛(えんどうあい)

看護師として約13年間病院勤務。病院時代、高齢患者と家族の介護問題に直面したことをきっかけに、介護老人保健施設・訪問看護に従事、高齢者看護を学ぶ。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。