事故にあってからでは遅い! 高齢者の転倒の原因は?

身体のこれから

転倒の原因を知って現在の状況を把握し、転倒予防に努めましょう。

【監修】niko

最近「足腰が弱くなった」「つまづきやすくなった」と感じることはありませんか?
「年だから、足腰が弱るのは仕方ない」と思う方も多いかもしれませんが、老化だけではなく『運動不足』が大いに関係しているかもしれません。
東京都内では、「過去5年間に約25万人の高齢者が転倒事故により、医療機関に救急搬送されている(※1)」とされています。そのうち、転倒が約8割を占めています。 転倒予防について考えることは急務といっていいでしょう。

東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」図1-4を基に作図

高齢者の転倒による怪我は、これからの老後を元気良く過ごせるかどうか、生活の質(QOL:Quality of life)に大きく影響します。
転倒による骨折で寝たきりになった場合、介護負担・経済的負担はかなり大きなものになってしまいます。事故にあってからでは遅いのです。原因を知って現在の状況を把握し、転倒予防に努めることが重要です。

高齢者の転倒の原因は? 筋力・バランス力をチェックしよう

転倒の原因は、高齢者自身の「内的要因」と、周囲の環境による「外的要因」とに分かれています。それぞれの要因についてご説明します。

内的要因

高齢者の身体的要因ともされる、その主な内容は以下のとおりです。

  • 筋力低下
  • バランスをとる能力の低下
  • 骨密度が低下して骨がもろくなっているため、骨折しやすい
  • 腸からのカルシウム吸収力が低下している
  • 視力障害(緑内障、白内障など)で段差などを見づらくなっている
  • 飲んでいる薬が多く、副作用でめまいやふらつきが起こる

なかでも「筋力低下」「バランスをとる能力の低下」は、転倒の大きなリスクになります。

ここで、運動機能について簡単なチェックをしてみましょう。下の項目に当てはまることはありませんか?

もしひとつでも当てはまった方は、すでに運動機能が衰えてきています。 筋力や骨密度が低下していくことは仕方のないことですが、すぐに対策を始める必要があります。「老化だから仕方がない」とあきらめるのではなく、『運動』によって改善しようとすることで、転倒予防以外にも多くのメリットを得ることができます。

外的要因(周囲の環境)

高齢者の転倒事故の発生場所を見てみると、住宅等の屋内で半分以上が起こっていることが分かります。

東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」図2-7を基に作図

人は加齢により、段差などでバランスを崩しやすくなり、転んだ時も受け身を取りにくくなります。そのため、屋内の環境チェックすることは大切です。なお、転倒しやすい環境要因としては、次のようなことが挙げられます。

  • 廊下・床・階段などが暗い、滑りやすい
  • 階段や風呂場などの段差でつまずく
  • ベッドから降りる際に靴下がひっかかる
  • バスマットやじゅうたん、毛布などに足をとられる
  • 重い靴・ 厚底の靴を履いている

転倒の予防法① もっと生活に運動を!効果的なトレーニングは?

転倒予防はどのように進めていけばよいのでしょうか。予防においても、内的要因と外的要因の両方からアプローチしていくことが重要ですが、最も効果のあるひとつとは、ズバリ、『運動』です!

もし普段から運動する習慣がなければ、少しでも早いうちから始めましょう。運動することはたくさんのメリットがあり、のちに起こりやすくなる病気の予防にもなります。
シニア世代に特に必要になるのは、筋力とバランス感覚の維持です。両膝を軽く曲げる程度のスクワットやイスの背もたれをつかんだ状態での、かかとの上げ下ろしや片足立ち、四つん這いの姿勢で左右の手足を順に伸ばして浮かせる運動など、ご自宅にいながら短時間で、体力をキープすることができます。ただし、大切なのは継続すること。まずは、一日10~20回を目安に続けることを目指しましょう。ひざや腰に痛みがある場合は、痛みのない範囲で行いましょう。

筋力UP!の運動

1.スクワット
ゆっくりと両ひざを曲げ、 ゆっくりと伸ばします。

2.かかとの上げ下ろし
ゆっくりとかかとを上げ、ゆっくりと下ろします。ひざが曲がらないように気を付けましょう。

バランス力UP!の運動

1.四つん這いバランス
四つ這いのまま片方ずつの手足を上げて5秒キープ。元に戻したら、反対も行いましょう。できる方は、左手・右足(右手・左足) を同時に行うとさらに効果が上がります。

2.片足立ちバランス
かかとを10cm程度あげて10秒間キープします。よろけても大丈夫なようにテーブルに手を置いて行いましょう。

その他に転倒予防に有効なことは、次の通りです。

視力障害の改善
もし白内障が進行している場合は、早めに専門医師を受診し、手術などを検討しましょう。

内服薬の見直し
高齢者は、服用している薬が多いほど、転倒リスクが高いと言われています。また、睡眠薬や高血圧薬、糖尿病治療薬などには、副作用としてふらつき、立ちくらみが現れやすくなるものがあります。副作用が現れる方は、かかりつけの医師に相談してみましょう。副作用が起きにくい薬への変更や量の調整の対応をしてもらえる場合があります。

転倒の予防法② 住まいの環境を整えよう

転倒しにくくするために、住まいの環境を次のチェックポイントから見直してみましょう。

  • 住居の段差を少なくする
  • 足元が見えるように夜は常夜灯をつける
  • 浴室には握り棒を設置し、シャワーイスを利用する
  • トイレ座を高くする
  • つかみ棒、靴下装着補助具、長い靴べらなどのアイテムを使用する
  • コンセント、電源コードの位置を確認する
  • 軽い、歩きやすい靴を選ぶ

「つまずきにくく、歩きやすい、目や手が届きやすい」ことを意識して、環境を整えていきましょう。

運動習慣を身に着けて、転倒予防に努めましょう

日頃から高齢者のからだの状態、環境をチェックすることで、転倒による骨折・寝たきりになることを防ぐことができます。特に「運動の習慣」の有無が、今後の老年期を介護なしで元気に過ごせるかのカギとなります。
活動的な毎日を送ることで運動の習慣をつけ、元気な老後を過ごせるように、最大限の予防策と改善を図っていきましょう。

出所

※1 東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/201509/kkhansoudeta.html

監修

niko

秋田大学医学部卒業。内科医。

患者さんの身体と心をトータルに診ることを心がけている。「予防医療」が重要と考え、日々診療にあたっている。ストレスマネジメント、認知行動療法を取り入れたメンタルヘルスにも力を入れている。