病気への不安対策は、日々の健康管理から

身体のこれから

自分自身で心配を抑制することが難しくなっている場合は、周囲のサポートや医療機関での治療が必要になることがあります。

【監修】niko

年齢を重ねるにつれて、体調の変化・体力の低下に気付き「これからずっと健康でいられるかしら......」と不安になる。
このような経験は、多少なりとも誰にでも起こり得ることです。
内閣府の調査によると、ひとり暮らしをする約6割の高齢者が「健康や病気のこと」で不安を抱えていることが分かっています。

内閣府「平成27年版高齢社会白書」 1 幸福感、不安に関する意識 図1-3-3」を基に作図

加齢にともなう健康への不安は避けられないものです。しかし「重篤な病気になってしまったのかもしれない」など過剰に心配すると、普段通りの生活を送ることができなくなってしまいます。不安がさらなる不安を呼び、自分のこころとからだをコントロールできなくなってしまう「病気不安症」という精神疾患になってしまう可能性があるのです。

自分自身で心配を抑制することが難しくなっている場合は、周囲のサポートや医療機関での治療が必要になることがあります。しかし、ご家族に「不安障害(不安症)」という病気についての知識があれば、本人の気持ちを楽にできる手がかりを見つけることができます。この記事をとおし、ぜひ理解を深めておきましょう。

病気不安症とは? その診断と治療について

「病気不安症」とは、れっきとしたこころの病気です。かつては「心気症」とよばれていました。

この病気の患者さんは、いつも病気への恐怖にとらわれ苦しんでいます。身体症状はない、または軽度にもかかわらず「自分は重い病気になっている」と思い込んでしまっています。その思い込みがとても強いために、日常生活にも支障をきたしています。さらには、患者さんの多くがその他の精神疾患(不安障害、パニック障害、うつ病など)を合併しています。

病気不安症の特徴は次の通りです。
あなたのパートナーやご家族に当てはまることはありますか?

  • 身体症状(頭痛や胃痛、動悸など)があるだけで、「がんになっているのではないか」「重い病気になってしまうのではないか」と思い込み、過度に心配する。
  • その身体症状はない。もしくは、あっても軽度である。
  • 「からだに異常はない」と診断されても、身体的に問題があるという考えを変えることができない。
  • 病気へのとらわれが6カ月以上続き、その間に恐れている病気が変化することがある。
  • 何度も鏡を見て皮膚病変を確認したり、健康状態をチェックしたりする。本やインターネットなどで当てはまる病気があるか調べ尽くす。
  • 行動が以下どちらかのタイプとして表れる。
  • (1)受診を繰り返し、病院を転々とする
    (2)病気が見つかることを怖がって受診をしない

もし精神疾患として診断された場合は、主に以下2つの方法で治療を進めます。

1.薬物療法

うつ・不安の症状が強い場合、抗うつ薬・抗不安薬が有用な場合があります。しかし抗不安薬は依存性が高く、高齢者は副作用が出やすいため使用に注意が必要です。

2.認知行動療法

患者さんとセラピストが一緒になって、ストレスを感じた時の受け取り方を振り返り、もう一度客観的に見つめ直す精神療法です。気持ちを軽くしたり問題に対処する力を発揮したりができるように解決法を探していきます。

私たちの気分や行動は、何かできごとが起きたその時に浮かんだ考え(認知)によって決定されています。

上記の認知パターンを踏まえ、治療は具体的に次のようなステップで進んでいきます。

まずステップ①②で、自分の思い込み・思考パターンを客観的に見ていきます。その次のステップ③④において思考や行動の変換を図り、解決方法を実行していきます。
患者さんの状況によって精神療法の内容は異なってきますので、専門医師やセラピストと信頼関係を築きながら進めていく必要があります。患者さんは、このような方法の存在を知り「自分をコントロールできる」ことに気付くだけでも気分が改善することが多いです。

「私は健康である」という自覚が、不安を軽減する!

「自分は健康である=健康度自己評価が高い」ことは、病気への不安を軽減することが研究により分かっています。
健康度自己評価を高めることとして、次のような項目があげられます。

  • ご飯をおいしく食べられる
  • からだに痛みがなく、日常動作に困難を感じない
  • 「自分は若い」と感じている
  • 人付き合いがある
  • 楽しめる趣味を持っている
  • 熟睡できていると感じられる
  • 毎日運動を行っている

特に「熟睡していると感じられる」「毎日運動を行っている」という自覚が、高齢者の健康への満足度を高めます。
日頃の健康管理ももちろん大切ですが、健康への満足度を維持するためには、からだだけを気にかけるのでは十分とは言えません。こころの健康、社会との関わりなど、自分から行う保健行動すべてが健康への自信につながっているのです。

家族だからこそできる。不安な気持ちをシェアすること

もしもパートナーや家族が健康に対して不安を感じているのなら、自分でそのとらわれから抜け出すのはなかなか難しいものです。
家族ができることは、その不安が具体的にどんなものなのか問いかけて、気持ちを共有することです。先述した認知行動療法のステップ①②は、家庭でも実践できます。ぜひ紙に書き出して記録を残しておきましょう。家族が自分の不安に向き合ってくれているというだけでも安心することができることに加え、記録を残すことで頭の中が整理され、ご本人に気づきが生まれます。

不安をネガティブにとらえず、健康になるために生かそう!

不安という感情はネガティブなものにとらえがちですが、上手に扱うことで将来の備えとなります。病気に対する不安の根底には「ずっと元気でいたい」「長生きして、こんなことをしてみたい」という想いがあるものです。
健康とは、自分から能動的に起こす行動によって得られることをいま一度確認しましょう。そして少しでも本人の不安が和らぐように、将来の理想像などを具体的に言葉にして、理想に近づくためにはどんな行動をしていけばいいのか一緒に考えてみましょう。

監修

niko

秋田大学医学部卒業。内科医。

患者さんの身体と心をトータルに診ることを心がけている。「予防医療」が重要と考え、日々診療にあたっている。ストレスマネジメント、認知行動療法を取り入れたメンタルヘルスにも力を入れている。